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なにしろ、代表選手は事前合宿から1か月間、緊張感の中で戦ってきたのだ。身体的にも、精神的に疲れ切った状態だ。本来なら、ワールドカップ終了後には休養が必要なはずだ。しかも、ワールドカップで主力として戦ってきた選手と、ほとんど出場機会が与えられなかった選手とでは、コンディションもバラバラのはずだ。さらに、代表抜きで戦っていた間のプレーと、代表選手たちが戻って来てからでは、当然戦い方も違ってくる。若い選手たちとともに戦ってきた主力選手たちは、またプレーに戻す必要もある。準決勝、決勝は、いつもほどベレーザの絶対の強さを見せつけるような展開とならなかったのは当然のことだろう。
しかし、そこで勝ち切ってしまうのが、日テレ・ベレーザというチームの底力だ。ベレーザのサッカーの強さの秘密について聞かれた永田監督は、読売サッカークラブの原点にまで言及した。ジョージ与那城やラモス瑠偉が持ち込んだブラジルのストリート・サッカーを原点とする遊び心こそ、ベレーザの強さなのだというのだ。
読売クラブの伝統は今でも生きている。男子部門の東京ヴェルディは今ではJ2にすっかり定着してしまい、人気も低迷しているが、男子でも育成は機能し続けている。最近、日本代表で活躍している中島翔哉(FCポルト)も、安西幸輝(ポルティモネンセ)も、畠中槇之輔(横浜F・マリノス)もすべてヴェルディ育ちの選手だ。
さて、日本サッカー協会は現在、女子のプロ化を構想中だ。しかし、具体的な準備が進んでいるわけではなさそうだ。あまりにも未確定の話なのだが、そのあたりはまた別の機会に論じるとして、競技力の面で言えば、やはり日テレ・ベレーザと同程度のチームが2,3チームはほしい。ベレーザの独走状態が続いてしまえばリーグ戦としての面白さも半減。ベレーザ程度のチームがいくつかあれば、試合も白熱して観客を呼べるはずだ。
今、日本の女子サッカーは重要な局面にある……。
ま、それはそれとして、見事な優勝を飾った日テレ・ベレーザには祝福の言葉をかけるしかない。また、困難な闘いの中で戦い抜いたことで、チームの底上げにもなったはず。8月31日に再開されるリーグ戦も楽しみにしたい。
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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