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そして、メンバーを変える気がない森保監督の中でも、最も手を付けたくなかったセンターバックの吉田と冨安も、今回の1月シリーズではそろって欠場。そして、谷口、板倉が“代役”としての起用に応えたのだ。
中国戦の先発メンバーでは東京オリンピック世代(1997年以降の生まれ)の選手は2人だけ(板倉と田中)だったが、交代で出場した5人のうち原口元気を除く4人がオリンピック世代だった。
これに三笘や旗手怜央なども含めて、カタールでのワールドカップ本大会では東京オリンピック世代がチームの半数を占める可能性だってある。
森保監督は積極的にメンバーを変えようとしているわけではないのに、こうして新しい戦力が自然に代表チームに加わってきているのである。
たとえば、若い板倉はドイツでも評価が上がっている選手だ。将来、センターバックもしくはボランチとして日本代表の中心選手として育っていくかもしれない。
また、谷口や板倉がセンターバックとして代表の屋台骨を背負っていけるとしたら、冨安がアーセナルでやっているように右サイドバックでプレーすることが可能になるかもしれない。
現在のチームでは右サイドバックとしては酒井宏樹がファーストチョイスだ。しかし、酒井は疲労で代表を離れたこともあったし、中国戦では守備はしっかりしていたものの、攻撃面ではファーストタッチが大きくなってしまったり、パスが不正確だった場面もあり、万全の状態とは言えないようだ。
その点で、もし冨安がサイドバックとしてプレーできるのなら、それも大きな選択肢となっていくだろう。
チーム作りと言うのは、もちろん第一義的には監督の意向によって進められるものだ。しかし、様々な偶然やアクシデント(たとえば、主力選手の負傷や出場停止等)によってメンバー変更を余儀なくされることがある。そして、そこで新しくメンバーに加わった選手が与えられたチャンスをつかみ取ることによって、監督の意図しない形でチームが変化していくことも往々にしてあるのだ。
いわば、“見えざる神の手”のような力が働くことがあるのだ。そして、そうした自然の流れに逆らわずに、予期せぬ変化をうまく取り入れていくことができる監督こそ名監督と言うべきなのである。
サウジアラビア戦で、新しいCBコンビが機能することを祈りたい。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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