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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
柏から世界へ。ゼロックスでの敗戦直後、まだJリーグが開幕する前に中国へと乗り込み、貴州人和相手に0-1と貴重なアウェイ勝利をもぎ取った柏。昨年は初戦でタイのブリーラム・ユナイテッドに敗れた苦い経験をしっかり生かし、2年連続で挑戦するACLはこれ以上ない、絶好のスタートを切っています。
今日の対戦相手はオーストラリアのセントラルコースト・マリナーズ。コアラとカンガルーの国を制したリーグ王者を率いるのは、1997年から98年までサンフレッチェ広島でのプレーしていたグラハム・アーノルド。さらに、最終ラインには大分トリニータのJ1黎明期に活躍したパトリック・ズワンズワイクの姿も。日本にもゆかりのある顔が並ぶ中、電車のダイヤも大きく乱れる強風渦巻く日立台にアジアの戦いが帰って来たことを実感しながら、セントラルコーストのキックオフでゲームの幕は上がりました。
5分は柏。今シーズン初登場となった藤田優人の仕掛けで得たCK。右からレアンドロ・ドミンゲスが蹴り込んだボールを、最後は増嶋竜也がボレーで枠内を強襲。セントラルコーストGKマシュー・ライアンのファインセーブに阻まれたものの、いきなり決定機を掴みます。直後のCKもニアにこぼれたボールは一瞬早くセントラルコーストDFがクリアしましたが、セットプレーから立て続けに創ったチャンス。
しかし先にスコアを動かしたのは、そのセットプレーを成果に結び付けたアウェイチーム。8分、オリバー・ボザニッチが入れた右CKから、完璧なヘディングで柏ゴールを貫いたのはパトリック・ズワンズワイク。大分在籍時にゴールは記録していなかったパトリックの"日本初ゴール"で、まずはセントラルコーストがリードを奪いました。
さて、完敗を喫したFC東京戦に続いて、ビハインドを負う格好となった柏は、前述の藤田に山中亮輔、谷口博之と公式戦初スタメンが3人並ぶ布陣でゲームに入りましたが、「試合勘が立ち上がりになかった所はあったかもしれない」と大谷秀和。なかなか連動性の高い攻撃は繰り出せず。12分にはレアンドロの右FKがこぼれた所に反応した狩野健太がクロスを入れるも、谷口のボレーは枠外へ。15分にはスローインから工藤壮人が頭で落とし、狩野がエリア内で倒れるもノーホイッスル。セットプレー以外からはいい形を創れません。
そんな中、チームを生き返らせたのはやはり7番の頼れる主将。21分、中央からクレオに鋭いクサビを当てた大谷は、「綺麗に落としてくれた」ボールをそのまま右へ最高のスルーパス。走り込んだレアンドロがGKの左下を冷静に破ります。「狙っていた形。前半の内に追い付けたことが大きかった」と口にした大谷の機を見た攻撃参加が呼び込んだ同点弾。スコアは振り出しに戻りました。
22分には再びCKからパトリック・ズワンズワイクに危ないボレーを打たれましたが、ここからは「落ち着いてサッカーができた」とレアンドロも振り返ったように、柏がしっかりボールを支配しながら、主導権を握ってゲームをコントロール。23分、クレオが左へ振り分け、一気に駆け上がった山中のクロスはラインを割るも、思い切りのいい攻撃を披露。28分にも「ニーヤン(レアンドロ)は『走れよ』みたいな感じで溜めるので、走らないと怒られますから」と笑う藤田が、そのレアンドロとのワンツーから右サイドを抜け出し、ピンポイントクロス。工藤のヘディングはクロスバーを越えましたが、サイドバックも積極的に上がり出し、ようやく躍動感が出てきます。
以降の前半はやや膠着した展開に。34分にはロングスローからジョン・ハッチンソンに決定機が訪れかけるも、柏DFが何とかクリア。35分にもアドリアーノ・ペレグリーノの左CKを、またもパトリック・ズワンズワイクが合わせたヘディングは、菅野がファインセーブで回避。2度のヒヤリとするシーンは創られたものの柏も無失点で凌ぎ、ゲームは1対1のタイスコアでハーフタイムを迎えました。
後半がスタートすると、先にシュートを放ったのはセントラルコースト。51分、やや柏のプレスがルーズになった"花道"を、アンソニー・カセレスがドリブルで持ち上がり、枠を越えるミドルにチャレンジ。ゴールには至りませんでしたが、勝ち越しへの意欲を見せると、58分には先に動いたアーノルド監督。アドリアーノ・ペレグリーノを下げて、ニュージーランド代表として南アフリカW杯にも出場したマイケル・マクグリンチーを送り込み、前線のさらなる活性化を図ります。
