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ヘディングというプレーを禁止するために必要なのは「ハンドの解禁」である。
なぜ、サッカーというスポーツでヘディングという技術が生まれたのか。それは、サッカーでは手でボールを扱うことが一切禁止されたからだ。
1863年の最初のFAルールでは、空中を飛んできたボールを手でキャッチすること(フェアキャッチ)は認められていた。ラグビー派のルールとの違いは、ボールを持ったまま前に進んでいいのか否かでしかなかった。
それなら、当時のルールに戻って、手でボールを扱うことができるようにすれば、禁止しなくてもヘディングというプレーはなくなってしまうはずだ。
しかし、ハンドを解禁してしまってはサッカーは今のサッカーとは似ても似つかぬものになってしまうとすれば、そんなことは言語道断だ。
だが、「手でボールをつかんだり、抱えたりすること」を禁止していれば、サッカーの試合は現在のそれとそれほど変わらないのではないか。手を使っていいのは、手でボールを弾いたり、撃ったりする場合だけにすべきだ(オーストラリアン・フットボールではよく使われるテクニックだ)。
手でボールを弾くことなら、ヘディングの代わりになるし、長い距離の強いパスを使うためには手でボールを弾くのでは足りないから、パスもシュートも多くの場面で今までと同じように足を使って行われることだろう。
ただ、空中戦での競り合いの時にヘディングではなく、手でボールを扱えるようにするのだ。影響は大きい。
大きく変わるのがゴール前でのプレーだ。
つまり、誰もが「神の手」を使えるようになるのだ。GKにとっては悪夢だろうが、得点シーンは間違いなく増える。
そして、最大のメリットはハンドを巡っての紛糾が起こらなくなることだ。
VARが導入されてから、ゴール前でのハンドを巡ってで様々な事件が起こった。「腕」の範囲が明確に定められたものの、腕と体の境はやはり微妙だし、何よりも問題なのは手にボールが当たったとしても、それが意図的なものだったか、あるいはプレーに影響を与えたかを判断するのは審判団の仕事であり、とても微妙な判定を余儀なくされる。
そして、それがもしペナルティーキックの判定になったとすれば、得点につながる可能性が高く、勝敗を決定するプレーになるかもしれない。本当に超微妙なハンドの判定によって試合の行方が決まってしまうというのは、かなりフラストレーションが溜まる。
だから、ハンドを解禁してしまえば、VARの運用も今より楽なものになるはずだ。
どうだろう、一回、「ハンド解禁」のテスト試合でもやってみれば。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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