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もちろん、そうすることでチームの戦いの幅は間違いなく広がる。ACLのように「高温多湿の中で中2日の6連戦」という過酷な状況で戦い抜けたのは、ローテーションがうまくいったからでもあった。
だが、一方で、試合ごとにメンバーが変わることでチームの完成度がなかなか上がらないという弊害もある。長いシーズンを固定メンバーで戦い抜けるわけはないが、やはりチームの“核”は決めておき、変更するのは部分的なものにとどめたい。
浦和が苦しんでいるもう一つの理由は、リカルド・ロドリゲス監督が目指しているスタイルと現実の乖離である。
スペイン人のリカルド・ロドリゲス監督は明らかにポゼッション・サッカー(最近流行の表現をすれば「ポジショナルプレー」)を目指している。自陣からしっかりとパスをつないでビルドアップしていくサッカーである。
たとえば、最近の浦和はゴールキックの時にゴールエリア付近に複数のフィールドプレーヤーを立たせることが多い。ここからパスをつないで攻撃を組み立てようというのだ。
低い位置からショートパスを使って組み立てるのだから、当然、手間と時間がかかる。それでも、ポゼッション率を上げて戦おうというのが監督の意図なのだ。
ただ、そういうスタイルで攻めきれるのならいいのだが、今の浦和のチャンスの多くは手間のかからないスピードある攻撃から生まれている。前線に鋭いくさびのパスを入れて、トップの選手が落としたところで攻撃のスイッチを入れる。あるいは、サイドバックがサイドハーフと協力して素早くタッチライン沿いで相手をはがしていく……。
つまり、チャンスの多くは手数はかけずに速さで勝負することによって生まれているのだ。
だが、それなら高い位置でボールを奪ったり、手数をかけずになるべく高い位置にボールを送り込む方が効果的だということになる。
自陣深い位置から手間と時間をかけてパスをつないで組み立てるのか、それとも高い位置にボールを運んで(あるいは高い位置で奪って)速攻を使うのか……。攻撃のコンセプトを明確化する必要がある。だが、浦和の現状はポゼッション・サッカーとカウンター・サッカーという2つのコンセプトが混在し、統一感がない。
もちろん、意識的に両者を使い分けることができれば、それがベストなのではあるが……。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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