後半もボールを持ちながら、"あと1つ"が噛み合わずにシュートシーンを創れなかった柏でしたが、62分に流れを引き寄せるチャンスを創出。キッカケは藤田。右サイドで「優人とは元々の連携もできあがっている」と言及したレアンドロとのワンツーから、「もう少しスピードがあれば良かったが、コースは狙い通り」のグラウンダークロスをニアへ。飛び込んだ工藤が反転して落とし、レアンドロのシュートはDFのブロックに遭いましたが、サイドからの崩しで決定機の一歩手前を演出すると、直後にもバイタルでボールを引き出したレアンドロのラストパスから、工藤がサイドネットを激しく揺さぶる惜しいシュート。上がる黄色のボルテージ。
輝いたのは「FC東京戦は良くなかったのに、監督が今日も使ってくれたので、何が何でも結果を出そうと思っていた」金髪の14番。67分、レアンドロを起点に、クレオが右へ展開。開いた工藤が後ろに下げると、レアンドロは素早く中へ。飛び込んだクレオがわずかに触り、ファーへ流れたボールを全力疾走から押し込んだのは、「ケンタは凄い実力を持っているし、チームのために走っていた」と柏の"キング"も称賛した狩野。ファンタジスタの泥臭い一撃は逆転弾。柏が一歩前に出ました。
何とか追い付きたいアーノルド監督も2枚目の交替を決断。70分、ニック・フィッツゲラルドとバーニー・イビニ-イセイをスイッチし、サイドの推進力を上げに掛かると、直後にオリバー・ボザニッチの蹴ったFKを、バーニー・イビニ-イセイはシュートまで。柏DFのブロックに阻まれるも、早速チャンスに絡んでみせます。
とはいえ、柏がセットプレー以外で危険なシーンを創られる機会はほぼ皆無。「自分たちがやらなくてはいけないことを出した」(大谷)「自分たちのやるべきサッカーを続けた結果、点が付いてきた」(レアンドロ)と、奇しくも2人の絶対的な主力が声を揃えたように、"やるべきこと"を理解した11人は、1枚の交替カードもネルシーニョ監督に切らせることなく、"1点をリードしている戦い方"で、時間を着々と潰していきます。87分には右SBのトレント・セインズベリーに中央からミドルを許すも、ボールはクロスバーの上へ。迫り来る勝利の瞬間。
ゲームに刻印された"ダメ押し"。88分、狩野、クレオと繋ぐと、レアンドロはヒールで右へ。「二ーヤンが凄く呼びながら中へ入っていくのが見えたので、出さないと怒られるなと(笑)」藤田が中へ丁寧に送ったボールを、10番はスーパーなボレーでGKの手を弾き飛ばし、ゴール右スミに沈めます。「点が取れなくて少しイライラしていた所があったが、今日は点も取れて自分的に楽になった」と話したレアンドロのドッピエッタ。今日3度目の歓喜で勝敗は決しました。
このまま終わるかに思えた90分のクライマックス。スルーパスに反応したエリア内でマイケル・マクグリンチーが柏DFともつれて倒れると、UAEのアリハマド・アルバダウィ主審はペナルティスポットを指し示します。かなり微妙なジャッジでのPK。キッカーはマイケル・マクグリンチー。ゴールマウスには菅野。ホームゴール裏から浴びせられる、怒号にも似た強烈なブーイングの中、短い助走からボールが蹴られた5秒後、柏ゴール前にできたのは守護神を中心にした雄叫びの輪。中央へのキックを完璧に足でストップした菅野のビッグセーブで点差は縮まらず。柏から世界へ。「今夜のレイソルは素晴らしい集中力と質の高いプレーを見せられた」とネルシーニョ監督も納得の90分間の成果は、ACL連勝となる大きな勝ち点3奪取。柏がグループ首位をガッチリとキープする結果となりました。
今日の柏が挙げた勝利における最大のポイントは「誰が出てもウチは遜色ないメンバーが揃っている」(大谷)ことを結果で証明したことでしょう。狩野が移籍後初ゴールをマークし、藤田も今シーズン初出場でアシストを記録。山中と谷口もある程度持ち味を発揮するなど、「チームの底上げで見ても凄く大きなゲーム」(大谷)になり、レアンドロも「レイソルは誰が出ても負けない力がある1つの"グループ"」と胸を張りました。中でも個人的に拍手を送りたいのは、キム・チャンスの加入でベンチ入りもままならない状況にも、「悔しい想いはありましたが、腐らず布さん(布部陽功コーチ)としっかりトレーニングをやってきました」という藤田の活躍。前半数回スリップした場面については「今季初出場なので"なかったこと"にして下さい」と笑わせながら、「いつでも行ける準備をしておくのはレイソルの約束事」と言い切った彼に、レイソルの強さを見た気がしました。 土屋
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