目指すは悲願の全国制覇のみ。豊富な戦力を抱えて、優勝候補の呼び声も高い前橋育英は開始直後からいきなりフルスロットル。2分、右サイドから佐藤穣(3年・草津内定)、西澤厚志(2年)と綺麗に繋いだボールをキャプテンの米田賢生(3年)が流し込み、あっという間に先制します。その後も6分、7分、8分と立て続けに決定機を創出。京都橘がかなりリトリートしたこともあって、ポゼッションも8対2くらいで育英優勢となり、ゲームは一方的なものになりつつありました。しかし、逆に余裕があり過ぎたのか、20分過ぎからは「パスを相手に引っ掛けて繋がらない」(前橋育英・山田耕介監督)状態に。流れの中からいい形を創れなくなっていきます。ただ、京都橘も時折ボールカットからカウンター気味にはなるものの、34分に河井二三弥(3年)が右からのクロスを頭で合わせたのがインプレーからは唯一のシュート。やや膠着した展開で、40分を終えました。後半に入っても「リトリートされてどうしようどうしようって感じ」を見て取った育英の山田監督は45分、187センチの1年生FW小牟田洋佑を投入し、185センチの皆川佑介(2年)と前に2枚の長身を並べ、「2人をターゲットに打開しよう」と戦い方を明確な形で打ち出します。すると67分、中央で佐藤がヒールパスを送ると、呼応するかのように皆川もヒールでDFラインの裏へ。ここに走り込んだのはボランチの六平光成(3年)。GKを冷静にかわして、無人のゴールへ確実にプッシュ。結果的には皆川がターゲットとしてフィニッシュに絡んでの追加点。後半はややラインを上げて、ゴールを狙いに来ていた京都橘の米澤一成監督も「入れ替わりの部分でやられた。一瞬の隙を突ける所が違うな」と振り返ったゴールで、育英が大きな2点目を挙げました。終盤、京都橘はDFの藤井悠馬(3年)を前線に上げて1点を奪いに行きますが、なかなかチャンスに結び付けられないままタイムアップ。終わってみれば、実力差を見せ付ける勝ち方で育英が2回戦へと進む結果になりました。京都橘は結局シュート3本しか打てず。「可能性の低いことはしない」(米澤監督)スタイルの中、今日に限っては「可能性の高い所まで行けてなかった」(同)のが実際でしょう。ただ、河井と長谷川将大(3年)は高い技術で奮闘。米澤監督が「次の代に向けてこういうステージでやらなあかんと示せたのが収穫」と語ったように、試合に出場した7人を含む1、2年生もその先輩の背中はしっかりと脳裏に焼き付けたと思います。さて、引いた相手に苦労しながら初戦を突破した育英。「あんまりよくないが、結果として勝てたことは次に繋がる」と山田監督。米田も「一戦一戦目の前の試合をやっていく」とのこと。頂点へ向けて、手放しで喜ぶとまでは行かないものの、上々のスタートだったとは言ってもいいのではないでしょうか。　 AD土屋