昨年、札幌ドームで甲府にとって昇格への足掛かりとなる、ロスタイムの大逆転劇が繰り広げられて以来の対峙。甲府対札幌、ほぼ1年ぶりに激突する舞台は天皇杯準々決勝、仙台です。どちらのホームでもないスタジアム、そして試合前にどちらのチームにも所属していた堀井岳也選手の引退セレモニーが行われたこともあって、和やかなムードで始まったはずのゲームは、しかし開始45秒でその均衡が打ち破られます。2、3、4、5とまるで高校選手権のように背番号の揃う甲府ディフェンスラインの裏を突いた西谷のクロスに、DFともつれながらボールをゴールに流し込んだのは中山。札幌先制。少なくないゴール裏のサポーターが沸き立ちます。その後も、この日FWに入った西谷の質の高い動きを捕まえきれない甲府は何度もゴールに迫られる展開を余儀なくされました。しかし19分、札幌GK佐藤がバックパスをキャッチする凡ミス。ここから流れが変わり、今度は甲府が攻勢に。22分のシュートは右ポストに当たる不運。26分には山本の無回転風FK、41分藤田のFK、44分井上と決定機をつかみますが、ゴールは奪えず前半が終わりました。甲府は、本当にいつ見てもいいサッカーしてます。あれだけショートパスをダイレクトでパンパン繋げるチームは、そうないでしょう。しかし、この試合に限って言うのであれば、サイドを変える長いパスが少な過ぎた印象です。狭いゾーンの局面打開は抜群。ただ打開したあとが遅くて、チャンスを創り切れないシーンが目立ちました。札幌が手数をかけずに前へ、ワイドへ展開していたのを見て余計そう感じました。後半は50分、藤田のFKに秋本が詰めるもノーゴール。51分には藤田のFKがわずかにバーの上へ。甲府が攻め、札幌がカウンターを狙うという構図は変わらず。67分には井上と保坂をスイッチして石原を左SBに置く超攻撃的布陣を敷き、遠い1点を奪うために勝負に出ます。しかし、この試合2つ目のゴールは甲府の同点弾ではなく、札幌の追加点でした。73分、右からのクロスを中山が絶妙のフリックオン。最後はDFの加賀が美しいボレーでネットを揺らしてリードを2点に。甲府は長谷川、宇留野を投入するものの、82分に林がフリーで放った決定的なヘディングも枠外へ。結果、札幌が千葉、新潟に続き甲府も倒してJ1相手に3連勝。柳下監督の誕生日でもある、元日決戦への挑戦権を得るまであと1勝まで迫っています。ユアスタには札幌サポーターの歌う「コクリツへ行こう」がいつまでも鳴り響いていました。　　AD土屋