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前田にとって最大の問題は、フル代表でのプレー経験がほとんどなかったことだろう。
周囲との連携も悪かった。俊足の前田が入ったら、アバウトなボールでもいいから、早めにスペースに入れて前田を走らせたいはずだが、そうしたパスはほとんど出なかった。前田自身にも戸惑いがあったし、周囲も前田を生かすための意識が薄かったようだ。
攻撃陣の不調は最終予選が始まった昨年秋以来、何度も指摘されているが、森保一監督は大迫や南野を攻撃の軸に据えて、メンバーを変えるつもりはなさそうだ。
1月22日のメンバー発表記者会見の席で、森保監督は冒頭「あまり変わりがないと思われるかもしれませんが」と自嘲気味に語った。「メンバーを変えろ」という批判の声があることを十分に意識しているようだ。
だが、森保監督はメンバーを変えない。
新しいメンバーを入れることで攻撃が改善されるかもしれない。だが、同時に新メンバーを入れることでバランスが崩れる危険もある。そして、代表チームは新メンバーを入れて戦術のすり合わせをするだけの時間は与えられていないのだから、メンバーの変更はギャンブルなのだ。強豪国相手に戦うワールドカップ本大会ならともかく、予選ではギャンブルはすべきではないだろう。
さて、こうして中国戦は日本の完勝に終わった。というよりも、中国は抵抗らしい抵抗をしなかった。ゴール前のスペースを消して守備に徹するわけでもなく、前線の選手の特徴を生かして攻撃に出るわけでもなく、何の抵抗もせずに終わった印象だ。“中国らしい”ラフプレーすらなかった。
結局、中国戦は日本チームにとっては絶好の調整試合となった。計画されていたウズベキスタンとの親善試合はオミクロン株の感染拡大で中止になってしまったが、中国戦がそれの代わりになったようだ。海外組も加わった公式戦だったので、ウズベキスタン戦よりもはるかに良い調整機会となったようだ。
大迫はシーズンオフでのコンディション不良が不調の原因。南野は出場機会の不足が問題。そして、前田はフル代表での出場経験の問題……。だとすれば、中国戦という恰好の調整試合ができたことで彼らは復活できるかもしれない。彼らが本来は非常に能力の高い選手たちであることは間違いないのだ。サウジアラビア戦での復活を大いに期待したいものである。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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