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サイクル ロードレース コラム 2008年9月18日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2008】第17ステージレースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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イタリア・ヴァレーゼで開催される世界選手権の個人タイムトライアルはブエルタ閉幕の4日後、ロードは1週間後に行われる。フランス代表チームのエースに選出されたシルヴァン・シャヴァネル(コフィディス・ル クレディ パール テレフォン)は、マイヨ・オロの思い出を胸に今ステージ前にスペインを立ち去った。またベルギー代表のリーダー格であるトム・ボーネン(クイックステップ)や他の数選手が第17ステージ後に帰国することは、数日前から公然の事実となっていた。

プロトン内で影響力を持つ数選手が、20時半過ぎの飛行機に乗る予定だったからだろうか。前日のスローすぎるリズムがまるで幻だったかのように、この日のプロトンは文字通りゼロkm地点から高速で走り出した。12km地点でペドロ・オリーリョ(ラボバンク)のアタックが決まり、さらにその直後にホセ・ルイス(アンダルシア・カハスール)が追いかけると、その後は集団内にもわずかながら静かな時が訪れる。

ただしプロトンもあまりノンビリとはしていられない。2選手が40km地点で8分半のタイム差をつけると、後方の集団は少しずつスピードアップ。エウスカルテルやサイレンス・ロットが中心となって、その後100kmかけて2人を追い詰めた。

残り41km地点で一度ゴールラインを越えたあと、コースはヴァリャドリドを中心に大きな一周回を描く。逃げの2人から4分17秒遅れでゴールラインを通過したメイン集団では、その後に登場した激坂で分断が発生した。これまでスプリンターチームが制御していた集団前方にマイヨ・オロのアルベルト・コンタドール擁するアスタナが上がり、急激に速いリズムを強い始めたからだ。たまらず千切れた後方集団には、前日スプリントを制したボーネンとエリック・ツァベル(チーム ミルラム)が取り残されてしまった。

再びコースが平坦になると、強風の吹きつける荒野の一本道で激しい追いかけっこが繰り広げられた。前方ではボーネンと同点のポイント賞3位グレッグ・ヴァンアーベルマートのために、サイレンス・ロットが必死の加速を続ける。後方集団もほんの十数秒を取り戻そうと極限までスピードを上げる。荒野の大追走劇の間にエスケープの2選手は吸収され、また、10分ほど続いた分断も残り9kmほどで終わりを迎えた。少し残念だったのは、合体直後にツァベルがパンクの犠牲となり、プロトン前方復帰の望みが絶たれてしまったこと。そして追走に体力を使いすぎたボーネンも、最終的には集団からひとり千切れてしまった。

ところがこの日がブエルタ最終日のボーネンは、どうやらゴールスプリントに加わるつもりはなかったようだ。ゴール前20kmで「今日はお前が勝ちに行け」と、ボーネン自ら某チームメイトに指示を出していたのだ。リーダーのいないクイックステップトレインは少々乱れ気味で、リクイガスやエウスカルテルと混ざり合ったりもしたが、それでもラスト1kmのアーチをクイックステップの2人が先頭で潜り抜ける。

ボーネンもツァベルもいない大集団スプリント。ゴール直前はアージェードゥゼール、コフィディス、エウスカルテル・・・と、様々なジャージが乱れ飛んだ。ただし際どいスプリントを最後に締めたのは、まさに「今日はお前が勝ちに行け」とボーネンに勝利を託されたクイックステップのワウテル・ウェイラント。将来ボーネンの後を継ぐ強健スプリンターとして地元ベルギーから大きな期待を寄せられてる若者は、今ブエルタではボーネンの最終アシストを務めていた。そしてボーネンの粋な置き土産をしっかり受け取って、24歳の誕生日を迎えるちょうど10日前に、キャリア初めてのグランツール区間勝利を手に入れた。またクイックステップにとっては、ベッティーニの2勝、ボーネンの2勝と合わせてブエルタ区間5勝目となる。

2回の中間スプリント地点では逃げの2人に続いて3位通過し、ステージ6位に入ったヴァンアーベルマートはスプリントポイントを合計12ポイント獲得。やはり母国ベルギーから大きな期待を集めている23歳は、先輩ボーネンがいなくなる前に、自力でポイント賞ジャージを取り戻した。


●ワウテル・ウェイラント(クイックステップ)
ステージ優勝

こんなに大きな勝利を手に入れられるなんて信じられない。グランツールの区間勝利は夢だったよ。出来れば1ステージ勝ちたいな、と思って大会に乗り込んできたんだ。だってボクにとっては本当に苦労続きの年だったからね。落車が多かったし、病気にもなった。数日前にも落車したけれど、あの時はすぐに自転車に飛び乗ってプロトンに戻った。2日間はヒザがすごく痛かった。でも昨日は痛みが取れてきていたし、今日はパーフェクトだったよ。

今日はボーネンがスプリントするかどうか、それともボクがスプリントするのかどうか、実はステージ最終盤まで決めていなかった。でもゴール前20kmで、ボーネンが「今日はお前が行け」と言ってきた。その後はベッティーニとトザットが、ボクのためにものすごい仕事をしてくれたね。今大会ではボクがスプリントにおける最終アシストを務めた。これまではステーグマンがその役目を負っていたけれど、彼は別のチームに移籍してしまうから、これからはボクが最終アシストなんだ。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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