リーグ8戦勝ちなしで、3位にまで順位を落としてしまった栃木SC。Jリーグ昇格に向けて成績面での条件である4位以内確保にも黄信号が灯り始めました。今日の対戦相手は準加盟のライバル、ガイナーレ鳥取。栃木とは対照的に7月末から快進撃を見せ、目下3連勝。一時は12位にまで沈んだ状態から、4位との勝ち点差も1まで猛追。観客動員もここに来てうなぎ登りと、あらゆる事態が好転しかけているクラブです。気温は10.6度、吐く息も白く、冬の気配を感じる中でゲームはキックオフを迎えました。「相手が引き込んでくるのはわかってた」と栃木の柱谷幸一監督が言うように、鳥取は実質5-4-1とも言える守備的な布陣でスタート。「前半は0対0で抑えて欲しい」(鳥取・ヴィタヤ・ラオハクル監督)という現実的な策を採ってきます。それでも立ち上がりは鳥取の低い位置でのキープからカウンターが目立つ展開に。栃木は1トップ2シャドーの3人が流れに絡めず、セカンドボールも支配され、攻め手が見い出せません。そんな中、徐々に存在感を発揮してきたのが栃木のボランチ落合正幸。少し下がって相手がプレスに来ないフリーの位置でボールを受け、じっくりとパスを回すことでチームに落ち着きを取り戻させます。すると前から行かない鳥取はほとんどボールに触れなくなり、全体のラインも下がりがちに。そんな栃木がジワジワと圧力を掛ける中で先制点。決めたのは流れそのままにホームチーム。35分、佐藤悠介のCK、GKのパンチングが小さくなった所を松田正俊がダイレクトでボレー、ボールはゆっくりと静かに右スミへと吸い込まれます。開幕当初はエースと期待された男の開幕戦以来となる一発で、まずは先手を取りました。逆転昇格を考えても勝ち点の欲しい鳥取は「9人で守るのは失点したら難しい」(ヴィタヤ監督)と、後半開始から2トップに加えて、中盤中央を3枚にした3-5-2にシフトチェンジ。すると、これが功を奏したかどうかの効果が出るより前に、まずゴールが生まれます。47分、鶴見聡貴が素早く左へ出すと小井手翔太が中央へ素晴らしいクロス。二アで田村祐基がヘディングを放つと、ボールはクロスバーを叩くものの、落下してそのままゴールの中へ。ほぼゲーム初の決定機をモノにした鳥取が、後半開始早々にスコアをタイに戻しました。さて、「今日は1つの大きなキーポイント」と柱谷監督が位置付けていたのは、2シャドーのポジション。しかし、残念ながらここに起用された佐藤と小林成光が機能したとは言えません。特に小林は「相手に脅威を与えるプレーは少なかった」と柱谷監督も不満顔。エースの佐藤も全体的にプレーが遅く、テンポアップが必要な場面でも持ち過ぎる場面が散見。頼みのセットプレーでもボールの精度が悪く、低調な出来に終始してしまった印象です。さらに「相手がフォーメーションを変えたことでアタフタした」(栃木・斎藤雅也)からか、枚数で上回るはずの中盤でもことごとくルーズボールを拾われるなど劣勢に。76分にはFC東京からレンタルで加わった鈴木健児の35m近いミドルがクロスバーを直撃するなど、鳥取もチャンスを創出。結果、ドローで終了となりましたが、内容から見ても両者勝ち点1ずつが妥当な対価だったと思います。鳥取のヴィタヤ監督は「アウェイゲームで勝ち点1なら本当は満足と言わなきゃいけない」としながらも「カウンターの勇気は10点満点で5点くらい」と、やや残念な表情。何人か本調子ではなかった選手を名指しするなど、決して納得の行く結果ではなかったことがありありと伺えました。一方の柱谷監督も「最後の所が問題。1-0でもいいんだけど、やはり2点欲しい」と、複数得点をなかなか奪えない状況に落胆気味。今日見た限り、攻撃は連動性に乏しく佐藤の左足頼みの感は否めず。その生命線も不発とあっては、苦戦は免れません。「残り4試合は開き直って、前を見て行くしかない」(柱谷監督)「もうやるしかない。ただやるだけ」(斎藤)。終盤になって混沌としてきた、JFLの4位以内を巡る苛烈な戦いも残すは4試合です。　　　AD土屋