最近のエントリー
カテゴリー
アーカイブ
このブログについて
J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
アジアでの蹉跌。タイに乗り込んで挑んだブリーラム戦は2-3で敗れ、黒星スタートを強いられた柏。ホームで初めて開催されるACLの対戦相手は、こちらも初戦で中国王者の広州恒大に1-5という衝撃的な惨敗を喫した、韓国王者の全北現代。お互いに勝ち点を確実に積み上げたい重要な一戦です。
新装後、初のナイトゲームとなるスタジアムにはアジアへ打って出るチームを後押ししようと、平日にもかかわらず8175人が大集合。完全ホームの大一番。19時、リカルド・ロボがキックオフのボールを蹴り出し、日立台におけるアジアへの第一歩を記しました。
まずゲームが始まって気付いたのは全北の布陣。4-4-2が予想された中、最終ラインには右からチェ・チョルスン、キム・サンシク、チン・ギョンソンが並ぶ3バックを採用。右にはチョン・グアンファン、左には大宮でプレーしていたパク・ウォンジェがWBとして配置され、「前半は守備的に行こうという3-4-3」(イ・ヒョンシル監督)でゲームに入ってきます。
ただ、少し意外な布陣にも「この間の浦和レッズのシステムと同じ。役割を確認してゲームに入った」とネルシーニョ監督。4分に酒井宏樹のパスからワンタッチでマーカーを外したレアンドロ・ドミンゲスが枠外ながらミドルを放つと、15分には今シーズン初登場となる栗澤僚一が右に展開。酒井のクロスを田中順也が頭で折り返し、ロボの反転シュートはゴール右へ逸れましたが、最初の15分間でフィニッシュシーンを2度創ります。
とはいえ、決して柏のアタックが流麗に繰り出されたかと問われればそうとも言い切れず、「少し引き気味にやろうと思っていた」(イ・ヒョンシル監督)全北があまり前に出てこなかったこともあって、ゲームは膠着状態に。26分には右サイドから増嶋竜也が見せたロングスローを酒井が頭で触り、最後はレアンドロが反転から枠へ飛ばした一撃が、実に10分ぶりのシュートシーン。
逆に27分にはエニーニョの左FKに、パク・ウォンジェが合わせたヘディングはわずかにクロスバーの上へ。31分にはエニーニョが、33分にはイ・スンヒョンが共に枠は外れたものの、流れの中からシュートを放つなど、全北も"MAD GREEN BOYZ"の横断幕を掲げた緑のサポーターが気勢を揚げるような手数を繰り出します。
そんな中、36分には柏に好機。栗澤のスルーパスに抜け出した酒井のクロスから、ファーの田中がヘディング。ここは全北GKイ・ボムスがキャッチしましたが、この前後から攻勢を強めたホームチーム。その流れが結実したのは40分。橋本和が奪ったFKをジョルジ・ワグネルが中へ入れると、ニアで合わせた那須大亮のヘディングはGK一歩も動けず。「ジョルジのボールが良かったので合わせただけ。本当に嬉しかった」と語るCBの移籍後初ゴールが飛び出し、柏が先手を取りました。
畳み掛ける太陽王。42分、田中、栗澤と繋ぎ、レアンドロが右へ送ったボールをロボはスルー。酒井のシュートはGKがセーブしましたが、「効率良くスペースを使えた」(ネルシーニョ監督)右サイドでチャンスを創ると、44分には柏の真骨頂。左サイドでゴールラインを割りそうなボールに田中が食らい付いて残すと、ワグネルを経由してロボが打ち切ったシュートは、チン・ギョンソンのハンドを誘ってPKに。これをレアンドロは確実にGKの逆を突いて成功。田中の諦めない姿勢が追加点を呼び込みます。
さらにその1分後。橋本の高精度フィードをロボが頭で逸らすと、走り込んだレアンドロはダイレクトでエンジェルループを敢行。ボールは美しい軌道を描き、揺れた黄色いサポーターの目の前にあるゴールネット。「戦術が非常に機能した前半」とはネルシーニョ監督。終わってみれば柏が残り5分で3ゴールを立て続けに奪い、ハーフタイムに入りました。
