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サイクル ロードレース コラム 2009年9月5日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2009】第6ステージレースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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翌日からは個人タイムトライアル、さらに難関山岳ステージと、総合大本命たちの争いが本格化する。つまりTTスペシャリストやヒルクライマーではない普通の選手にとっては、絶対に逃したくない区間勝利のチャンス。特に開幕直後から区間勝利とマイヨ・オロの両方を獲れそうで、獲れないまま来てしまったトム・ボーネン(クイックステップ)、タイラー・ファラー(ガーミン・スリップストリーム)、ダニエーレ・ベンナーティ(リクイガス)といった強豪スプリンターたちは、気合十分で大会1週目最後の平地ステージに乗り込んだはずだった。

もちろん大逃げタイプの選手たちは、スタート直後から果敢なアタックを繰り返す。8km地点で4選手が逃げ出しに成功した。今季限りで引退を決めている36歳ビンヘン・フェルナンデス(コフィディス・ル クレディ アン リーニュ)とアイトール・ペレス(コンテントポリス・アンポ)のバスク選手2人と、前日に続きエスケープに乗ったホセアントニオ・ロペスヒル(アンダルシア・カハスール)とマッテ・プロンク(ヴァカンソレイル プロサイクリングチーム)の2人。スペインに入ってから40度近い酷暑続きにも関わらず、後者2人はなんと元気なのだろう。しかも前日は残念ながら手ぶらで家に帰ったが、この日のロペスヒルは今ステージに登場した3峠を全てトップ通過して山岳ジャージを手に入れたし、プロンクはゴール前28kmの「ソリダリオ」ポイントを制して赤ゼッケンをつかんだ! そして2人の2日間に渡る努力が報われると、逃げ集団は一気にタイム差を失い、ゴール前17kmでプロトンへ吸収されていった。

その後のアップダウン地形では、プロトン屈指の有名選手たちが飛び出しを仕掛ける。世界チャンピオンジャージ「アルカンシェル」のアレクサンドロ・バッラン(ランプレ・N.G.C)が先手を打つと、やはり昨世界選手権で銅メダルを手に入れたマッティ・ブレシェル(チーム サクソバンク)が後に続く。しかも昨ブエルタでそれぞれ1ステージずつ制している2選手に、飽くなき逃げ男フィリップ・ジルベール(サイレンス・ロット)と2006年ツールで大逃げを繰り返し「スーパー敢闘賞」に輝いたダビ・デラフエンテ(フジ・セルヴェット)も加わった。マイヨ・オロ擁するチーム コロンビア・HTCが必死に加速してこの4人を集団に引き戻すと、すかさず昨ブエルタで山岳賞を手にしたダヴィ・モンクティエ(コフィディス・ル クレディ アン リーニュ)がグングンと距離を開く。まあ、最終的にはいずれの企ても実を結ばなかったのだが、まるで3週間後に迫った世界選手権のミニ前哨戦のような仕掛け合いは、大会1週目の戦いに華を添えてくれた。

ちなみに有名スプリンターたちの企ては、ことごとく失敗に終わった。2連勝中だったアンドレ・グライペル(チーム コロンビア・HTC)は早めに脱落し、グライペルお下がりのポイント賞ジャージではなくベルギーチャンピオンジャージで戦いに挑んだボーネン(各賞2位以下の選手は、賞ジャージではなく世界・国内チャンピオンジャージを優先させてよい)は5位に沈んだ。さらに勝利に向けて好ポジションで最終カーブを曲がったファラーとベンナーティは、大いなる伏兵ボルト・ボジッチ(ヴァカンソレイル プロサイクリングチーム)の特攻ロングスプリントの前に崩れ落ちた。グライペルは幸いにもマイヨ・オロを守りきったが、他の3人は何も手に入らぬまま。特にボーネンは初日から変らず総合首位まで10秒以内をキープし続けているが、かといって6秒差以内に縮めることも出来なかった。

一方、この1週間毎日欠かさず逃げに選手を送り込み、スプリントにも全力を尽くしてきたヴァカンソレイル プロサイクリングチームは、ついにチームとして初めてのグランツール勝利を手に入れた。もちろんボジッチにとっても初めての区間勝利。しかし小さなチームの伏兵とは言っても、今季のボジッチの成績を振り返れば彼の実力は折り紙つきだ。なにしろベルギーツアーではワウテル・ウェイラント(クイックステップ)やダニーロ・ナポリターノ(チーム カチューシャ)相手にステージ2勝+リーダージャージ2日間。ブエルタ直前のポーランド一周では、あのグライペルを負かして区間を制している。来年はヴァカンソレイルにフェイユー兄弟(アグリチュベル)が合流するし、もしかしたらツール・ド・フランスの大舞台でも俊足を見せ付けるチャンスが訪れるかもしれない。

翌第7ステージはオールフラット30kmの個人タイムトライアル。初日サーキットTTを制したファビアン・カンチェッラーラ(チーム サクソバンク)が、黄金ジャージを再び着用するために全力疾走するだろう。取り返すべきタイム差は、わずか18秒だ。


●ボルト・ボジッチ(ヴァカンソレイル プロサイクリングチーム)
ステージ優勝

今日のスプリントの鍵は思いっきり飛び出したこと。ボクはファラーやボーネン、ベンナーティの後ろといういいポジションにつけていた。そして最後のカーブの後、ゴール前250mで飛び出そうと決めて、他の選手を出し抜くことに成功したんだ。あんなに遠くからボクがスプリントを切るなんて、誰も予想していなかったはずだよ。ファラーやベンナーティのような強豪相手に勝てて、すごく満足している。

ブエルタのようなビッグレースで勝てるなんて、夢のようだし、すごく特別だね。キャリア最大の勝利だよ。ボクはずっと小さなチームに所属してきたから、他の選手よりもハードに戦わなきゃならないし、成功するには勝利をたくさんあげなきゃならない。それでも今日の結果は、人々の目に留まったんじゃないかな。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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