リーグ開幕5連勝。ACLもいまだ負けなしと現在最も安定した力を誇る鹿島。開幕連敗。エンゲルス監督就任後は3連勝と復調気味も、まだまだ本来の力強さは感じられない浦和。昨シーズンの1位2位対決。序盤戦随一の注目カードは54450人を飲み込んだ埼玉スタジアムで行われました。鹿島は負傷した内田の所に伊野波、野沢に替えてダニーロがスタメン。それでもやるべきことの意志統一に迷いのないチームは、「サイドをキッチリ使って攻める」(鹿島・本山雅志)という監督の指示通り、小笠原と青木が散らしてSBも積極的に絡む攻撃で浦和を押し込み、特に左サイドの新井場とダニーロの連携は抜群で、何度もえぐってはチャンスを創出します。ボールを支配される時間が続く浦和はサイドの攻防で後手に回り、実質5バック状態。「一番調子のいい選手を出したいし、それでポジションを決めたい」と語ったエンゲルス監督によって今日はツートップ下で起用された闘利王も、劣勢の中では守備面に奔走するのが精一杯。攻守の切り替えも遅く、高原とエジミウソンにボールが入ってもフォローが間に合わずに孤立し、チーム初シュートは何と34分。42分には完全に左サイドを崩され、決定的なピンチを迎えますが、GK都築が凌ぎます。スコアは動いていないものの、かなり厳しい45分を終えたエンゲルス監督は、チーム全体の低パフォーマンスに埋没した感のある高原に替えて後半開始から永井をピッチへ。これが奏功します。49分、山田からパスを受けた鈴木がスペースへボールを送るとオフサイドラインギリギリで抜け出した闘利王が最高の折り返し。永井が無人のゴールへ流し込み、意外にも浦和が先手を取りました。まさかの失点を喫した鹿島は、この後も永井の巧みな動きを捕まえ切れずバタバタしかけますが、60分も過ぎるとしっかり修正。「前からプレッシャーをかけたかった」(エンゲルス監督)梅崎投入も状況は変わらず、ボールを回しながら圧力をかけ続けます。しかしここに立ちはだかったのが都築。77分小笠原のFK、81分には再び小笠原のFK、さらに直後の増田のミドルも全て弾き出すなどファィンセーブ連発でゴールを死守。苦しいチームを鼓舞します。そして追いすがるライバルに引導を渡したのも永井。スタジアムの時計表示が消えた頃、大岩のバックパスが弱くなった所を見逃さず、GKもかわしてトドメの2点目。「相手を押し込んで何もさせずに多くの時間帯で主導権を握って攻撃できた」(鹿島・オリヴェイラ監督)側が、終わってみれば2点差で負けているという、ある種フットボールが持つ理不尽な側面が現れた、奇妙なゲームだったと言えるかもしれません。ただ、やはり鹿島の敗因はオリヴェイラ監督が話した、「チャンスがあったが決められなかった」ことに尽きるでしょう。都築の存在もありましたが、鹿島自体もややエリア周辺で綺麗にやり過ぎることで手詰まりになるシーンも散見されました。なまじうまく繋げただけに、チャレンジへの意識が希薄になった印象です。終始劣勢ながら結果を出した浦和はこれで4連勝。攻撃面での迫力にはまだまだ欠けるのが懸念材料ではあるものの、いよいよ赤い巨人の反攻が本格化してきたようですね。　　AD土屋