山根巌、石崎信弘という川崎をよく知る2人が柏の選手、監督として凱旋したこのゲーム。試合前に名前が紹介されると、等々力からはどちらにも拍手が送られ、川崎サポの温かさを実感する一幕もありました。試合自体も3位と5位の上位対決。共に攻撃サッカーを志向しているチーム同士で、非常にアグレッシブな打ち合いを期待された方も多かったと思いますが、実際はここ3試合未勝利同士の対戦でもあり、今日に関してはその勝ち切れない現状がスコアレスドローという形に表れてしまった印象でした。川崎はジュニーニョが出場停止、マギヌンが負傷、チョンテセが北朝鮮代表招集ということで日本人のみのメンバー構成。柏は近藤が負傷欠場した以外は現状のベストで戦います。柏の石崎監督が「2時からのゲーム、暑くなると予想していた」通り、31度を記録する気候の中、序盤は共に雑なパスミスが多く、フワフワとした立ち上がりになりましたが、前半の半ばからは中村が積極的にボールへと関与し、川崎に流れを生み出します。29分には伊藤のフィードを斜めに走り込んでのダイレクトボレー。惜しくも枠は外れたものの、そのアイデアにスタジアムは沸きました。柏はフランサが引いて受けるシーンが目立ち、低い位置でボールは収まるのですが、そこから前へと飛び出していく選手が少ないためにチャンスが生まれません。39分には李と谷澤のコンビで崩しましたが、谷澤のシュートはGKに阻まれました。後半動いてきたのは関塚監督。スタートから「コンディションを考えると休ませてあげたかったが、彼がどうしても必要だったので45分限定で入れた」という森に替えて井川を。56分には大橋に替えて谷口を送り込み、中村を1列上げます。73分に迎えた最大の決定機はやはり中村から。カウンターからドリブルを始めると、黒津の素晴らしい動き出しに呼応して絶妙のスルーパスを送ります。しかし黒津の右足シュートは右に外れ、先制機を逸しました。一方、守備陣は安定していたものの攻守の切り替えが遅かった柏は11人を引っ張りましたが、80分に李を下げてドゥンビアを投入すると、1分後に伊藤のクリアミスからそのドゥンビアが抜け出します。しかし、GKとの1対1から放ったシュートは力んで左に逸れてしまい、こちらもゴールならず。双方の詰めの甘さが、このスコアレスをもたらした印象を受けました。柏が難しいのはやはりフランサがキーなのはどの相手もわかっているため、対策を練って来ているので高い位置で仕事をするスペースを与えてもらえませんね。前述した通り、低い位置で受けても下げるか散らすかで、決定機に直結するシーンには繋がらないので、もう少し周囲の動きの質に工夫がないと意図して奪うゴールは遠い気がします。ただ、今日に限って言えば、強豪相手にアウェイで勝ち点1を持って帰ったのですから上々の結果と言えるでしょう。人間、そんなに欲をかいてはいけません。　　AD土屋