結果を見ると、札幌が最も得意なスコアでの勝利でしたが、内容もやはり札幌がほぼ思い描く通りのゲームだったと思います。東京Vは最近よく採用している3ー5ー2、札幌はいつもの4ー4ー2ではなくトレスボランチの4ー3ー1ー2とアウェイチームがやや変化をつけて始まった一戦は、共に「前半は膠着してリスクを犯さず」(札幌・三浦監督)「慎重過ぎた」(東京V・ラモス監督)ため、動きの少ない展開。東京はやはり攻撃にオートマティズムが感じられず、オフ・ザ・ボール時のフリーランニングがほとんどないために中盤から前では個人技での打開の連続。これでは屈強な4バックに加え、その前に3人を配備した札幌の思うツボでゴールに近付けず、31分に得た唯一の決定機も頼みのフッキが外してしまい、得点を奪えません。ただ札幌も流れの中からのファーストシュートはようやく33分。実質ゴールを予感させるシーンは迎えられずに静かな45分間が過ぎ去りました。しかしそんな均衡が突如として破られたのは51分。西谷のFKを、マーカーの土屋を完全に振り切った曽田が完璧に合わせてネットを揺らし、敵将も「向こうのプラン通り」と認めたセットプレーからのゴールで先制します。さて、1点を追う形となった東京はチームで唯一効果的な動き出しを繰り返していた廣山が、55分と61分に裏へ抜け出しクロスを送ります。前者はフッキがわずかに触れず、後者はディエゴのヘディングがGKの正面を突いてしまいますが、64分には服部のシュートが高木を急襲。リズムを引き寄せます。この時間帯の札幌はラインがかなり深くなっており、三浦監督は東京が「他のチームよりミドルの精度が高い」こともあって、ベンチ脇から激しいアクションでラインの押し上げを指示します。ここでケアすべきはやはり中距離砲を持つフッキ。しかしボールを触りたがって下りてくることが多く、主に右サイドから仕掛けていきましたが「低い位置で持たれても恐くない」と曽田が話したように、シュートレンジにまで入れずにボールを奪われるシーンが目立ちます。それでも81分には30m近いミドルを枠に飛ばしましたが、これも高木がファインセーブ。古巣相手にゴールをお見舞いすることはできませんでした。1点がどうしても遠い東京は終盤、船越と永井を投入しますがいくつかあったチャンスもゴールには結び付かず、札幌が今季8度目のウノセロで勝ち点3を上乗せしました。試合後、三浦監督も東京Vを「現実的なサッカーをやっていて付け入る隙があまりない」と評していましたが、後ろを1枚余らせる3バックを含めた守備陣はかなり安定してきていると思います。それだけに攻撃の停滞が痛いですね。一方の札幌は本当に負けないチームです。後半半ばからはかなりボールを持たれる時間が続きましたが、不思議と失点しそうな気配は感じられませんでした。例え事故的な要素で失点したとしても、複数失点というのは考えにくく、攻撃陣も1点は各試合最低でも取れるので、悪くて引き分けでよければ今日のような勝ち方ができると。これはかなり強いことになってますよ。　　　AD土屋