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サイクル ロードレース コラム 2009年9月12日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2009】第12ステージレースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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まるで世界の果てまで見渡せるような、そんなベレフィケ峠の山頂でライダー・ヘシェダル(ガーミン・スリップストリーム)が両手を挙げた。ただし今日の勝者は、雄大なパノラマや綺麗な九十九折をゆっくりと眺めている暇はなかったに違いない。

なにしろ5.7km地点でダビ・ガルシア(シャコベオ・ガリシア)に追いついてから、それこそゴールライン直前まで、一瞬たりともライバルから目を離そうとはしなかったのだから。おかげで第10ステージの悔しさを——逃げ4人のスプリントに失敗して惜しくも2位で涙を呑んだ悲しさを——、再び味わうことなく済んだ。28歳のヘシェダルにとっては、初めてのグランツール区間制覇。また第11ステージにチーム創設以来2つ目のグランツール区間を手に入れたばかりのガーミン・スリップストリームは、あれからたった2日後に、チーム3つ目の大きな勝ち星を手に入れたことになる。

その第11ステージに勝利を飾ったタイラー・ファラー(ガーミン・スリップストリーム)は、この日のサイン台に姿を現さなかった。また第10ステージにヘシェダルと一緒にゴールスプリントを争い、やはり悔しい思いをしたアレクサンドル・ヴィノクロフ(アスタナ)は、今ステージは一旦は逃げ集団に入り込んだにも関わらず、ゴール地までたどり着く前に自転車を降りてしまった。この日は結局、スタートしなかった選手が5人、途中リタイアした選手が5人。2週間前に198人で始まったブエルタは、170人で3回目の週末を迎えることになる。

逃げ集団は27kmで出来上がった。難関山岳ステージにもかかわらず、面白いことにスプリント強者が顔をそろえる。ここまでの平坦ステージで輝くことの出来なかったスプリンター、オスカル・フレイレ(ラボバンク)やイニャキ・イサーシ(エウスカルテル・エウスカディ)だけでなく、第6ステージですでに区間1勝しているボルト・ボジッチ(ヴァカンソレイル プロサイクリングチーム)までもエスケープに加わった。ファラーが立ち去ったおかげでポイント賞レース3位に上昇していたボジッチは、この日登場した2度の中間スプリントポイントを先頭通過。首尾よく4p×2を獲得して、首位アンドレ・グライペルまで33ポイント差に詰めた。……未だにかなりの大差だが、ブエルタはまだ長い。今ツール・ド・フランスでトル・フースホフト(サーヴェロ テストチーム)が難関山岳ステージで大逃げを打って、マイヨ・ヴェールを確実なものとした前例も忘れてはならないだろう。

ヴィノクロフが抜けて11人になった逃げ集団が動いたのは、ゴール前17.6km地点に設置された「ソリダリオ」スプリントポイント直前だった。翌ステージの赤ゼッケンを巡ってしばしばスプリントが行われるポイントに向かって、ガルシアがスパート。ところが、これはゼッケン獲得のためのスプリントと同時に、勝利へ向けてのアタックでもあった!赤ゼッケン争いなどには興味を示さず、つまりまるで動かなかったライバルたちを尻目に、ガルシアは単独先頭で山頂を目指し始めてしまったのだ。幸いにもヘシェダルの決断は遅すぎなかった。最終峠に入った直後に逃げ集団を飛び出すと、残り5.7kmで無事にガルシアを捕らえた。背後からはメイン集団が激しく追い上げてきていたが、ゴール直前でかけひきを行う時間はかろうじて残っていた。

ヘシェダルが歓喜の優勝を果たしたわずか6秒後に、ゴールラインに飛び込んできたのはロベルト・ヘーシンク(ラボバンク)とエセキエル・モスケーラ(シャコベオ・ガリシア)だった。モスケーラは2度目のアタックを成功させて、残り5kmでマイヨ・オロ集団から飛び出していた。またヘーシンクはラスト2kmを切ってからの猛ダッシュ。残り1kmのアーチで合流した2人は総合ライバルたちに10秒先んじてゴールした。モスケーラはつまり、総合タイム差を2分24秒から2分14秒へと短縮。目標と強いている総合表彰台にはまだまだ遠いが、それでもゴール後には満足そうな笑顔を見せた。「脚がうまく動いたからね。これが大切。この脚があれば、またトライできる」と山岳残り2日に意欲を見せた。

また区間3位のボーナスタイム8秒を手に入れたヘーシンクは、マイヨ・オロまで18秒差へと近づいた。本当はステージ優勝とボーナスタイム20秒が欲しかったそうだが、大きな躍進に一応納得している様子。メイン集団から2人の飛び出しを許した総合首位アレハンドロ・バルベルデと3人のアシストたちは、あくまでも「今日はとにかくエヴァンスだけに注意を払った」ようだ。なにより2人から少しタイムを失ったけれど、代わりに残る山岳2日間のためにしっかりエネルギーは残してあるとのこと。


●ライダー・ヘシェダル(ガーミン・スリップストリーム)
ステージ優勝

今日は最初から最後までまさにパーフェクトなシナリオだった。先ずはいいエスケープ集団に乗って、集団全員が協力し合って働き、さらにはボクには十分にパワーが残っていたから、最後にはライバルたちを突き放して、前方を逃げるガルシアを捕らえることができた。それに勝利を手に入れるため、かつてないほどの決定力を発揮できたね。後方の選手が迫ってきていたけれど、幸いにも、ボクには勝てるだけのスピードもあった。


●アレハンドロ・バルベルデ(ケースデパーニュ)
総合リーダー

今日の出来には満足している。もっと危険なステージになる可能性はあった。でもチームが素晴らしい仕事をして、レースを上手くコントロールしてくれた。チームメイトが強いたテンポは速すぎて、飛び出そうにも難しかったはずなんだ。アタックの可能性はあきらかに減らすことができたはずだ。今日のボクはアタックする必要はなかったんだよ。今日はとにかくエヴァンスに張り付いていた。大切なのはボクが未だリーダーの座にいることだったし、来る山岳2日間のために体力をキープすることだった。もちろんヘーシンクを次は逃がしてはならない。明日はさらに厳しいステージになるだろう。大きなタイム差がつく可能性がある。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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