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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
消えかけた夢の続き。関東への最終関門。市原臨海で行われるのは、関東リーグ昇格決定戦です。地域決勝でY.S.C.CがJFL昇格を決めたために、関東リーグに空いた1つの椅子を4チームで争うことになった昇格決定戦。昨日の"準決勝"を勝ち上がって"決勝"に登場するのは、東京王者の東京23フットボールクラブと、群馬王者のtonan前橋サテライト。この勝者のみが、来シーズンから関東リーグ2部で戦う権利を得ることになります。
東京1部を圧倒的な成績で制しながらも、関東社会人大会では2回戦で浦安JSCの前に敗退。過酷な全社を勝ち抜いた対価として挑んだ地域決勝では、2勝1敗と堂々の結果を残したものの、無念のグループリーグ敗退。これが今シーズン3度目の昇格を懸けた戦いとなる東京23FC。
一方、前期こそ苦しんだものの、後期は無敗で駆け抜け、群馬1部の頂点に立ったtonanサテライト。関東社会人大会では、こちらも2回戦でパイオニア川越に苦杯。2回目となる昇格のチャンスに挑みます。12月まで実施の可否がわからない中、「この試合はあるぞとほぼ決め付けて、気持ちは切らさずにやってきた」とtonanサテライトの渡辺智洋監督が話した言葉は、間違いなく両者に当てはまる心情。おそらく今年度最終盤のビッグマッチは、tonanサテライトのキックオフでスタートしました。
まず、勢いを持ってゲームへ入ったのはtonanサテライト。3分には右サイドから亀井一(24・平成国際大学 ※データは年齢と前所属)がFKを入れると、最後に美濃村慶太(23・東京ベイエリアFC)が強引に放ったボレーは枠にこそ飛びませんでしたが、「奪ったボールは素早く2トップへ、というコンセプト」(渡辺監督)を体現して押し込みます。
ただ、それが続いたのは5分くらいまで。その5分、後方からのフィードを田村聡(23・神奈川大学)が頭で落とし、山本孝平(25・水戸ホーリーホック)の左足シュートはわずかに枠の右へ外れたものの、以降は東京23FCがペースを握ります。特に右SHに入った今日が誕生日の田村は、よくボールを引き出しては縦へと運んでチャンスを創り出し、12分、14分、15分、15分と連続で獲得したCKはいずれも右から。右サイドの活性化を促進させると、18分のチャンスもやはり右サイドから。田村のクロスを猪股聖哉(23・亜細亜大学)が繋ぎ、山本恭平(24・尚美学園大学)のラストパスから安東利典(29・横河武蔵野FC)が狙ったシュートはDFに当たって枠は外れましたが、24分に山村和士(23・拓殖大学)が蹴った左CKから、CBの伊藤龍(24・ジェフユナイテッド市原・千葉リザーブズ)がバーの上へ外れるボレー。続く東京23FCの攻勢。
「前半はちょっと消極的になっていたかな」と渡辺監督も振り返るtonanサテライトは、長いボールを多用する中で、なかなか2トップの大園良介(23・桐蔭横浜大学)とジョセフ・アモドゥ・オフィク(20・オバンデアカデミー)にボールが収まりません。26分には亀井の右CKを大河原亮(24・FC琉球)が頭で折り返し、ジョセフが押し込もうと足に当てたボールはDFがクリア。確かに押し込まれる展開で、どうしてもクリアが最優先になり、2人にはかわいそうなボールが多かったという側面もありますが、「ヘディングの強さと、クリアを跳ね返す所の質が高かった」と渡辺監督が話した、中山友規(24・ガイナーレ鳥取)と伊藤で組む東京23FCのCBコンビが、地上でも空中でもほとんどノーミスでロングボールへ対応し続けた点も見逃せないポイントだったと思います。
すると28分に爆発した赤の咆哮。右サイドでボールを受けた田村は、タイミングを計ってスルーパス。飛び出した山本恭平。上がらない副審のフラッグ。迫り来るGK。なくなるコース。山本恭平が選んだのは、GKの頭上を抜くループ。柔らかく、しかし力強く揺らされたゴールネット。3度目の正直へ。東京23FCが先制点を奪いました。
33分にも東京23に絶好機。山本恭平が右に展開すると、ボランチの安東が思い切り良く駆け上がって中へ。山本恭平がフリーで走り込むも、ボレーはクロスバーの上へ。41分、右SBの渡邊敬人(24・神奈川大学)が縦へ付けると、反転から抜け出した田村がクロス。最後は渡邊のボレーが大きく枠を外れますが、「前半は思い通りの展開になかなかならなかった」(渡辺監督)tonanサテライトを公式記録ではシュートゼロに抑えた東京23FCが、その強さを誇示するような内容でリードを奪い、45分間が終了しました。
