会見で「前半がすべて」と語った植木監督。実際に開始直後から山崎が中途半端なポジションを取ったことで、福岡は軽いパニック状態に陥り、リトバルスキー監督がテクニカルエリア一杯まで飛び出して修正に奔走します。それでも15分には寺田、島田、後藤と繋いで最後は山崎のシュート、こぼれを松下が左足ミドルと連続して決定機を創出。共にGK神山の素晴らしいセーブに防がれましたが、完全にペースを掌握しました。リトバルスキー監督も「草津はなぜパフォーマンスが向上しているかを前半の15分で証明した」と語っています。しかし前半の決定的なチャンスはこの15分まで。徐々に草津から見て左サイドの裏のスペースを田中に突かれ始めると、それに呼応する形で逆サイドの中島も上がる機会が増え、拮抗した流れになっていきます。福岡は33分、田中のクロスが流れた所、拾った中島のボールを大久保が頭で狙い、惜しくも外れましたが得点の予感を見せると、その5分後に先制点。今度は中島のクロスが流れて田中へ。中央へ送るとハーフナーが高い打点から叩き込み、正田醤油スタジアムを沈黙させました。後半に入ると、福岡はよりマンツーマンマークを強化して守備を固めます。草津も中央でプレーすることの多かった島田にボールを集めるものの、なかなかシュートまで行けない展開。すると66分、中央ゴールまで30m近い距離から中島のFKは、「カベが3枚いて内側を巻かれて決められるのは…」と植木監督を嘆かせる直接ゴール。福岡が2点のアドバンテージを得ました。8試合負けなしの草津も、75分には松下の浮き球に高田が頭で繋いだボールを後藤が左スミに流し込み、追撃開始。さらに高田にマンツーマンで付いていた柳楽が、その高田へのファウルで2枚目のイエローカードを受けて退場。数的有利を得て、最後の猛攻に打って出ます。が、「大胆さが足りなかった」(植木監督)こともあって、得点後は流れの中からシュートが打てずに、「残り15分のタフで激しいゲーム」(リトバルスキー監督)を凌ぎ切った福岡が、1点差で逃げ切る格好となりました。草津は冒頭の植木監督の言葉通り、前半の15分までに1点入っていればかなり楽に勝てていた可能性が高かったと思います。その後もポゼッションこそしながらも、なかなかシュートの選択が見られなかったのは残念でした。ただ、「しっかり戦っていたし内容も悪くなかった」(植木監督)ので「いいクスリになった」(同)と、切り替えて次に向かって欲しいですね。さて勝った福岡は今年初めて現場で見たのですが、本当にマンツーマンディフェンスを徹底して敷いていました。攻撃もクロスから高さのあるFWにぶつける形を徹底。とはいえ、後半のシュートは中島のFKを含めても2本。攻守共に積極性はあまり見られなかったのが実情です。リトバルスキー監督は会見で「ハードワークもできていたしして内容もよかった」と語りましたが、個人的にはアレだけ能力のある選手たちが、このスタイルで納得しているのかなあとちょっと考えてしまいました。　　AD土屋