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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
第2試合はフレッシュな対決。7年ぶり3回目の出場となる新潟代表の帝京長岡と、2年連続4回目の出場となった鹿児島代表の鹿児島城西が、全国の舞台で対峙します。
2回戦からの登場となった帝京長岡は、中津東相手に自らのスタイルを遺憾なく発揮。長坂拓海(3年・長岡JY FC)と新潟への入団が内定している小塚和季(3年・長岡JY FC・U-18日本代表)のゴールを含む3点を奪って快勝。「昨日の試合で自分たちが"できて"いるなというのが自信になった」とはキャプテンの三田陽介(3年・長野上松中)。見ていて楽しいサッカーで、さらなる高みを目指します。
鹿島学園と対戦した初戦は、加治佐楓河(2年・鹿児島育英館中)が2ゴールをマークし、常に先手を取るシーソーゲームを3-4というハイスコアで制すと、昨日激突した強豪・前橋育英相手には新納洋輝(3年・AFCパルティーダ)の挙げた1点を守り切り、準優勝した4年前以来の3回戦進出を果たした鹿児島城西。大迫越えはすなわち、"てっぺん"を取ることに他なりません。攻撃的な両チームの対戦に高まる期待。試合は鹿児島城西のキックオフでその幕が上がりました。
序盤から圧倒的に押し込んだのは鹿児島城西。5分、南祐輝(3年・鹿児島育英館中)が蹴ったFKのこぼれに反応した濱上大志(2年・太陽SC U-15)のシュートは枠の右へ。7分、向高怜(2年・桜島中)が右サイドをえぐって折り返すと、加治佐がニアサイドから放ったシュートは左ポストをかすめて枠外も、2トップだけで創り出した決定機。さらに9分、中央をスルスルと持ち上がった濱上のシュートはクロスバーを越えましたが、「2トップと14番(濱上)が前線に絡んでくるだろう」という帝京長岡・谷口哲朗監督の読み通り、この3人の推進力がチームに勢いを与えて立ち上がります。
すると、11分に早くも生まれた先制点。ここも向高を起点に加治佐が左へ展開。SHの吉田隼涼(2年・姶良加治木中)が入れたクロスはファーでフリーの江﨑晃大(1年・太陽SC U-15)へ。ワントラップから1年生が放ったシュートは左ポストを叩くも、カバーに入ったDFに当たると割ったゴールライン。攻勢を成果にしっかり結びつけた鹿児島城西がアドバンテージを握りました。
得点後もペースは薩摩隼人。「緊張からかボールウォッチャーになって、逆サイドの絞り込みも遅れ、バイタルに横パスを通された」とは谷口監督。前述した2トッププラス濱上に加え、「ちょっと1年生じゃないなと思った」と敵将も賞賛した江﨑も、サイドにバイタルにと神出鬼没に相手陣内を蹂躙。19分にも江﨑のパスから加治佐が中へ送ると、濱上のシュートはわずかにゴール左へ。追加点の予感が色濃く漂うピッチ。
しかし、「1失点はあっても連続失点はしないように、慌てて点を取りにいく必要はないと言っていた」と谷口監督が話せば、「1失点だったら逆転はできると思っていた」とは三田。指揮官も失点後は右から三田、長坂、小塚と並んでいたシャドー的な3枚を、右から小塚、三田、長坂に変更します。
すると、まず20分に繰り出したファーストシュート。1トップになった山田貴仁(2年・長岡JY FC)のポストから、小塚は短い振り足で強烈なシュートを枠内へ。ここは鹿児島城西GK松木壮宏(3年・鹿児島育英館中)が辛うじて弾き出したものの、変わり始めた流れ。
そんな中で22分に輝きを放った越後のファンタジスタ。中央でボールを持ちながら「山田が走ってくれれば出す準備はできていた」小塚。「裏へ来るなと思ってディフェンスの間に割って入った」山田。瞬間、右足ですくって左足で裏へ出す「練習でも面白半分でやっていた」超絶スルーパスを発動。抜け出した山田も、そのワンプレーの価値を高める強烈なボレーをゴールネットに叩き込みます。小塚の必殺技が飛び出し、帝京長岡が追い付いてみせました。
「並びが変わったことで自分たちの違う良さが出た」と三田。「長坂と三田とは、いつも連動的にポジションを変えて、相手に付かれないようにするとは言っていた」と小塚。躍動する3シャドー。27分には鹿児島城西も、向高のパスを加治佐がスルーで外し、濱上が枠へ収めたシュートは帝京長岡GK亀井照太(2年・FCトリプレッタJY)がキャッチ。28分は帝京長岡。右SBの風間元樹(3年・長岡JY FC)は小塚のリターンを受け、アーリークロス。中で待っていた三田のボレーは枠を越えるも、完全に引き寄せた流れ。