さて、「リスクを冒して前へ行こう。勇気を持って戦え」とハーフタイムに鼓舞されたtonanサテライト。すると後半のファーストチャンスは49分。美濃村のフィードを前向きに収めた大園は、左へ流れながらシュート。ボールはゴールの右へ逸れましたが、まずは積極的な姿勢を披露。50分、53分にもCKを獲得するなど、少しずつ攻撃の時間が増えていきます。
併せて高まる守備陣の集中力。59分、東京23FCはカウンターから山本恭平が左へスルーパス。一旦は完全に池田啓太(22・亜細亜大学)が抜け出しましたが、シュートは懸命に戻った大河原がブロック。さらに65分、安東の左クロスを山本孝平がダイレクトで折り返すと、田村が至近距離から打ったシュートをtonanサテライトGK橋本登(25・白鴎大学)は驚異的な反応で弾き出し、ボールは右のポストを叩いて、追加点にはなりません。
すると67分にはtonanサテライトに決定的なシーン。亀井が右に振り分け、受けた大朏秀人(24・駒澤大学)は斜め前へラストパス。抜け出したジョセフ。上がらない副審のフラッグ。迫り来るGK。なくなるコース。ジョセフが選んだのは、足元への低いシュート。東京23FCのGK斯波薫(29・浦安JSC)がビッグセーブ。スコアは動きません。
とはいえ、確実に変化しつつあるゲームの波。68分には亀井を下げて、「一瞬の動き出しが良く、一番得点感覚がある」(渡辺監督)大森亮太(24・足利工業大学)を投入して、3トップで勝負に出ます。70分もtonanサテライト。左サイドを抜群のスピードでぶち抜いたジョセフの折り返しは、フリーの大園へ届く寸前でDFがクリア。73分には東京23FC。中央から安東が直接狙った30m近いFKはクロスバーの上へ。
「ハーフタイムで修正が効いた」(渡辺監督)tonanサテライトの大逆襲。75分、怒濤の3本連続CKの3本目。大朏の蹴ったボールを大河原が頭で触り、大森が枠に収めたシュートはライン上で伊藤がクリア。80分、クサビを入れた美濃村がルーズボールを自ら拾って枠へ飛ばしたミドルは斯波がキャッチ。81分には東京23FCが先制ゴールの山本恭平に替えて、山下亮介(26・福島ユナイテッド)を送り込み、中盤にテコ入れ。83分、大朏の右CKを大河原が頭で折り返すもバーの上へ。「後半がウチの狙い」と渡辺監督。それでも、あと一手。あと一手が届きません。
押し込まれた東京23FCでしたが、終盤は着実に悲願へのカウントダウンを遂行。焦るtonanサテライトのファウルを誘い、時間をうまく使いながら、87分には池田が獲得したFKから安東があわやというミドル。92分にも山下が左からドリブルで切れ込み、池田を経由して田村が放った決定的なシュートはバーの上へ外れましたが、最後まで2点目を貪欲に狙いに行きます。
掲示されたアディショナルタイムの3分も過ぎ去り、ラストプレーはtonanサテライトのFK。蹴り込まれたボールがクリアされると、市原臨海に鳴り響いたタイムアップのホイッスル。東京23FCが最後は粘り強く勝利をもぎ取り、来シーズンからの関東昇格を手にする結果となりました。
あと一歩で昇格を逃す格好になったtonanサテライト。「選手のレベルもあると思うんですけど、奪った後のパスやフィードの精度やサポートの質は、まだまだ相手の方が1枚上でした」とは渡辺監督ですが、後半は互角に近い内容を見せてくれました。
サテライトと言っても、普段の練習は関東1部に所属する、いわゆるトップチームと一緒とのこと。大河原と大朏、サブに入っていたGK鏑木豪(34・アルテ高崎)の3選手が8月に登録変更でサテライトに来たそうですが、3人以外にも今日のメンバーから来シーズンはトップでプレーする選手が出てくるかもしれませんし、「最初見た時はどうなることかと思ったけど、1年前から比べれば劇的に成長しているのは感じた」と渡辺監督も笑顔を見せたサテライト自体のさらなる躍進も期待できそうです。
今日も群馬から大挙して駆け付けたスクール生の子供たちが、普段はコーチとしてプレーする選手に大音量の応援を送る姿は、「地域貢献を一番に考えている」(渡辺監督)クラブを象徴するような光景。是非トップ、サテライト共に新シーズンの活躍を楽しみにしたいと思います。 土屋
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