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こうして、内容的にゲームを完全に支配した横浜FCが2対0のスコアで勝ち切ったのだが、不可解だったのは名古屋のマッシモ・フィッカデンティ監督がどうして戦術的に動かなかったのかということだ。
名古屋はハーフタイムにオリンピックでの疲れでキレがなかった相馬に代えて前田を入れ、宮原に代えて森下龍矢を投入した(マテウスを左サイドに置き、右に前田が入った)。そして、さらに57分にはガブリエル・シャビエルに代えて齋藤学を入れ、MFの米本拓司に代えて長澤和樹が起用された。「早い時間の積極的な交代」と言っていいだろう。しかし、システムは前半と同じく、4-4-2のままだった。
相手の守備の組織に完全にはまってしまい、パスの出しどころがなくなり、結局はバックパスでなんとかつなぐだけだったのだ。システム変更が必要だったのは明らかだった。
せっかく、トップに柿谷やガブリエル・シャビエルといった「トップ下タイプ」が入っていたのだ。2人が前後にポジションを入れ替えて、相手のスリーバックやボランチの守備を混乱させるとか、4-3-3に変更してMFを3人に増やすことによって中盤で優位に立つなど、いくつかの選択肢はあったはずだ。
実際、後半に投入された齋藤がトップの位置から下りて、相手の最終ラインとボランチの間のスペースでパスを受けるようになると、名古屋の攻撃の機会は増えた。齋藤の動きが戦術的な指示によるものだったのか、それとも前線にボールが回ってこないので齋藤が自身で判断したのかは分からないが、そうした動きをもっと早い時間から意図的に使えば打開の道はあったように思える。
いずれにしても、横浜FCは攻守ともに最後まで組織が乱れることがなく、3-4-3のシステムを非常に効果的に使って完勝した。相手に強力なトップがいたらどうなるのか? また、これからは対戦相手が横浜FCのシステムを研究してくることも考えられる。そうした場合に、横浜FCの早川友伸監督がどのような手を打ってくるのか……。
もし、コンスタントに名古屋戦のような戦いができるのであれば、横浜FCはJ1リーグ後半戦ではJ1残留を勝ち取るとともに、上位の順位争いをかき回す存在になるのかもしれない。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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