mas o menos

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

最近のエントリー

カテゴリー

アーカイブ

2013/05

S M T W T F S
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

Jリーグレポート 2013年05月21日

J2第15節 千葉×松本@フクアリ

mas o menos
  • Line

chiba0519.JPG「20年前にJリーグが発足した時からやっているチームと、20年前だったら多分田んぼか畑でサッカーをやっているチーム」(松本・反町康治監督)が12212人もの大観衆の中で対峙する一戦はフクアリです。
富山相手に3点リードから、終盤の2失点で追い上げられながらも何とか逃げ切り、今シーズン初の3連勝を飾った千葉。ここまで11ゴールと得点ランクトップを快走するケンペスに注目が集まる中、完全にSBへ定着した米倉恒貴と兵働昭弘で組む右サイドの存在感も抜群。攻撃的なスタイルでさらなる上位を窺います。
一方、延期されていた東京V戦を水曜日にこなし、勝ち点1を手に入れた松本もここ5戦無敗の9位と、上々の位置に付けています。ここまでを振り返って「全体的には悪い試合の方がちょっと多かった。それが徐々にいい試合になりつつある」と反町監督。このゲームは、20年の時を掛けて同じ位置まで辿り着いた後輩として、先輩に一泡吹かせたい一戦です。アウェイゴール裏のチケットはソールドアウト。多数の黄色と熱狂的な一角の緑が揺れる中、千葉のキックオフで注目の好カードはスタートしました。
開始16秒の閃光。田中佑昌、ケンペス、兵働昭弘と細かく回り、フィニッシュはケンペスの枠内ミドル。ここは野澤洋輔がファインセーブで回避しましたが、いきなりのフルスロットルは千葉。直後と4分にはCKを兵働が相次いで蹴り入れ、バックパスのミスから松本に献上したCKも凌ぐと、6分にも田中のボールカットから谷澤達也が枠内ミドルを放ち、野澤が何とかキャッチ。押し込み続けます。
さて、早速耐える時間を強いられた中3日の松本。難敵相手に知将の編み出したアイデアは「向こうのストロングな右サイド」を考慮した、本来は右WBを定位置にする玉林睦実の左WB起用。走力に自信を持つ玉林を「相手の右サイドとヨーイドンで競走させるイメージ」(野澤)で米倉にぶつけ、右のWBにはJリーグデビューとなるルーキーの飯尾竜太朗を抜擢。立ち上がりこそラッシュを掛けられたものの、玉林と「右サイドの専門性を発揮して、いい入り方をしたと思う」と反町監督も評価した飯尾がサイドに粘り強くフタをかぶせ、徐々に千葉の勢いを削ぐことに成功します。
21分に谷澤、佐藤健太郎と繋いだボールを、強引に米倉が大きく枠外へ飛ばしたミドルは、チーム15分ぶりのシュート。22分にも焦れたケンペスの左足ミドルはクロスバーの上へ。24分に谷澤が放ったミドルもDFに当たって野澤がキャッチ。さらに29分の兵働がチャレンジしたミドルもしっかり岩沼俊介がブロック。4本いずれのフィニッシュもエリア外から。シュート数の増える千葉も決定機は創り出せません。
松本のファーストシュートは33分。船山貴之からパスを引き出した北井佑季は縦へ。長沢駿が落とし、再びボールを呼び込んだ船山のミドルはDFに当たって岡本昌弘がキャッチしましたが、いい形からのフィニッシュワークを生み出します。ただ、1トップに入った長沢の見せ場はこれくらい。38分に田中の左クロスから谷澤が際どいヘディングを枠の右へ飛ばした直後、「ここをしっかりプレーして欲しいという所でプレーできなければ、チームの攻撃は成り立たない」と長沢を評した反町監督は塩沢勝吾との交替を決断。24歳のCFには厳しい現実が突き付けられました。
残り5分の攻防に火を点けたのは「ファーストプレーでできなかったらもう絶対できないと思ったので、そこだけは絶対体を張るぞと思って」一度クサビを捌き、味方が失ったボールも果敢なチェイスで奪い返した塩沢のワンプレー。このガッツに双方が呼応。44分は千葉。10本近くバイタルでパスを繋ぎ、最後に佐藤勇人の打ち切ったミドルは野澤が懸命にセーブ。45分は松本。北井が右から放り込んだクロスがこぼれると、船山のダイレクトボレーは岡本がファインセーブで応酬。「前半は拮抗してやっていた」とは反町監督。ある程度お互いに納得の45分間は、スコアレスで推移しました。
後半は殴り合いからのスタート。47分、相手CKからのカウンターは千葉。谷澤のスルーパスから抜け出した兵働の1対1は、しかしシュートが弱く野澤がキャッチ。松本の逆襲。野澤のスローインを受けた船山が右足アウトでDFラインの裏へ。竹内彬に競り勝った北井のシュートは、しかし枠を捉えられずサイドネットの外側に。双方が決定機を逃す展開で残り45分が幕を開けました。
