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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
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スタッフブログ 2013年05月14日

アバディーンとファギーと~伝説前夜の話~

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突然発表されたアレックス・ファーガソン監督の引退。
27年もの長きにわたって、マンチェスター・ユナイテッドという
メガクラブを率いていた名将の決断に、
多くの方が驚きを隠せなかったと思います。
ユナイテッドに関わる様々な人々のコメントが
イングランドメディアを通じて日本へと伝わってくる中、
私が彼の引退を耳にした時に真っ先に思い浮かべたのは、
ちょうど5年前に訪れたアバディーンの街並みでした。


1986年にユナイテッドの監督へと就任したファーガソン。
イングランドの名門が彼を指揮官として招聘した理由は、
その前に率いていたクラブでの実績が認められたから。
そのクラブこそがスコットランド第3の都市に本拠地を構える
アバディーンFCだったんです。


それまでもセルティックとレンジャーズの
タイトル独占が続いていたスコットランドリーグ。
しかし、1978年にファーガソンを指揮官に頂いたアバディーンは、
翌シーズンの1979-80シーズンに25年ぶりとなる
リーグタイトルを獲得すると、一気に2強体制を破壊。
1983-84シーズン、1984-85シーズンとリーグ連覇を達成し、
スコティッシュカップは3連覇を含む4回の優勝、
リーグカップでも1回の優勝を成し遂げ、
ファーガソンは在任8シーズンで8つのタイトルを
中堅クラブに過ぎなかったアバディーンへもたらすことになるのです。


さらにハイライトは1982-83シーズンのカップ・ウィナーズ・カップ。
予備予選から登場したチームは快進撃を続け、
準々決勝ではバイエルン・ミュンヘン相手に
アウェイをスコアレスドローで乗り切ると、
ホームではアレックス・マクリーシュのゴールなどで3-2と撃破。
準決勝も突破したチームはファイナルで、
かのアルフレッド・ディ・ステファノが率いていたレアル・マドリーと対峙します。
ゴードン・ストラカンのCKから先制するもすぐさま追い付かれる展開の中、
勝負を決めたのは延長に入った112分。
決勝ゴールは途中出場のジョン・ヒューイット。
ファーガソンの采配ズバリで、クラブ史上唯一となる
ヨーロッパのタイトルを見事に獲得しました。


私が取材で訪れた5年前。
チームのトロフィーが保管されているボードルームにあったのは
大半がファーガソン在任期間に獲得したもの。
飾られている写真も、そのほとんどにファーガソンが写っており、
当時チームを率いていたジミー・コールダウッド監督も
「就任前からこのアバディーンに来ると、まるで亡霊のように
アレックスの成功が漂っていると聞いていたよ」と語ってくれました。


そんなファーガソンの薫陶をアバディーンで受けた選手の中には、
現在指導者として活躍している人も少なくありません。
レンジャーズやバーミンガム・シティ、アストン・ヴィラなどの
監督を歴任し、今はフリーのマクリーシュ。
中村俊輔が大活躍していた時代のセルティックを率いていた、
現在はスコットランド代表監督のストラカン。
そして、2009-10シーズンは古巣のアバディーンへ戻り、
今年からストラカンの下で代表のアシスタントコーチを務めるマーク・マッギーなど、
国内ではその名を知られている指導者たちが、
ファギー時代のアバディーンから巣立っています。


ちなみに、その5年前にはマザウェルというクラブを率いていた
マッギーにもお話を聞きに行ったのですが、
ファーガソン監督の話題を振ると、若干苦笑いしながら
「私には偉大すぎて影響も凄く受けたけれど、
時にはケンカもしたし従ったりもした。あの人はクソマジメだから困るんだ(笑)」と
結構ぶっちゃけてくれたのが強く印象に残っています。
なお、アバディーンが最後にリーグ優勝を果たした1984-85シーズン以降、
スコットランドリーグで2強以外に優勝したチームはただ1チームもありません。


ユナイテッドでの功績は誰もが知るところだと思いますが、
ファーガソンのキャリアを語るのであれば、
欠かすことのできないアバディーンでの日々。
ファーガソンの母国であるスコットランドの
古豪クラブへ与えた影響という意味では、
ユナイテッドと同等か、あるいはそれ以上かもしれません。
果たしてユナイテッド"以前"に彼と関わっていた人々は
今回の決断をどう受け止めたのでしょうか。
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土屋

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