輪生相談

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このブログについて

プロフィール写真【栗村修】
一般財団法人日本自転車普及協会
1971年神奈川県生まれ
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。豊富な経験を生かしたユニークな解説で多くの人たちをロードレースの世界に引き込む。現在は国内最大規模のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長としてレース運営の仕事に就いている。 「栗村修の"輪"生相談」では、日頃のライドのお悩みからトレーニング方法、メンタル面の相談など、サイクリストからの様々な相談にお答えしております。栗村修に聞いてみたい、相談してみたいことを募集中。相談の投稿はこちらから。

2022年06月01日

【輪生相談】将来は仕事をしながら日本一になりたいです

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こんにちは。私は春から高校生になります。今まで小学生の頃からクラブチームで野球をやってきて、中学2年生の頃に弱虫ペダルから自転車にハマりました。お金がないのでネットでルック車と呼ばれる部類のクロスバイクを買い、カスタムしたり100キロ程乗ったりと自転車を楽しんでいます。将来は仕事をしながら日本一になりたいです。高校に自転車競技部があったら早いのですが、私が行く高校にはありません。自転車競技部をつくり、インターハイなどの大会だけでも出てみたいのですが、部活をつくる条件が厳しいらしいです。そこで一旦陸上の長距離で体力をつけようと思うのですが大丈夫でしょうか?(水泳部はありません)そして個人的に自転車に乗ろうと思っています。将来登りに強いクライマーになりたいのですが、練習方法、練習量、高校生の間はシクロクロスを主にするべきか、また、部活をつくったりするよりもチームに入ったほうが良いのかどうか、チームの入り方など教えていただければありがたいです。よろしくおねがいします。

(高校生 男性)

栗村さんからの回答

栗村さん

将来、仕事をしながらクライマー系の選手として日本一を目指す質問者さんですが、高校に自転車競技部がないため、まずは陸上競技で体力をつけてみる。

いいと思います。僕は賛成です。

実は僕も似たような経験をしたことがあります。

中学生の時にロードバイクもどきの自転車を乗り回してた僕は、自転車競技部があるはずの高校に入学したのですが、なんと、廃部になっているというオチに直面しました。だから質問者さんを見ていると、他人事とは思えません。

たしかに、自分で自転車部を作る手はあります。でも、もしかすると発起人としての雑用などの負担が大きくなるかもしれず、学業やトレーニングの妨げになる可能性もあるので、質問者さんご自身のことだけを考えるとあまりお勧めはできません。

シクロクロスやマウンテンバイク競技でも活躍するM.ファンデルプール

今、サイクルロードレースの世界では、自転車競技の他種目や、別の競技から参入してきた選手たちが大暴れしていることをご存じだと思います。M.ファンデルプール、W.ファンアールトらはバリバリのシクロクロス選手としてお馴染みですし、T.ポガチャルやJ.アラフィリップ、E.ベルナル、P.サガンなどもオフロード系の種目をバックボーンに持っています。他にもトラック、シクロクロス、MTB出身の有能なロード選手は数えきれません。他に、P.ログリッチはスキージャンプ、R.エヴェネプールはサッカー出身ですよね。子供の頃からロード一筋のトップ選手の方が少数派になりつつあります。

もはや、自転車競技の他種目や他のスポーツ出身の選手が強いのは偶然ではないと思います。「ロードバイクに乗る」という行為はやや特殊で、身体能力そのものを根本的に底上げするにはあまり向いていないと思うんですよ。だからこそ、自転車競技の他種目や他のスポーツなどでフィジカルのベースを築いた選手がロードレースに転向すると、見る見るうちに強くなるのではないでしょうか。特に日本人はフィジカルのベースが欧米人よりも弱く、全体的に筋肉量が少なく薄っぺらい体型の人が多い印象があるので、伸び代という観点からもベース作りはなおさら重要です。

ですから質問者さんも、若いうちは、ロードバイクに乗ることだけに囚われず、まずはアスリートとしての身体能力の基礎を築くべきです。

陸上、いいじゃないですか。陸上競技に打ち込みつつ、たまに遊びで自転車に乗ればいいと思います。自転車も、ロードバイクより、スキルもフィジカルも鍛えられるシクロクロスなどのオフロード系がお勧めです。オフロード系の種目は、チームプレーやレース戦術などが少なく、個人の力が結果に反映されるため頑張りがいがあります。AJOCC(一般社団法人日本シクロクロス競技主催者協会)などのホームページを参考にしつつ、身近なレースやチームを探してみてください。

それから、クライマー系の選手を目指したいとのことですが、クライマーで重要な「パワーウェイトレシオ(体重に対する出力値)」は、身体の基礎を作ったあとに、余分な脂肪や筋肉などを削ぎ落とすことで手に入ります。

ですが、ここで避けなければいけないのが、基礎を作らずにパワーウェイトレシオのみを早急に求める行為です。クライマーであっても、薄っぺらい身体がベースだと、伸び代はほとんどないでしょう。

ここで細かい練習内容をアドバイスするのは難しいので、まずは身近なところで、自転車競技の相談ができる大人を探してみてください。若い選手が活躍しているクラブチームやショップなどを探し、一度、挨拶がてら足を運んでみると良いでしょう。

ところで、今回の内容は、あくまで「仕事をしながらクライマー系の選手として日本一を目指したい」という質問に対するお答えです。もし、本場のプロ選手を目指すのであれば、とてつもなく厳しい世界に挑むプロになるための心構えや、海外での生活能力やレース経験も必要です。それは、また別の機会にお伝えしましょう。

文:栗村 修・佐藤 喬

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