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サイクル ロードレース コラム 2007年9月21日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2007】第18ステージレースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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マドリードまであと4日。ただし実質的な総合争いはあと3ステージを残すのみ。そして56km地点にそびえる1級峠で、マドリードでの表彰台メンバーを入れ替えるアタックが巻き起こった。

栗や松の木が生い茂る緑豊かな山の裾野を抜けて、岩肌がむき出しの強風吹き荒れる部分へ差し掛かったときだった。すでに前方で形成されていた集団に向かって、カルロス・サストレ(チームCSC)が飛び出しをかけた。チームマネージャーのリース氏がチームカーで指揮を取ったこの日、CSCのチームメイト3人がすでに前方集団でリーダーを待っていたのだ。

もちろん3分2秒差で総合4位(第17ステージ終了後)につける強豪のアタックを、マイヨ・オロのデニス・メンショフ(ラボバンク)が許すはずがない。総合2位ウラディミール・エフィムキン(ケースデパーニュ)、総合3位カデル・エヴァンス(プレディクトール)、総合5位サムエル・サンチェス(エウスカルテル)、総合6位エセキエル・モスケーラ(カルピン・ガリシア)、総合7位マヌエル・ベルトラン(リクイガス)といった総合トップ10選手たちを引き連れて、すぐさまサストレの後を追った。ちなみに総合8位ウラディミール・カルペツ(ケースデパーニュ)と総合10位イゴール・アントン(エウスカルテル)は、早くから前方で逃げに乗っていた。

ところがサストレ、メンショフ集団が先頭グループに追いつきながらも、さらに登りで速いリズムを強いると、次第にエフィムキンとベルトランが遅れ始める。下りでも追いつくことはできず、2人はずるずると後退してしまった。つまり総合3位以下、7位以下の選手にとっては、総合順位を上げるビッグチャンス。しかも先頭集団には総合9位カルロス・バレード(クイックステップ)の姿もない。すると早くからエスケープを始めていた総合12位マキシム・モンフォール(コフィディス)、総合15位ルイス・ペレス・ロドリゲス(アンダルシア)にとっても、トップ10に近づく可能性がある。先頭の13人は、とにかく後続からタイム差を奪うために、一致団結して追走を続ける。

特にCSCのアシストたちがグループ前方で全力を尽くしたおかげで、後続とのタイム差は快調に開いていく。エフィムキンとベルトランを吸収したプロトン内ではケースデパーニュが必死に追いかけるが、有力選手が揃ったエスケープ集団の脚にはかなわない。最終盤、少しでもタイム差を縮めるために、プロトンから飛び出すしか策はなかった。

最終約10kmは、世界遺産に登録されているアビラの市壁の脇を2回通過するコース。その1回目の通過途中に、逃げ切りを確実とした先頭集団からロドリゲスがひとり飛び出した。石畳の悪路にも関わらず、後ろのスター集団をぐんぐん引き離していく。2周回目には後続集団と合流するハプニングもあったが、「彼らは邪魔するどころか、僕が逃げ切れるようみんな声をかけてくれんだ!」そして背後からの暖かい声援に励まされて、33歳の大ベテランはゴールラインをトップで通過した。今朝のステージ地では今季限りで13年のプロキャリアに幕を閉じることを発表し、夕方にはキャリア2度目のブエルタ区間優勝。「最高の日になったね」と、最高の笑みを見せた。

このステージ優勝で、ロドリゲスは総合15位から12位へとアップ。また41秒差でゴールした小集団では、サストレが総合3位へ浮上し、最終日の表彰台へ一歩近づいた。また3分07秒遅れたエフィムキンが総合2位から5位へ降格したおかげで、サンチェスが総合4位へ昇格。カルペッツはベルトランと順位を入れ替え、アントン、モンフォールもひとつずつ総合順位を上げている。


ルイス・ペレス・ロドリゲス(アンダルシア・カハスール) ステージ優勝

この勝利は僕の人生にとって最も重要な勝利だ。僕は今、世界で最も幸せな人間の一人だ。この勝利と喜びを僕を支えてくれたチームの皆に捧げたい。僕を唯一助け、心配してくれたのはこのチームだけだからね。そしてもちろん、僕を応援してくれた家族、妻、その他皆に感謝したい。今日のレースは最後の数キロのどのタイミングで仕掛けようか考えていた。逃げの集団の中には総合優勝争いをしている選手達が揃っていて、彼らはお互いを牽制し合っていた。僕はその隙を突いたんだ。それと僕はそろそろ競技人生から身を引こうと思っている。今が良いタイミングだと思う。ブエルタのような大きな大会でステージ優勝を果たすことが出来た。これ以上無い引き際だと思っている。

カルロス・サストレ(チーム CSC) 総合3位

総合順位が一つ上がるというのはとても重要なこと。まずは奮闘してくれたチームの皆に感謝したいね。今日はチームで何かしようと決めていた。そしてアタックを仕掛けた。逃げの集団を引っ張ったのはうちのチームとエウスカルテルだったね。状況としては上手く行ったかに見えた。エヴァンスとメンショフはアタックに加わったけど、チームメートを引き連れることが出来なかった。そしてエフィムキンが逃げに乗れなかったからね。この状況をもっと活かしたかったけど、そうはならなかったね。でもまだ明日がある。予報では終盤に雨が降るかもしれないということだし、まだまだ何が起こるか分からないよ。最後に、優勝したルイス・ペレスにはおめでとうと言いたいね。素晴らしい、攻撃的な走りだった。

デニス・メンショフ(ラボバンク) マイヨ・オロ

今日は難しい日だった。山岳コースも難しかったし、レース展開も厳しいものがあった。それに、サストレ率いるCSCのチームとしての走りぶりが最大の難関だった。でもなんとか今日はそれを凌ぐことが出来た。明日は最後最大の山場だ。集中して臨みたいし、気持ちをしっかり持てば、どんな戦いも乗り越えられると思う。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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