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そんな嫌な流れの中、71分に久保建英がまさに「個の力」によって打開して見せた。
遠くのスペースを見る眼を持つ田中碧が、右サイドから左で張っていた久保にロングパスを通して一気にチェンジサイド。そして、久保はワンタッチでコントロールすると「中に切れ込んで左足のシュート」という、彼が最も得意とするシュート・パターンで仕留めたのだ。
ただ、女子代表の場合はトップが非力なのでパスをつないでチャンスを作ることができないと苦くなってしまう。そう、かつて男子代表がブラジル代表によくやられていたのと同じような状態だったのだ。こうして、カナダがリードしたまま試合は終盤に差し掛かった。
そこに救世主として登場したのが、「10番」岩渕だった。
男子のU-24代表が田中 → 久保のホットラインで崩したのと同じように、前線の岩渕の動き出しを見逃さなかった長谷川唯が相手DFラインの裏を狙ってロングボールを蹴り込み、それを追った岩渕が相手DFとGKの位置と動きをよく見て、ボールがバウンドするのに合わせてコースを狙うシュートを決めた。
得意のパス・サッカーでゴールを陥れることができずに苦戦した「なでしこジャパン」と男子のU-24代表。ともに、最後は「個の力」でゴールをもぎ取った形になったが、これからより強い相手と戦って勝ち抜いていくためには、やはりチームとしてパスで崩してゴールを生み出していかなければならないだろう。
とくに、女子の場合はトップを務める菅澤や田中美南にボールが収まる回数がそれほど増えることはないだろうから、パスを回して3人目、4人目が中盤からの飛び出すような形を作るか、高い位置で相手ボールを奪ってのショートカウンターの形を作らないと活路を見出すことは難しい。
なでしこジャパンにとっては、トップを菅澤にするか、田中にするかという問題もある。
高倉麻子監督は、ワントップとしては菅澤を中心にチームを作ってきた。菅澤はたしかに日本国内の試合ではボールを収めることのできるターゲットとして長く活躍している素晴らしい選手なのだが、国際試合になると屈強なDFを相手にボールを収めることが難しい。
カナダ戦の後半は田中が交代出場し、前線に飛び出すスピードを生かしてチャンスを作ってPKも獲得した(自ら蹴ってGKに止められてしまったのだが)。
ワントップとしては田中の方が有効であるような気もするが、しかし、相手にパワーが残っている前半でも田中の動きが通用するかどうかは、何とも言えない。とにかく最終戦ではしっかり勝って、他会場の試合結果を待ちたい。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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