このゲームの結果によって昇格を狙う各チームが受ける影響を考えれば、今シーズンのJ2で最も重要な試合と言ってもいいであろう、2位東京Vと3位仙台の直接対決。現在両者の勝ち点差は5。それが2になるのか8になるのか。Jリーグプレビューショーで、大分のシャムスカ監督は明日に控えた大宮との大一番を「勝ち点6の価値があるゲーム」と称しましたが、まさに今日の味スタもその表現の当てはまるビッグマッチ。朝から地面を濡らし続ける冷たい雨にも拘らず、バス26台で駆け付けた仙台サポーターを含む16342人もの観衆が訪れ、キックオフの笛は吹かれました。まず目に付いたのは仙台の出足の良さ。前線から猛然とプレスを仕掛け、中盤より後ろも徹底してスペースを埋めるポジショニングで隙を作りません。「立ち上がりが慎重過ぎた」(東京V・ラモス監督)ホームチームはパスコースも限定され機能不全に。すると9分、中盤で大野のミスからボールを奪った仙台は萬代が横にはたくと、「トラップした時に前が空いていた」と振り返ったリャンヨンギが、「芝が濡れているのはわかっていたので」グラウンダーでミドルシュート。これが左スミに吸い込まれ、仙台が先手を取りました。さて、中央を固め、時にはボールホルダーに4人が襲い掛かっていた仙台に対して使うべきはサイドのスペース。ラモス監督も「中央だけでは崩せない。もっとサイドから」と指示していたようですが、前半25分過ぎからはキープ率で圧倒的に上回った東京Vは、徐々にフッキとディエゴへボールが入り始めたために中央からの攻撃が多発。少ないながらも繰り出されるクロスは精度に欠け、なかなかチャンスは生まれません。その中でもやはりフッキは別格。24分には30m近いミドル、34分には左サイド角度のない所から強烈なシュート、41分には3人のDFの間をすり抜けてシュートと、ゴールにこそなりませんでしたが個の脅威を十分に見せ付けます。しかしスコアは0ー1。「前半はプラン通り」(仙台・萬代)だった仙台が1点のアドバンテージを得て45分を終えました。後半は開始から、回して回して圧力をかける東京V、引いて耐える仙台という構図がよりハッキリしてきます。ここで効いていたのは東京Vのボランチ菅原。完全にカウンター狙いになった仙台が、追加点を狙って繰り出そうとする攻撃の芽は彼がつぶさにチェック。58分のピンチにも体を投げ出してクリアするなど、チームを引き締めます。ラモス監督は63分にSHとしてシウバを投入。これでサイドへの意識も高まり、仙台はラインがかなり下がってほとんど前へと出てこれなくなりました。怖いフッキも強引なシュートというより、驚異的な突破力でサイドをえぐってからのクロスでチャンスを演出。さらに73分には30m近い距離のFKを弾丸ライナーで右ポストにぶつけ、観客を唖然とさせます。そしてよく守っていた仙台が決壊したのは77分。自ら蹴ったCKのこぼれ球を服部が再び中へ送ると、ディエゴがうまくボレーで叩いて左スミへ。10分強を残して、両者の得点差はなくなりました。「押し切ってしまいたかったがスキを突かれた」(仙台・望月監督)仙台は、ファビーニョと中原を相次いで投入し、勝ち点3を奪おうと総攻撃に。88分にフッキの凄まじい無回転ミドルを林が防ぐと、最後のチャンスを迎えます。90分を2分過ぎた頃、磯崎のクロスを中原が競り勝って萬代へ。しっかりトラップしてエリア内から放ったシュートは、しかしゴール右へと外れます。「引き分けでもよかったとは思うが残念」(東京V・ラモス監督)「勝ち点3を狙ったので悔しい結果」(仙台・望月監督)という気持ちの入ったゲームは1ー1のドローとなりました。この試合を受けて、札幌は明日のゲームで勝利し、京都が引き分け以下なら昇格が決定します。さてこの2チームの今後ですが、東京Vは次節がお休み、51節ホームで愛媛、最終節はアウェイでC大阪となっています。しかし対戦相手云々よりとうとうフッキがイエローカードを貰ったため、残り2試合は欠場。これがどう作用するかは要注目です。一方の仙台は次節がホーム湘南、そしてアウェイ京都にホーム徳島と続きます。しかしこちらも萬代が今日のイエローで2試合のサスペンション。今のままなら3位が決まる試合になり得る京都戦にも出られません。昇格請負人として名高い岡山は試合後「残り3つ勝ったら上がれると思っている。勝たないと話にならない立場にいるので、3つ絶対勝ちます」と語りました。長かったJ2戦線もいよいよ終幕が近付いてきています。　　　AD土屋