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ジロ1回目の休日明けに行われた個人タイムトライアル。1週目に区間2勝を上げて優勝大本命に躍り出たリッコ(サウニエルドゥバル)は、「クレーデン(アスタナ)から2分差以内でゴールできたら満足」と目標を設定した。去年の覇者ディルーカ(LPR ブレイクス)は、さらに志高く「クレーデンから90秒以上は失いたくない」と断言。今大会直前のツール・ド・ロマンディで個人タイムトライアルを制し、総合も制したクレーデンは、実力者たちにとって一種の“指針”となっていたようだ。
一方、クレーデンのチームメイトであり、第7ステージ山頂フィニッシュで最後までリッコvsディルーカに割って入ったコンタドール(アスタナ)も、タイムトライアルでの好成績が期待されていた。しかし左手首の骨に軽い亀裂が見つかり、「脚の調子はどんどん良くなっているが、腕に関してはTTポジションを取るのが難しい状況」と語っていた。
前半は比較的スピードの出るコース、一方で後半は登りが多くしかも最後は斜度14%の石畳。そしてレース途中から降り出した雨が、この日の優勝の行方を大きく左右した。乾いた石畳でゴールラッシュをかけられたブルセギン(ランプレ)が、濡れた石畳を慎重に走ったクレーデンを20秒差で、さらにはコンタドールを8秒差で下したのだ。ブルセギンにとっては昨ジロ第13ステージ“山岳”個人タイムトライアルに続く、2年連続のジロ区間勝利。「予想もしていなかった勝利だよ」と驚きながら、表彰式ではマイグラスを取り出してスプマンテを飲む準備万端さも見せた。
ゴール前7km地点では、この日の勝者を10秒上回っていた区間2位コンタドールは悔しがる。「雨じゃなかったら、ボクが勝っていた。本当だよ!」と語るが、総合争いの本命たちにとっては脅威の成績だ。なにしろ総合争いでは8位から4位へアップ。しかも前日までは総合で30秒近くリードされていたリッコやディルーカを、総合で1分30秒以上も追い抜いてしまった。ケガや調整不足の心配はあるものの、週末に来る山岳3連戦で、コンタドールが自らの登坂能力をさらに発揮してしまったら?「コンタドールはスペインからボクらの優勝を盗りに来た」とリッコが冗談で言っていたセリフが、イタリア選手たちにとっては笑い事ではなくなってきた。
そのイタリアの優勝候補たちの中で、最も納得のいく走りが出来たのはシモーニ(ディキジョバンニ)だろう。第1週はあまり目立つところなく静かにプロトン内で過ごしていたが、この日はわずか1分02秒遅れの10位でゴール。山に向けて再び存在感を放ち始めた。対してサヴォルデッリ(LPR ブレイクス)は、ゴール前300mで急遽バイク交換せざるを得ないアクシデントに見舞われた。失った時間が惜しまれるが、それでも44秒遅れの5位ゴールと健闘している。またリッコは左手袋が変速機に挟まってしまい、今大会3度目の落車。脚とヒジを地面に打ちつけ、「最低45秒は失ってしまった」と無念そうだが、クレーデンから1分44秒遅れのため一応目標はクリアした(ブルセギンからは2分04秒遅れ)。
目標達成できなかったのはブルセギンから2分11秒、クレーデンからは111秒失ったディルーカ。ただし区間3位クレーデンよりも、「今後の山ではコンタドールこそ倒すべき男」と照準を合わせ直したようだ。総合は4位から10位と後退。第9ステージまでは優勝争いの先陣(総合4位)に立っていたディルーカだったが、今後は総合4位コンタドール、6位クレーデン、8位サヴォルデッリ、9位リッコを追いかける立場となってしまった。
また最終176番目にスタートしたヴィスコンティ(クイックステップ)は、1分05秒遅れの12位という好位置でステージを終えた。もちろんゴール後には、5日連続のマリア・ローザ表彰式で大きな笑顔を振りまいている。
●マルツィオ・ブルセギン(ランプレ)
ステージ優勝
このコースでは非常にいい感触を抱いた。去年勝ったオローパと同じような感覚だ。前日にコースを下見した段階から、いいフィーリングだったよ。この勝利を誇りに思う。特にボクの後ろにゴールした選手たちの名前を眺めるとね!ジロではステージ優勝を狙いに来た。目標は達成された。
幸運だったよね。最後の数キロはパワーが要求されるルートだった。この点でボクはコンタドールよりも有利だった。それに彼のゴール時には、ゴール前の石畳は濡れていたし。ボクにとってはありがたかったさ。ボクがほとんど注目されないのは当然のことだよ。だってジロを勝てる可能性なんてボクにはないからね。山を越えるには、少し体が重過ぎるんだ。
●ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(クイックステップ)
マリア・ローザ
人生最高のタイムトライアルが戦えた。でも正直に言えば、こんな走りが出来ると予想していた。ボクはTTを結構気に入っているんだ。それにウォーミングアップをしっかり長時間行ったから、コース上でもすぐに力を出すことが出来たよ。最も大切なのは、ボクがまだこうしてマリア・ローザを着ていること。これで5日目だよ……信じられないね。このマリア・ローザは偶然の賜物なんかじゃない。単に適当なエスケープでボクの手の中に降ってきたわけじゃないんだ。日がたつにつれて、ボクはよりいっそう歯を食いしばって踏ん張って走っている。ボクを過小評価しないで欲しい。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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