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浦和のサッカーはサイズの大きな選手をそろえて、スピードやフィジカルの強さを利したサッカーだ。右サイドバックの位置から強引なドリブルで攻め上がる清家貴子やMFの塩越柚歩などを中心に繰り広げるサッカーは、これまでのベレーザのサッカーにはなかったダイナミックなものだった。
また、今シーズンからスタートするプロリーグの「WEリーグ」には参戦しないものの、昨シーズンのなでしこリーグでは2部から昇格したばかりのセレッソ大阪レディースが、20歳前後の若い選手ばかりのチームで旋風を巻き起こした。中盤から長いパスを使ってワイドに展開するサッカーも、これまでの日本の女子サッカーにはないものだった。今回の代表にも招集されている北村菜々美(現所属はベレーザ)や林穂之香(同じくAIKフットボール=スウェーデン)も、昨年まではC大阪の選手だった。
つまり、日本の女子サッカー全体が、今、少しずつ変わりつつあるところなのだ。
INAC神戸レオネッサのゲルト・エンゲルスやノジマステラ神奈川相模原の北野誠といった、男子のJリーグでトップチームの監督を経験した指導者も加わって、「強さ」を求める“男子的な”要素も加わっている。
そして、日本代表クラスの選手が多いベレーザ自身も、代表で世界のトップに立つためにという意識を高く持ってパススピードを追及するようになってきている。
こうした、日本国内の女子サッカーの最新のトレンド。なでしこジャパンの高倉麻子監督は、それをうまくすくい取って、代表としてまとめようとしているのだろう。パラグアイ戦では、その方向性はある程度まで示された。
ただ、フィニッシュの段階でのパス精度をさらに追求し、そしてチャンスを確実に仕留めることができるように決定力を上げることが大きな課題として残る。
高倉監督自身もゴールに迫ってもはずす場面が多かったことについて「不満だ。決定力が課題だ」と明言した。
パラグアイのように実力差のある相手だと、どうしても「パスを回して美しいゴールを決めたい」と思ってしまうのが選手心理なのだろうが、強豪国相手ではチャンスの数は多くないのだ。そこで、どんな形でもゴールを決めきること。3か月後に迫った東京オリンピックでも、そうした貪欲さが求められるはずだ。4月11日のパナマとの試合では、そんな意欲的な試合を見せてほしい。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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