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それでも、新潟の攻めは続いた。55分には素晴らしいパスのつなぎからチャンスを作り、本田がコースを狙ったほぼ完璧なシュートを放ったが、ゴール右上隅に飛んだシュートを、GKのブローダーゼンが片手でブロックした。
この時も、新潟の攻撃は最終ラインから始まった。
センターバックの千葉和彦が中盤深い位置に下りてきた高木に当て、高木がワンタッチで堀米にはたくと、堀米が中に持ち込んでトップの位置にいた松田諒太郎に当て、松田が落としたボールを本田がシュートしたのだ。
55分のこのシーンこそ、ハイレベルな攻防を展開した首位決戦を象徴するような場面だった。
その後、70分に中盤での混戦からつながったボールがバウンドするところを長谷川が浮き球で前のスペースに送り込み、フリーとなった渡邉が決めて横浜がリードを2点に広げる。2点差となったことで勝敗は決した。暑さで疲労を溜めた新潟には反撃に移るパワーが足りなかったようだった。
理詰めのパスを回す新潟と、それを規律のある守備で跳ね返し続けた横浜FC。中盤では激しいボールの奪い合いが展開され、プレー強度も高い試合。おそらく、J1リーグでも滅多に見られないハイレベルの攻防だった。
J1リーグ上位クラブはこの数年で非常にレベルアップしている。川崎フロンターレがパス・サッカーを極めて頂点に立ったが、横浜F・マリノスが攻撃サッカーで川崎を急追。今シーズンはレネ・ヴァイラー監督の鹿島アントラーズ、ミヒャエル・スキッベ監督のサンフレッチェ広島、アルベル・プッチ監督のFC東京がポジショナルプレーというヨーロッパからの新しい風ももたらしてもいる。
だが、レベルが上がっているのはJ1だけではない。J2リーグも、新潟や横浜FCをはじめしっかりした戦術的なサッカーを志向するクラブが増えているのだ。
かつては、昇格・残留のための勝点のことだけを考えてフィジカル的な試合をするチームも多かったJ2だが、今では少なくとも昇格を狙う上位チームはしっかりとした戦術的なサッカーができるようになっているのだ。
今シーズンの天皇杯はラウンド16をJ1、J2勢が独占。アマチュアチームによるジャイアントキリングが一つも起きなかった。もちろん、一つひとつの試合にはそれぞれの事情があるのだろうが、大きな流れとしては“無風のカップ戦”となった原因はJ1、J2のレベルアップにあったような気がする。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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