さて、初戦の大敗を受け、「1勝を必ず取りたい」(イ・ヒョンシル監督)全北。手痛いビハインドに、システムも4-2-3-1にシフトし、「疲労や体力面を考えて前半は休ませた」(監督)エースのイ・ドングッを後半スタートからピッチへ送り込みます。
すると、明確なターゲットを得て、"放り込み"という指針ができた全北の反撃。51分、左サイドをイ・スンヒョンがドリブルで運ぶと、上げたクロスをイ・ドングッが競り勝ち、最後はこぼれ球をフアン・ボーウェンが豪快に一蹴り。ボールはゴール右スミに突き刺さり、1点を返します。
少し嫌な空気が流れた日立台。それでも、後半の立ち上がりこそ「単純に蹴る攻撃に慌てたシーンもあった」(ネルシーニョ監督)ものの、「練習の中でハイボールやセカンドへの対応は話ができていた」(同)こともあり、徐々に守備面でアジャストしていった柏は、55分過ぎから完全にゲームをコントロール。
56分、ワグネルの左FKに増嶋が合わせたヘディングはGKが何とかセーブ。68分、カウンターからワグネルとレアンドロが中距離のパスを送り合い、最後はレアンドロの枠内ミドルはGKキャッチ。69分、中盤で大谷秀和が粘り、ロボが右へ展開。酒井のクロスは飛び込んだロボとわずかに合わなかったものの、追加点の香りを次々に漂わせます。
71分には全北にビッグチャンス。ゴール前の混戦からイ・スンヒョンがフリーになりましたが、那須が間一髪でクリア。事無きを得ます。一転、柏に再び4点目の絶好機。76分、橋本のドリブルにチェ・チョルスンがたまらずエリア内でファウル。今日2本目のPKもキッカーは当然レアンドロ。ところがこのキックはイ・ボムスが読み切ってセーブ。こぼれに詰めたロボのシュートもクロスバーの遥か上へ。突き放せません。
80分には全北。中央、約30mのFKをエニーニョはキッチリ枠内へ。菅野が何とか防いだボールは、増嶋が素早くクリア。意地を見せるアウェイチーム。ここでネルシーニョ監督が動きます。84分、1人目の交替はロボと茨田陽生のスイッチ。「順也の方がカウンターの時の役割を理解して、やり慣れている」と田中をピッチに残します。
この決断が奏功したのは、終了間際の89分。柏のカウンター発動。大谷のパスを茨田は右へ。レアンドロのクロスを受け、ワントラップから利き足とは逆の右足でゴールに叩き込んだのは田中。途中出場の茨田が絡み、残した田中がACL2戦連発弾。4-1。勝敗は決しました。
そして4ゴールのケーキにイチゴを乗せたのは、6日前に父親となったあの男。93分、やはりカウンターからレアンドロの縦パスを、茨田はセンス溢れるダイレクトパス。右に流れた田中のクロスへ、頭から飛び込んだのは茨田。ベンチメンバーとのゆりかごダンスでゲームは完結。「とても大きな責任を背負って臨んだ」(ネルシーニョ監督)一戦は柏が5-1と大勝。アジア初勝利をホームで飾る結果となりました。
JリーグとACLを合わせると、4試合目の公式戦でようやく勝利を手にした柏。90分間を通じてみると、「存在感を見せてくれたと思う」とネルシーニョ監督も称えた栗澤が効いていた印象です。それはレアンドロサイドのスペースカバーや、シンプルな繋ぎでパスワークのリズムを創るシーンなど、攻守両面において。終盤で2点に絡んだ茨田とのポジション争いはかなりハイレベルで、そのままチームのベースアップに直結します。先制ゴールを決めた那須の台頭も含め、柏は早くもいいサイクルに入ってきたのではないでしょうか。 土屋
J SPORTS フットボール公式Twitterをフォローしてフットボールの最新情報をチェック!