共にここまでPK戦での勝利が1回ずつ。それ以外のゲームも接戦をモノにしてきた四日市中央工と広島皆実の準々決勝は、開始から皆実のアグレッシブな姿勢が目立ちます。特に谷本泰基(3年)と佐々木進(3年)の両SHはミドルシュートやドリブルで積極的に仕掛け、ペース奪取に成功。これには四中工の樋口士郎監督も「まったくボールに対してプレスをかけられず、DFラインも引き過ぎた」と語り、キャプテンの稲森睦(3年)も「立ち上がりの入り方が本当に悪かった」と、序盤の消極的な姿勢を指摘。するとやはり先制点は皆実に。初戦で退場処分を受けた左SBの崎原拓也(3年)がサイドを鋭くえぐって折り返し。DFがクリアしきれなかった所を浜田晃(3年)がプッシュ。「いい時間帯で点を取ってくれた」と皆実の藤井潔監督も振り返った21分のゴールで、守備に自信を持つチームにとって大きなアドバンテージを得ました。さらに後半に入り43分、浜田のCKがワンバウンドして中央へ送られると、うまくボールに合わせた右SBの村田俊介(3年)が頭で押し込んで追加点。両SBが1点ずつに絡む活躍を見せ、3試合で1失点の皆実にしてみれば、だいぶ安全圏に近い点差を付けることに成功しました。さて、「前からプレッシャーをかける」(稲森)戦い方が機能せず、攻撃の形も見えてこない四中工でしたが、強豪ひしめく東海プリンスの得点王に輝いた榎信博(3年)がその片鱗を披露します。51分にゴール前へと侵入、2回のフェイクでDFを振り切り右スミを狙う巧みなシュート。しかし皆実GK神舎宏(2年)がファインセーブで凌ぎ、バックスタンドの応援団もため息。そしてこれが四中工最後のチャンスとなり、「相手の8番(4-1-3-2の1を担当した長谷川由)にボールが落ちてる感じを受けたのでそこの孤立と、両SBを封じ込めたい」(藤井監督)と皆実は4-4-2から4-5-1へのシフトで中盤を厚くする磐石の構え。「思ったよりも慌てずに2-0の時間を長く引っ張れた」(藤井監督)展開で最終ラインもキャプテン松岡祐介(3年)を軸に付け入る隙を与えず、80分間を零封。2年連続で越えられなかったベスト8の壁を見事に撃破し、埼スタ行きの切符を掴み取りました。四中工は初めて試合を見ましたが、これが本調子ではなかったはず。やはりやや受けてしまった序盤で削がれた勢いを取り戻せなかった印象です。「前に対してチャレンジする気持ちが足りなかった」(樋口監督)「100%僕らの実力を出せなかった」(稲森)。悔いの残るゲームだったようです。一方、チーム初のベスト4に進出した皆実・藤井監督は「それぞれ違う試合を乗り越えたので、選手も自分たちのスタイルに自信はあると思う」と手応えを感じている様子。10日の埼スタをくぐり抜ければ、いよいよ次は夢の国立です。　 AD土屋