以前に別媒体で、いかにJ2で活躍した選手でも、
その翌シーズンにJ1で活躍するのは難しいという
企画をやったことがありました。
当時のサンプルデータは2004年シーズンから2008年シーズンまで。
それから4年が経った今、
果たしてその定義は変わっていないのかを調べたのが
今回のリサーチということになります。

データはJ2のここ5シーズンで、
シーズンの得点ランキング10位以内に入っていて、
翌シーズンにJ1へとプレーするステージを移した選手が、
どのくらいの成績だったのかを一覧にしたものです。
なお、※印は翌シーズンに移籍してJ1のクラブでプレーした選手。
成績の後のカッコ内の数字は1試合平均得点です。
では以下、どうぞ。

【2007→2008】
※1位　フッキ（東京V→川崎→東京V）
J2...42試合37得点（0.88）
J1...13試合7得点（0.54）
（注）2008シーズン途中で川崎から東京V（J1）、東京Vからポルトへ移籍

※2位　アレックス（福岡→柏）
J2...45試合26得点（0.58）
J1...28試合5得点（0.18）

3位　パウリーニョ（京都）
J2...43試合24得点（0.56）
J1...4試合1得点（0.25）
(注)2008シーズン途中で負傷により登録抹消

6位　ダヴィ（札幌）
J2...39試合17得点（0.44）
J1...26試合16得点（0.62）

※9位　萬代宏樹（仙台→磐田）
J2...40試合14得点（0.35）
J1...20試合3得点（0.15）

※9位　ロペス（仙台→横浜FM）
J2...42試合14得点（0.33）
J1...16試合1得点（0.06）

【2008→2009】
1位　佐藤寿人（広島）
J2...40試合28得点（0.70）
J1...34試合15得点（0.44）

※3位　石原直樹（湘南→大宮）
J2...41試合18得点（0.44）
J1...32試合7得点（0.22）

※3位　藤田祥史（鳥栖→大宮）
J2...38試合18得点（0.47）
J1...27試合4得点（0.15）

9位　森﨑浩司（広島）
J2...40試合14得点（0.35）
J1...3試合0得点（0.00）
（注）2009シーズンはオーバートレーニング症候群により長期離脱

9位　高萩洋次郎（広島）
J2...38試合14得点（0.37）
J1...27試合5得点（0.19）

【2009→2010】
1位　香川真司（C大阪）
J2...44試合27得点（0.61）
J1...11試合7得点（0.64）
（注）2010シーズン途中でドルトムントへ移籍

※2位　都倉賢（草津→神戸）
J2...43試合23得点（0.53）
J1...19試合4得点（0.21）

4位　乾貴士（C大阪）
J2...47試合20得点（0.43）
J1...33試合4得点（0.12）

※5位　高崎寛之（水戸→浦和）
J2...46試合19得点（0.41）
J1...5試合1得点（0.20）

【2010→2011】
1位　ハーフナー・マイク（甲府）
J2...31試合20得点（0.65）
J1...32試合17得点（0.53）

※4位　永里源気（福岡→甲府）
J2...35試合15得点（0.43）
J1...14試合0得点（0.00）

5位　パウリーニョ（甲府）
J2...33試合14得点（0.42）
J1...28試合10得点（0.36）

6位　レアンドロ・ドミンゲス（柏）
J2...32試合13得点（0.41）
J1...30試合15得点（0.50）

9位　工藤壮人（柏）
J2...27試合10得点（0.37）
J1...25試合7得点（0.28）

9位　林陵平（柏）
J2...24試合10得点（0.42）
J1...10試合1得点（0.10）

9位　中町公祐（福岡）
J2...35試合10得点（0.29）
J1...24試合2得点（0.08）

【2011→2012】
1位　豊田陽平（鳥栖）
J2...38試合23得点（0.61）
J1...33試合19得点（0.58）

※3位　齋藤学（愛媛→横浜FM）
J2...36試合14得点（0.39）
J1...29試合6得点（0.21）

※5位　リカルド・ロボ（栃木→柏）
J2...36試合12得点（0.33）
J1...7試合0得点（0.00）
（注）2012シーズン途中で千葉へ期限付き移籍

5位　内村圭宏（札幌）
J2...27試合12得点（0.44）
J1...27試合2得点（0.07）

8位　早坂良太（鳥栖）
J2...37試合10得点（0.27）
J1...21試合0得点（0.00）

まず、J2得点ランキング1位の選手に関しては
問題なく翌シーズンもJ1で結果を出しています。
特に佐藤寿人と豊田陽平は共にチームの上位進出における
原動力になるなど、数字以上の貢献度だったと言えるでしょう。
また、フッキ、ダヴィ、レアンドロ・ドミンゲスといった"怪物"トリオに加え、
日本代表の常連になったハーフナー・マイクは
ディビジョン関係なく、自らの真価を証明して見せた例ですね。

