最終の第4クールに入り、現実的に厳しいことは否めないもののいまだ数字上は昇格への望みを繋いでいる湘南。あまりに今年の躍進がクローズアップされ過ぎて忘れてる方も多いかもしれませんが、昨年は今日の対戦相手である水戸より1つ下の11位でシーズンを終えてたんです。確かにGK含むディフェンス陣は刷新されていますが、それでもここまで劇的にチームを変えた菅野監督の手腕は高く評価されるべきでしょうねえ。監督自ら「昔は"湘南の暴れん坊"と呼ばれていたが、今は"湘南の頑張り屋さん"」と評した、全員がハードワークするスタイルは、見ていて観客にも非常にリーチしやすい戦い方。決して観客がメチャメチャ多いわけではありませんが、平塚競技場には独特の磁場があって私は好きです。唐揚げも含めて。さて、両チームともかなりフワフワした状態で入ったように見えたゲームは、「ボールも動かせないし人も動けない」(湘南・菅野監督)湘南を尻目に、水戸がペースを握ります。28分には左サイドで小椋がヒールキックから抜け出しシュートを放つもGKがセーブ。さらにそのCK、金澤のボールをビジュが頭で叩くと、これは本人も「しまったというような顔をしていた」(水戸・前田監督)という左ポスト直撃。それでも少しずつゴールに近付きつつあった34分、またも金澤のCKから西野のヘディングがネットを揺らし、アウェイ水戸が先手を取りました。湘南は44分に石原がクロスバー直撃のシュートを放ちますが、攻守にチグハグさが目立ち、リードを許したまま前半終了。菅野監督もハーフタイムには「ここからが闘いだ。このまま終わるわけにはいかない」と檄を飛ばします。すると47分、加藤のFKとその流れからジャーンが掴んだ2つの決定機は水戸GK本間の好セーブに遭いますが、流れを引き戻すことに成功。攻勢に出ると迎えた57分、加藤のCKに飛び込んだのはジャーン。「マークされてても決めちゃう」と前田監督も苦笑せざるを得ない一発でまずは同点。さらに61分には約25mのFK、フェイントを入れたジャーンの後ろから蹴ったのは加藤。コントロールされたボールは、GKが一歩も動けない程鮮やかにゴールへの軌道を描いて右スミへと突き刺さり、たった5分でスコアは引っ繰り返されました。決して悪くない水戸は、あっという間に逆転されてしまいましたが、累積や負傷で「CFがはっきり言って誰もいない」(前田監督)現状から、交替策は厳しいものに。しかし、リードこそ奪ったもののなかなかエンジンがかかりきらない湘南に対して、終盤もまた水戸が同点、逆転を狙って前に出てきます。82分には塩沢、86分には小椋が決定的なシュートを放ちましたが、「本当は入っていなきゃいけない」と前田監督が会見で語ったということは、"入っていない"ということ。後半、流れの中からのシュートはゼロだった湘南が、飛び道具のセットプレー2発で終始乗り切れなかったゲームで何とか勝ち点3を獲得しました。水戸が勝っていても何らおかしくない展開でした。決定機の数でも明らかにアウェイチームが上回っていましたし。ただ、試合の流れに関係なくいいプレースキックを蹴ることのできるベテランの存在が、結果的に試合を2つのキックで決定付けてしまいました。今月で38歳を迎えた加藤望、湘南の今後はこの男が間違いなく鍵を握っています。写真は湘南の特命営業部員任命名刺。この名刺を持参した人は11月11日の草津戦自由席ホーム側チケットが500円になるそうですよ。考えましたねえ。　　　AD土屋