準決勝では座間を苦しみながらもPK戦の末に下し、2年ぶり5回目の代表に王手を懸けた桐光学園。一方、3年ぶり3度目の全国を狙うのは麻布大渕野辺。神奈川県の決勝は、夏のインターハイ予選と同じカードになりました。出足はほぼ互角ながら、ややサイドをうまく使った桐光の攻撃が目立ち始めると16分、注目のFW瀬沼優司(3年・上溝南中・U-19)の落としから寺内渉(3年・横浜FC泉)がスルーパス、岸本伸(3年・六角橋中)はGKともつれながら先にボールへ触れて先制点。比較的早い段階で試合は動きます。対する渕野辺も徐々にパスがしっかりと繋がり出し、中盤で優勢に立つと、左WBの石井佑侍(3年・茅ケ崎第一中)にボールを集め、そこからの突破やクロスからチャンスを創出。36分には石井のクロスから最後は森泰知(3年・FC多摩)が狙いすましたシュート。これはスピードもコースもやや甘くGKに阻まれますが、失点以降は渕野辺がペースを握る展開になりました。後半もお互い攻め合う流れは続きますが、50分に生まれたゴールはまたも桐光。なんでもないフィードの処理をDFがもたつくと、並走していた瀬沼が抜け出してGKと1対1。冷静に右スミへ流し込み、2点の差がつきました。まずは1点を返したい渕野辺も、アイデアのあるパスワークからゴール前までは近付くものの、「ゼロで行こうという意志統一はあった」と語る、キャプテンのボランチ久保昌成(3年・町田JFC)と、稲川裕馬(3年・FC町田)、岸本準(3年・六角橋中)のCBを中心とした桐光の守備が磐石の構え。危ない局面ではことごとく体を投げ出して、決定的なシーンを創らせません。最後はかなり前掛かって来た相手に対しても、冷静に対応してシャットアウト。このゲームに限っては、守備陣の集中したパフォーマンスが勝利の要因となって、桐光が昨年失った全国への切符を見事に獲得しました。個々の技術では、五分かそれ以上のクオリティを持っていた渕野辺は、パターンとして崩す形は見せてくれましたが、フィニッシュのパワーで桐光に及ばなかった印象です。ただ、全国に出ても十分に戦えるレベルは有しているようにも感じました。勝った桐光は、注目度からいっても瀬沼には厳しいマークが予想されますが、彼に依存したチームではないと思います。相手との力関係次第ではあるものの、堅守速攻がベースになるはずなので、どのくらい焦れずに試合を進められるかが、上位進出への鍵になりそうな気がします。まあどちらの応援団も数、声援共に多かったんですけど、個人的には大宮、東京V、新潟、湘南、G大阪などのオリジナルチャントを完全に自分たちのモノにしていた渕野辺応援団に拍手を送りたいと思います。　　　AD土屋