いよいよJリーグのクラブが登場してくる天皇杯3回戦。アマチュアのチームにとっては、この大会に出場する際の一つの大きな目標とあって、大会全体の中でも最もアップセットが起きやすいのがこの3回戦かもしれません。さて、今日ホーム敷島で戦うのは草津。彼らも3年前、まだJFL所属時にC大阪、横浜FMを下してベスト8進出という快挙を成し遂げています。ということは、今やJリーグのクラブになった草津を倒すという、その逆も十分起こり得るはず。今日"その逆"を狙うのは富山県代表のアローズ北陸。現在JFL5位の強豪、決して侮ることはできません。実際リーグ戦でもここ5試合は負けなし。ロッソ熊本に勝ち、首位を独走する佐川急便と昨年王者Hondaに引き分けと、内訳も堂々たるもの。2回戦も同じJFLの佐川印刷を2ー0で退けています。また、先日発表されたYKK APとのチーム統合も一つのポイント。Jリーグを目指すクラブを富山に作るというコンセプトで県内2強がタッグを組むことになった訳ですが、そのため"アローズ北陸"として臨む天皇杯は今年が最後。モチベーションは十分。初めて見るチームだけに期待も高まります。まずファーストシュートはアローズ、3分に松下がミドル。大きくクロスバーを越えますが気持ちは窺えます。対する草津はかなりフワッと試合に入ってしまい、流れの中からのシュートは17分が最初。ボールこそ支配するものの、全体的なペースはおそらくアローズが意図したものになっていきます。草津34分、櫻田のシュートはGK藤川がファインセーブ。直後にはアローズ、木本のクロスに長い距離を駆け上がった左SBの谷田がボレーを放つもわずかにバーの上へ。36分、カレカの35mミドルはゴール右へ。そんな試合が動き始めた矢先の39分、松下が危険なタックルとの判断で2枚目のイエローカードを受けて退場。はっきり言ってファウルかどうかも微妙なタックルでしたが、野田祐樹主審の判定で草津は残り時間を10人で戦うことになりました。アローズは4ー4ー2でしたが3ラインがキッチリ組織的に動く、例えるなら札幌や大宮のようなチーム。両サイドはSBも仕掛ける意識が高く、SHもボールを持てる選手を配置。相手が10人になってからは「サイドを基点に臨んだ」(アローズ北陸・窪田監督)のも頷けます。ただ、1人多い中でキープする時間の割には「もっと簡単にシュートを打てたシーンもあったが、(その局面での)パスが多かった」と窪田監督も認める通り、なかなか決定機までは至りません。それでも75分に西野が寺田を股抜きでかわして放った一撃と、87分に右SBの西野が上げたクロスに左SBの谷田が頭で合わせた2回のチャンスは、共に今季公式戦初スタメンの草津GK北が好守を見せ、試合は延長へと入りました。延長も前半はアローズが圧倒的攻勢。後半はややホームチームも盛り返しましたが、ゴールの予感はよりアローズサイドにある中で120分が終了。アローズが攻めあぐねたとも、草津がよく守ったとも言えるゲームはPK戦までもつれ込みました。ここでもアローズが優勢。草津2人目カレカと3人目佐藤のキックをGK藤川がストップ。最初の3人が成功したアローズが圧倒的有利に。しかし草津4人目鳥居塚が決めると、アローズ4人目金はクロスバー。草津5人目高田も沈めるとアローズ5人目長山のキックを北が止めて、土壇場で草津が生き返ります。すると6、7人目が確実に決めた草津に対して、アローズ7人目小林はゴール左へ外し、何とか草津が「とりあえず勝ち上がれて結果オーライ」(植木監督)というゲームを制しました。アローズは好チームでした。基本は守備的な感じがしましたが、SBが見せる思い切りのいいオーバーラップは草津より上。上園を中心に中盤でしっかり繋ぐこともできますし、今日に限って言えば勝利を収めていても何ら不思議はなかったと思います。ただ窪田監督は「勝つことと負けることは大きな差。残念です」と会見で語っていました。あとほんの少しでアップセットには届かなかった、記憶に残る敷島での天皇杯でした。　　　AD土屋