昨年に続いてクラブユース勢と高体連勢の対戦となった高円宮杯の決勝。栄えあるファイナリストは、トーナメントに入ってから東京V、G大阪、名古屋を撃破して3年ぶりの優勝を狙う広島ユースと、インターハイではベスト4へと躍進、今大会はここまでの6試合全てで勝利を挙げ、悲願の全国初タイトルを狙う流通経済大柏。申し分のないカードになりました。舞台は小雨降る埼玉スタジアム2002。観客もやはり中高生の姿が目立ちますね。さてゲームです。広島は4ー3ー3の布陣。ボランチにはUー17W杯日本代表の主力、岡本知剛(2年・サンフレッチェびんごJY)が入ります。対する流経柏は中盤がダブルボランチの4ー4ー2。前線にはインターハイ得点王、今大会も単独トップの8ゴールをマークしている大前元紀(3年・町田JFC)という傑出したFWが唯一の獲物を狙い続けます。序盤は決勝らしく静かな立ち上がりに。流経柏は大前と上條宏晃(3年・市原市立ちはら台南中)のツートップへ簡単にボールを付け、広島は裏へとシンプルに蹴っていたことから、ボールが行き来する展開が続きます。そんな中、11分には上條の落としから大前が左足を一閃、これはUー17W杯メンバーのGK原裕太郎(2年・サンフレッチェくにびき)がセーブしますが、1分後には逆に大前のクロスに上條が合わせるとゴールわずか左へ。流経柏が主導権を握り始めます。広島も強固な守備からカウンターに出たい所でしたが、なかなか3トップにボールが収まらず、時々前へ入っても周囲のフォローが遅いために単独で仕掛けてはロストというシーンが続出。また流経柏DFのラインコントロールが素晴らしく、裏へもすり抜けられません。ロスタイムには横竹翔(3年・広島JY)のクロスに内田健太(3年・四日市中央FC)が頭から飛び込みますが枠を外れ、前半は流経柏優勢で終了しました。エンドが変わった後半、試合は早々に動きます。52分、前半から積極的に攻撃へと関与していた左SB比嘉祐介(3年・名護市立大宮中)のスルーパスに大前が反応。ラインギリギリで中へ折り返すと、そのボールをGKとDFがお見合い。走り込んでいた小島聖矢(3年・ヴェルディSS小山)が無人のゴールへ流し込み、流経柏が待望の先制点を奪いました。すると本田監督は3分後に大胆なシフトチェンジ(普段もよく使うパターンなのかもしれませんが)を敢行。右SHとボランチに替えてFW登録の選手を2人投入。左SHだった村瀬勇太(3年・柏イーグルスTOR'82)を中に入れ、上條と大前のツートップをそっくりそのまま左右のSHへと動かします。さすが名将、本田裕一郎の采配はズバリ。SHを含む前の4人が見せる果敢なプレスは効果てきめん、村瀬と中里崇宏(3年・ヴェルディJY)のボランチもバランスが取れていて、相手に決定機らしいシーンをほとんど作らせません。広島も岡本がボールを持つと何か起きそうな予感がするのですが、やはり連動性のある攻撃は繰り出せないままタイムアップ。今や高校サッカー界で確固たる地位を築いている流通経済大柏に、とうとう"全国制覇"というタイトルがもたらされました。そして得点王はそのまま大前が獲得。ユース年代の出場可能な主要3大会全てでのトップスコアラーという可能性を残して、選手権に挑むこととなります。あくまでこの試合を見ただけの感想ですが、クラブユースの横綱と評されていた広島ユースより、私には流経柏の方が個々のテクニックで勝っているように見えました。加えて90分落ちない運動量、控え選手の充実、いやあ、千葉の選手権予選はエラいことになりそうですねえ。　　AD土屋