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アンジェ・ポステコグルー監督が持ち込んだ横浜FMの超攻撃的なスタイル。それは、人もボールも動くアクション・サッカーだった。
攻撃の場面では選手が次々とポジションを変え、両サイドバックが同時に相手陣内のバイタルエリアまで進出することすら珍しいことではない。選手が動くことによって生じるオープンスペースを利用するために他の選手が走る。一方で、攻撃に参加した選手のポジションを他の選手がするために走る必要があるし、ボールを奪われれば攻めに出てきたDFは急いで自陣内に戻る必要がある。
つまり、横浜FMのサッカーは攻撃がうまくいっていればいるほど運動量が大きくなってしまう。まさに、水原三星戦の前半がそうだった。
それに対して、水原三星は前半のうちは5バック気味に構えて、ゴール前を封印してカウンターに徹した。そして、横浜FMが攻め疲れた後半に勝負をかけてきたのだ。
横浜FMのようなサッカー・スタイルはこの大会のような過密スケジュールでは継続することが難しいのだろう。また、カタールのスタジアムは芝生がしっかり根付いておらず、柔らかい状態だったので余計に疲労がたまりやすかったのも横浜FMにとっては不運だった。
そうだとすれば、脚が止まることはある程度から予想できたはずだ。後半に入って運動量が急激に落ち始めた時点で先手を打って選手交代ができなかったのも悔やまれる。実際、後半の追加タイムには交代で投入した選手が絡んで1点を返したのだから……。
今シーズンのJリーグは川崎フロンターレの一人勝ちのような形で終わりそうだが、前年王者の横浜FMはやはり運動量が必要とされるスタイルが災いして夏場の暑さや連戦続きの日程によって疲労をため込んでしまっていた。暑さの中の連戦といった過密スケジュールが川崎にアドバンテージとして働いたのは間違いない。つまり、今年のACLのような日程なら、人は動かず、ボールを走らせる川崎のようなスタイルの方が有利だったのだろう。
川崎と同じようにボールを動かすサッカーを志向しているヴィッセル神戸の今後の活躍を期待したい。そのためには、ラウンド16の試合で右脚の付け根を痛めてピッチを後にしたイニエスタの状態が良ければいいのだが……。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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