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ただ、これを実現するには現在2024年大会の準備を進めているパリ市の同意が条件となる。もちろん、フランスも新型コロナウイルスの感染では大きな被害を受けているし、EU(欧州連合)は英国の離脱問題という難題を抱えているので、「4年延期」に同意する可能性もあるが、まずパリ側の意向を確認しなければならないだろう。
同様に、2028年開催予定のロサンゼルス市が延期に同意すれば、2028年に東京大会を開くこともできるだろうし、さらに2024年のパリ大会、2028年のロサンゼルス大会を予定通りに開催してから、2032年に東京大会を開くこともできる。パリ市、ロサンゼルス市、IOCと協議を行う価値はありそうだ。
ただ、日本のスポーツ界としては、東京大会の「中止」もしくは「長期延期(最大12年の延期)」は大きな痛手となる。陸上競技や水泳などの人気スポーツはオリンピックを延期しても世界選手権などで活躍すれば人気も高まるし、財政的にもしのげるはずだ。あるいは、野球やサッカーといったプロのある競技にとっては国内リーグこそが最重要だし、代表レベルでもサッカーのワールドカップや野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)といった大会の方がオリンピックよりも重要だろう。
だが、いわゆるマイナースポーツ、4年に一度、オリンピックで活躍した時だけ注目を集めるような競技にとっては、地元東京での開催という絶好のアピールの場が奪われてしまうことは致命的だ。実際に、一部の競技では「1年延期」が決まってからすでにスポンサー離れが起こっているという。
政府にしても、東京都にしても「中止」あるいは「長期延期」となった場合にはスポーツ界とくにマイナー競技に対する配慮だけは忘れないでほしい。いわば、マイナー競技にとっての「持続化給付金」的なものが必要なのだ。
そのことは、オリンピックを強行開催するよりずっと大事なことだ。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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