50分は千葉。谷澤が右サイドから中へ送り、こぼれを佐藤勇人がミドルに変えたボールは、野澤が果敢にキャッチ。52分も千葉。兵働が右から上げたクロスは中で誰も触れず、ゴール方向へ向かうも野澤が回避。58分も千葉。竹内がフィードを裏へ落とし、米倉を経由して兵働が放ったミドルは枠の上へ。重なる千葉のチャンスと、変わらないスコアボードの数字。
「後半の松本は意図的に縦に長いボールを蹴ってきたが、そのセカンドボールが全然拾えなくて後手を踏んでしまった」と鈴木監督。60分の松本。岩沼が蹴った右FKから、「シュートチャンスを創ろうという意識はかなり高かった」塩沢が狙ったヘディングはクロスバーにヒット。
続く62分の松本。多々良敦斗がフィードを前方へ送ると、「ここに当てれば絶対に落とせてシュートにいけるなと思った」という塩沢は頭で落とし、走り込んだ北井のシュートは岡本が何とか防いだものの、流れを一気に引き寄せた松本。そこには、「裏へのボールを引き出せたし、ポストプレーでアクセントになれたかなと思う」と手応えを口にした塩沢の奮闘が間違いなくありました。
千葉の「守備よりも攻撃という選手交替」(鈴木監督)は70分。佐藤勇人に替わって、ピッチへ送り込まれたのはジャイール。これで兵働がボランチへ落ち、その前には右から田中、ジャイール、谷澤という並びに。当然狙うのは先制点。75分には松本も「結構空いてきたスペースで、ボールを受けるのは一番上手い」(反町監督)弦巻健人を、北井に替えて投入。当然狙うのは先制点。
77分の沸騰。ケンペスのパスを右サイドでもらったジャイール。正対した多々良を股抜きでかわすと、そのままニアサイドへ鋭いクロス。走り込んだ谷澤がダイビングヘッドで薄く当てたボールは、ゴール左スミへゆっくりと吸い込まれます。「最近は点を取りたいという気持ちが強かった」と語った谷澤の、実に11試合ぶりとなる今シーズン2点目は貴重な先制弾。「ボールを持つ時間が短く、単調になってしまった」(鈴木監督)中でも光った個人のアイデアで、千葉がとうとう1点のアドバンテージを得ました。
警戒していた右サイドを「非常にうまく抑えられていた」(野澤)中で、「崩されたは崩されたけど、最後は"個"の力」(同)に屈してビハインドを負った松本。79分には3枚目の交替カードとして、反町監督も「展開力があるし、ミドルも持っている」と言及した岩渕良太を岩沼に替えてそのままボランチへ。何とか1点を奪いに最後の勝負へ打って出ます。
81分は松本。弦巻の左CKを岡本が弾き、こぼれを直接叩いた船山のボレーは枠の右へ。84分も松本。玉林のスルーパスから、裏を取った船山は寄せた2人の門へラストパス。弦巻渾身のシュートは山口智が体を投げ出してブロック。85分も松本。船山が左から右足でクロスを送り、塩沢の完璧なポストを経て、弦巻の狙ったボレーはヒットせず。87分は千葉。岩渕のミスパスがケンペスに渡ると、松本の攻撃から一転して3対2のチャンス。しかし、ケンペスとジャイールを多々良が1人で食い止め、1-0は変わりません。
もはやCBの飯田真輝を最前線に上げて、意地でも負い付きたい松本。88分には多々良のフィードに飯田が競り勝つも、塩沢が収めかけたボールは山口智が未然にカット。終盤にその存在感を増していく千葉のベテランCB。1つずつピンチの芽を摘み取っていきます。そして、このシーンが松本にとっては最後のチャンス。2人残していた交替枠も89分からきっちり使い切る念の入れようで、試合をクローズさせた千葉の粘り勝ち。「非常に厳しい試合」(鈴木監督)を制し、ほぼ1年ぶりにリーグ4連勝を達成する結果となりました。
「松本相手にそんな簡単に得点できないだろうということを踏んで、今日はじっくりいこうと考えていた」と鈴木監督が話した千葉は、後半に入って先に足が止まるなど厳しい展開の中、まさにじっくり攻めてジャイールと谷澤の"個"で1点をもぎとった格好です。このゲームでも目立っていたのは、完璧なラインコントロールだけではなく、最後の局面で体を張れる山口智の存在感。彼が最後尾でどっしりと構えている限り、千葉が大崩れすることはまずないでしょう。改めてその絶対的な力を思い知らされました。
「どうやって負けるかも非常に大事。そういう意味では今日はグッドルーザーだなと僕は思っている」と反町監督も言及した松本は、まさにその言葉通りの内容だったと思います。「タフにアグレッシブに戦えていた」と野澤が話せば、「少しでもボールを収めて、ボールを前に運んでという所では五分くらいの働きはできたかなと思う」と自身のプレーを振り返ったのは塩沢。さらに、「フクアリの雰囲気も凄くて、1つ1つのスピードやパワーも今までとは違うなと思った」とデビュー戦を振り返った飯尾も、「これで少し自信になったんじゃないかな」と反町監督から及第点を与えられるなど、内容的には収穫の多い90分間だったのではないでしょうか。5勝5分け5敗という数字を問われ、「パチンコだったらフィーバーじゃないですか」と何とも"ソリさんらしい"コメントを残した指揮官。追い求める"信州松本のフットボール"は着実にその輪郭を現しています。            土屋

  • Line