そして、逆転の時がやってきたのは29分。パスワークに特徴を持つチームの中で、「監督にも『オマエはパスいらないからゴールに行け』と言われます」と笑う山田が持ち前の突破力で右サイドを運んで中へ。ルーズボールを再び山田が中央へ押し込むと、長坂は地面スレスレの超低空ヘッドで、大事に大事にボールをゴールネットへ送り届けます。「我慢して守れば自分たちは反撃できるという、攻撃面の自信はある」と胸を張った三田。スコアは引っ繰り返りました。
もはや待ったなし。31分も帝京長岡。左SBの丸山晃生(3年・長岡JY FC)、ボランチの島村旭(3年・FC緑)と繋いで、まったくのフリーから三田が打ったシュートは枠の上へ。32分も帝京長岡。長坂がタメてスルーパスを繰り出し、栁雄太郎(2年・長岡ビルボードFC JY)が浮かせたフィニッシュは、わずかに枠の右へ。
突き放したのは「アイツがやることに関して、誰も文句は言わないキャプテン」(谷口監督)。35分、左サイドを華麗に切り崩し、エリア内で持った小塚は「味方が持ったら3人目の動きは意識している」三田へラストパス。三田は1人かわすと豪快な一刺し。一気呵成の3発に「高校生って凄いですね。ビックリしました」と笑顔の谷口監督。同点、逆転、追加点。帝京長岡が2点のリードを持って、ハーフタイムへ入りました。
後半に入っても大きく流れは変わらず。45分には「なかなか2点差を引っ繰り返すのは難しい」と捉えていた小久保悟監督が1人目の交代を決断。吉田を下げて、スーパーサブの中村亮(1年・鹿児島育英館中・U-16日本代表)を早くも投入します。51分には帝京長岡も、長坂のパスから島村が枠を越えるミドルを放ちましたが、ここから鹿児島城西も反攻。
54分に南が蹴ったFKはDFにクリアされましたが、そこから獲得した左CKを濱上が入れると、ニアで誰も触れずボールはゴール方向へ。しかし、このシーンはカバーに入った島村がライン上でクリア。55分、今度は南の右CKに、ニアで新納が合わせたヘディングはゴール右へ。セットプレーからチャンスを窺います。
57分も鹿児島城西。中央を向高が切り裂き、そのまま枠に飛ばしたシュートは亀井がキャッチ。悪くないシーンは続けて創り出すものの、「パンチ力や最後の詰めの所」(小久保監督)のもうひとパワーが、相手ゴールを打ち破るゲージにまでは達しません。こうなると、「みんなよくやっていたので替えづらかった」(谷口監督)帝京長岡に再び傾くゲームリズム。
トドメも腕に腕章を巻くあの男。67分、ハーフカウンター気味に右サイドをゴリゴリと山田が縦へ突き進み、冷静な判断で中へ。フリーでボールを受けた三田は、GKとの1対1も迷いなくゴール右スミへ完璧なコントロールで流し込みます。「こういう大きい大会では初めてですかね」というドッピエッタで4-1。勝負は決まりました。
何とか1点を返したい鹿児島城西。69分、右から濱上が入れたFKから、江﨑の浮き球を叩いたボレーは亀井がキャッチ。76分、エリア付近でルーズボールを拾った加治佐のシュートは、わずかにゴール左へ。アディショナルタイムは3分。ほぼラストプレーの80+3分、最後まで意欲を失わなかった向高の弾丸ボレーは、しかし亀井がファインセーブで回避。ファイナルスコアは4-1。「選手が良かったですね。いい選手たちでしたね。上手です」と谷口監督も笑顔でおどけながら選手たちを評価した帝京長岡が、新潟県勢として28年間崩せなかったベスト8への壁を正面から突破する結果となりました。
帝京長岡は率直に言って、こんなチームがあったのかという印象を受けました。「自分の"空間"を、相手との駆け引きの中でうまく使える選手になってほしい」というコンセプトでトレーニングに取り組んでいると谷口監督。それは個人のボールコントロールという意味での"空間"でもあり、3シャドーのバランスを問われた三田が「誰かがいないポジションを入れ替わりで埋める」と答えたように、ピッチ上で他者と連動するスペースという意味での"空間"でもあるのかなと思います。
「国立に行くだけじゃ、自分たちの目指している所が違う。新潟県の歴史も、帝京長岡の歴史もこれからどんどん変えていきたい」と三田。雪深い長岡の地から夢舞台へ乗り込んできた緑の若者たちは、真剣に頂点をその視野へ捉えています。 土屋
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