現在5連勝で堂々2位に位置する山形。その山形の6試合前が、前半2点をリードしながら悪夢の逆転負けを喫したみちのくダービーでした。「この間逆転負けしたのがすごく悔しかった」(山形・石井秀典)「次はホームで絶対倒す」(山形・石川竜也)と意気込む選手たちを、サポーターも“YMGT”のコレオグラフィーと大量の紙吹雪で後押し。今シーズン唯一山形で開催されるダービーは、素晴らしい雰囲気でキックオフされました。まずチャンスを迎えたのは仙台。4分、田村がDFの間をスルスル抜け出すとGKまでかわしてシュート。左ポストをかすめて外れますが、「うまく試合に入れたなあ」と手倉森誠監督も感じた様子。やや山形の中盤でのプレスがルーズだったため、簡単にクサビが入ってワイドに展開できることで仙台の時間が続きます。しかし唐突な先制点は18分、右サイドのスローインから宮本のクロスを宮沢が「凄く気合いの入ったヘディング」と小林伸二監督も称賛する一撃。リズムを掴めなかったホームチームがリードを奪いました。仙台はセカンドボールもしっかり拾え、中盤でも流動的なポジションチェンジから「ボールを持つことで展開を有利に進められた」(手倉森監督)ものの、逆に手数がかかってしまいチャンスに結び付けられません。すると徐々に山形がボールを回し始めて落ち着きを取り戻すと、43分には佐藤がクロスバー直撃の強烈なミドル。全体的には仙台ペースながら、山形の1点リードで45分を終えました。やや持ち直しかけたチームに対して小林監督はハーフタイムに「少しボールを繋ぐと持ち上がれる。落ち着いてやれれば2点目は取れる」と指示。改めて戦い方を徹底します。その影響もあってか、後半は序盤から宮沢と石川の左サイドを基点にポゼッションでき始めた山形の流れに。54分には宮沢のFKをファーサイドでフリーの秋葉が頭で合わせると、ここは仙台GK林に弾かれますが、小林監督は「CKかFKで点が取れそうな」雰囲気を感じます。すると波状攻撃で奪った66分のCK、石川のキックは飛び込んだ石井の頭にドンピシャ。「触った瞬間に入ったと思った」ルーキーのゴールで、山形は2点のアドバンテージを得ました。厳しくなった手倉森監督は、中原と富田を送り込んで3-5-2にシフト。ツートップ下に移したリャンヨンギと、右サイドの佐藤由紀彦から崩そうと試みます。しかしここでも冷静な小林采配。山形のダブルボランチに対して、中盤センターを3枚にしてきた相手に「受けてしまうと押し込まれる。自分たちのやり方は一緒」と普段通りの守備を強調。選手たちもそれに応え、やや押し込まれる時間をうまくやり過ごします。ラスト5分を切ってから見せた時間の使い方も狡猾で、少しずつ残り時間を潰していくと、焦る仙台を尻目にさらなる強さを証明する瞬間が。90分を2分ほど過ぎた頃、カウンターからサイドチェンジを経て宮崎がシュート。このこぼれ球を根本が素早く折り返し、最後は長谷川。見事なダメ押しゴールまで飛び出し、「惜敗というどころではなく完敗」と敵将も脱帽するゲーム運びで山形が3-0と仙台を粉砕。2年ぶりのダービー勝利を挙げると共に、最高の形で1ヶ月前のリベンジを果たしました。これで6連勝となった小林監督は「最後にもう1点取るという勢いが嬉しかった。この1ヶ月で凄く逞しくなった」と言いつつも、この強さは本物かという質問には「シーズン通して初めて答えが出る。どうしても調子のいい時と悪い時があるし、チームも若いので本物ではないと思う」と慎重なコメント。次節から甲府、湘南、広島と続く6月の残り3試合でも結果を残すようであれば、いよいよ山形も昇格有力候補としての力を確実に認められることになるでしょうし、その可能性は決して小さくないと思います。なお、試合前に山形のディーオと仙台のベガッ太が2人乗りの自転車で場内をグルグル回っていた所に、ダービーの素晴らしさを感じました。写真は天童駅前にあるポスト。わかりやすいっす。　　AD土屋