そして以前も指摘した、J2からJ1へ"個人昇格"を果たした選手の苦戦は、
やはり変わっていないというのが実情のようです。
08年の萬代やロペス、09年の藤田、
10年の高崎、11年の永里、12年のリカルド・ロボなど、
前年のJ2を席巻した選手たちも軒並み結果を出すことができず、
現在では既に他クラブへの移籍を余儀なくされています。
前回のリサーチでは、
04年と05年のチェ・ヨンス（京都・33試合20得点→磐田・15試合1得点）、
05年と06年の柿本倫明（湘南・43試合15得点→C大阪・25試合1得点）、
06年と07年の新居辰基（鳥栖・36試合23得点→千葉25試合5得点）
のデータもご紹介していました。
加えて、水戸で08年に17得点、09年に14得点を記録して
磐田へ移籍した荒田智之も、
J1の2シーズンではわずかに1得点しか奪えなかったというデータも残っています。

実は過去にJ2で二ケタゴールを記録し、
その翌シーズンに移籍したJ1クラブで二ケタゴールを記録した日本人選手は、
04年にJ2の仙台で20得点を挙げ、
05年にJ1の広島で18得点を挙げた佐藤寿人しかいないんです。
当然、J2での好成績を引っさげてJ1クラブへ移籍してくるからには、
即戦力としての活躍を求められているわけで、
すぐに結果が出せない場合に居場所がなくなってしまうのは
ある意味仕方ないことでもあります。

しかし、昨シーズン
このリサーチの対象には入っていないにもかかわらず、
"個人昇格"を大成功させた選手が現れました。
その選手とは徳島からG大阪へ移籍した佐藤晃大です！
11年に徳島の選手として戦ったJ2では9得点。
これはリーグ全体の12位という数字でした。
そんな佐藤が12年にJ1のG大阪へ移籍すると、
初スタメンとなった5節の広島戦から3試合連続ゴール。
気付けばFWの軸としてすっかり定位置を確保し、26試合で11得点をマーク。
J1の得点ランキング9位という堂々たる結果を残してみせました。
しかも、終盤の負傷離脱がなければ
もっと得点数を伸ばしていた可能性は十分に考えられます。
彼の活躍というのは、"個人昇格"へ
1つの光明をもたらしたと言い切っていいのではないでしょうか。

この佐藤の活躍を受けてかどうかは断定できませんが、
ここ数年は"個人昇格"にチャレンジする選手も
すっかり減少傾向にあった中で、
今シーズンはかなり極端なデータが出ています。
以下、2012シーズンのJ2得点ランキング10傑です。

1位　ダヴィ（甲府→鹿島）
2位　阿部拓馬（東京V→アーレン）
2位　川又堅碁（岡山→新潟）
4位　藤田祥史（千葉→横浜FM）
5位　中村充孝（京都→鹿島）
5位　有田光希（愛媛→神戸）
5位　端戸仁（北九州→横浜FM）
5位　武富孝介（熊本→湘南）
5位　三平和司（大分→京都）
5位　森島康仁（大分）

なんと、森島以外の9選手がいずれも新天地を求めているんです。
しかも、その内6人がJ1クラブへの移籍！
こんな事態はJ2創設15年目にして初めてであり、
極めて異例だと言えるのではないでしょうか。

川又と端戸は古巣へのレンタルバックとはいえ、
いずれも激戦区のポジション争いへ飛び込むことになります。
また、ダヴィは少し毛色が違うものの、
藤田、中村、武富はまったく未知の世界への挑戦。
この選手たちがどのくらい結果を出すことができるかに、
今後の"個人昇格"の行く末が懸かっているように思います。
今シーズン終了時に彼らが
「J2経由J1行きの難しさ」を見事に覆してくれることを期待しましょう！

土屋