コパ・エンペラドール本日2試合目もJ2と地域リーグの激突。J1昇格最右翼候補の湘南と、北信越リーグでは4位、来週からの全国社会人選手権にJFL昇格への望みを託す、長野県代表・松本山雅FCの一戦です。ゲームは「スタートからチャレンジ精神で」(松本山雅FC・柿本倫明)前へ前へと積極的なプレスに打って出た松本山雅の勢いが優る立ち上がり。湘南は細かいミスも目立ち、やや受ける格好で入ってしまいます。松本山雅の基点は右の中盤に入った大西康平。高い技術からのパスもドリブルも効果的で、中盤でのアクセントとして躍動します。ただ、相手はJ2で3位に位置するチーム。松本山雅の吉澤英生監督が「2トップと両CBが出てきて頂けて尊重してもらった。ある程度のベストメンバーを組んでくれたことに感謝したい」と語ったように、主力がズラリと顔を揃えた湘南はやはり老獪。23分、加藤のクロスをジャーンが折り返すと原が頭で流し込みます。最初の決定機を確実に仕留めて、先制しました。300人は優に越える大集団で駆け付けた松本山雅サポーターもさすがに落胆の色。しかし彼らは3分後、歓喜に包まれます。大西との大きなワンツーから左SBの阿部琢久哉が抜け出し、中央へグラウンダーのクロスを送ると、待っていたのは「練習通りの形。信じて入っていけば来るかなと思った」柿本。昨年まで所属した古巣に手痛い一撃を食らわせ、スコアをタイに戻しました。もう1つ松本山雅で目立ったのはフィジカルの強さ。中でもCBの矢畑智裕と三本菅崇はやや荒さを含みながらも、タイトな寄せで石原と原を自由にさせず、ここをうまく潰せたことが拮抗した展開に繋がっていたと思います。ほとんど互角で終了した前半を受けて迎えた後半は、さすがに湘南がポゼッションでもサイドの主導権争いでも圧倒。中村を下げて坂本を投入し、さらに中盤の厚みは増します。序盤から激しくチェイスを繰り返した松本山雅のオフェンス陣にもさすがに疲労が見え始め、プレスが掛かり切らないためにラインも下がり気味に。左右から攻め立てる相手の前に防戦一方となりました。それでも守備陣はとにかくシュートコースに体を投げ出してはブロックを連発。集中が切れません。さらに、59分の原、65分の原、72分の永田、74分の菊池と、次々に訪れた決定機はことごとくGKの正面や枠外へ。「決定的なシーンを外してもらった」(吉澤監督)面にも助けられました。そうして耐えて耐えた中、87分には松本山雅に千載一遇のチャンス。三本菅が素晴らしいインターセプトから持ち上がり、最高のスルーパス。受けた今井昌太は狙いすましたシュートを放つも、飛び出したGKキム・ヨンギがファインセーブ。後半は点が入らず、延長戦にもつれ込むことになりました。延長も攻守の基本構図は変わらないものの、松本山雅が逆に再び盛り返して惜しいシュートシーンも創出。「“松本”としてのプライド、長野県代表としての誇りを持って戦ってくれた」と吉澤監督も讃えた120分間は終わり、勝敗はPK戦に委ねられることとなりました。2人ずつ成功して迎えた3人目、先攻の湘南は決めますが、後攻の松本山雅・川田和宏のキックはキムヨンギがセーブ。4人目は共に成功し、湘南は決めれば勝利の5人目に大ベテランの斉藤を送り出します。慎重に蹴られたキックは、しかしGK原裕晃が弾き出し九死に一生を得た長野王者。矢畑が沈め、まだ戦いは終わりません。そして6人目、湘南・石原のキックは正面に飛び、再び原がストップ。最後は途中出場の小澤修一が確実にネットを揺らして、3回戦最大のジャイアントキリングはここに完成しました。PK戦とはいえ、「勝たなければいけないゲーム」(湘南・菅野将晃監督)で結果として屈辱的な敗戦を喫した湘南。難しい試合とは言っても、後半以降あれだけ攻め続けて1点も奪えなかったのはあまりに腑甲斐ない結末。打てる所で必要以上に回したりするシーンもまま見られ、「多少の甘さはあった」(菅野監督)上に、「格下ということでちょっとナメてたんじゃないか」(柿本)と言われても仕方ありません。残るは6試合のリーグ戦のみ。今日のことは早く忘れるしかないでしょう。さて、おそらく今日は日本サッカー界の主役となった松本山雅。驚異的な粘りは感動すら与えてくれました。各ポジションに核となる選手も配置され、近いカテゴリーの相手ならかなりゲームを支配できそうな印象を受けました。柿本も語ったように「最終的な目標は天皇杯じゃなくて全社」。来週からの本番では、この勝利で一層マークも厳しくなりそうですが活躍を楽しみにしたいですね。最後に、松本山雅のサポーターは熱かった！人数の多さもさることながら、応援歌のバリエーションも豊富。三本菅の応援歌に、かのtrfの名曲「EZ DO DANCE」をチョイスするセンスにグッと来ました。是非機会があればアルウィンにも行ってみたいですね。　　AD土屋