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サイクル ロードレース コラム 2010年5月15日

【ジロ・デ・イタリア2010】第6ステージレースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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今大会初めて中程度の山岳がいくつも登場した第6ステージ、総合本命たちは軽い足慣らしのつもりで挑んだのだろうか。マリア・ローザのヴィンチェンツォ・ニバリも「今日は簡単なステージになると思っていた」とゴール後に告白する。しかし2010年ジロはあくまでも選手たちに厳しい試練を課した。「でも、全くそうではなかったね」とニバリが考えを訂正したように、狭い道と延々と続くアップダウンが選手たちの脚を苦しめた。「だから休む暇が全くなかったし、しかも強い向かい風が吹いていた。雨も降って道は危険だった。落車が起こるたびに15人から20人の選手が巻き込まれていたよ」とカルロス・サストレも語る。

そんな落車の犠牲者のうち、3選手が無念の途中棄権を強いられた。特に通り雨で塗れた下りで激しくアスファルトに叩きつけられたのは、パオロ・ティーラロンゴとギヨーム・ボナフォン。2人とも最寄の病院に救急車で搬送され、ティーラロンゴは手首打撲との診断、ボナフォンは右眉上の縫合手術を受けた。幸いにも骨折こそなかったものの……、アスタナの頼れる山岳アシストを務めるはずだったティーラロンゴの早々のリタイアは、現在33秒差で総合4位と好位置につけるアレクサンドル・ヴィノクロフにとっては頭が痛いに違いない。ところで前述のサストレはこの日2番目のスポルヴェリーナ峠の上り序盤で一時後れを取ったが、単なるパンクの影響であり、チームメイトのおかげですぐに集団復帰を果たしている。

45km地点で飛び出しを決めたルーベンス・ベルトリアーティとマシュー・ロイドは、こんな想像以上に厳しいルートに、たった2人で立ち向かい続けた。2002年ツールでマイヨ・ジョーヌを2日間着用したことのあるベテランのベルトリアーティと、昨季までカデル・エヴァンスの山岳アシストを務めていたロイドの実力派コンビ。しかもプロトンの主導権を握るリクイガス・ドイモがそれほど急ぎ足で追いかけてこなかったおかげで、最大5分38秒開いたタイム差はそれほど急速に縮まることもなかった。さらにゴール前42km、2つ目の峠へと差し掛かる直前には5選手が後方でアタックを仕掛け、エフゲニー・ペトロフ、ヨハン・チョップ、カイエタノ・サルミエントの3人が追撃体制に入ったが、前方の2人を最後まで捕らえることは出来なかった。

上手に協力し合って走った前方の2人だが、上りでロイドが引く時間帯が徐々に長くなっていく。そして「最後の上りでベルトリアーティが苦しそうだった」のを見て取ったロイドが、ついにゴール前12km=最終峠ベッディツァーノの山頂まで約1.5kmの地点で、加速を仕掛けた。いともあっさりと逃げの友を置き去りにすると、ロイドは1人でゴールを目指し始めた。途中、頂上では山岳ポイントを手に入れて、山岳賞ジャージのマリア・ヴェルデも確実にした。下りは上りほど得意でないと言うとおり慎重に下りをこなしたあとは、最後の平地ではまるでタイムトライアルのように上体を極めて低くして全力疾走の体制を取り続けた。……そしてこのポジションは、実にゴール前100mまで崩れなかった!そして本人曰く世界で一番ロマンチックだというばら色のレースで、初めてのグランツール区間勝利を手に入れた。しかも2006年南豪州チーム所属時代にツアー・オブ・ジャパンで1勝している「ロイディ」のこの勝利は、所属チームのオメガファルマ・ロットにとってフィリップ・ジルベールのアムステルゴールドレースに続く貴重なシーズン2つ目の勝ち星!同じベルギー勢のクイックステップもすでに今大会で2勝しており、なにやらこのジロ前半は春クラシックで惨敗したベルギーチームの巻き返しの場となっているようだ。

ベルトリアーティが1分06秒遅れでゴールラインを越えたその背後では、プロトン内で3位争いの集団スプリントが繰り広げられた。実はこの日は中間スプリントポイントでも3位争いが行われ(ポイント配分は6人まで。3位〜6位は4〜1ポイント)、タイラー・ファラーが3位4ポイントを獲得していた。そのファラーは集団から大きくちぎれ、ポイント賞争いで上位につけるアンドレ・グライペルやグレーム・ブラウン、ワウテル・ウェイラントも仲良く遅れをとり……、一方ではアレッサンドロ・ペタッキがなんと思い切って峠でアタックを繰り出すという離れ業さえやってみせた。結局はそのペタッキのチームメイトのダニロ・ホンドが区間3位のスプリントを制し、11分30秒遅れでゆっくりゴールしたファラーは中間の4ポイントのおかげでマリア・ロッソ・パッショーネを再び手に入れている。

第5ステージに最長144kmの逃げを打ち区間3位に入った新城幸也には、スタート前に「プリマ・フーガ(大逃げ賞)」が授与された。ジロ開催元でもあるスポーツ紙ガゼッタ・デッロ・スポルトにも大きく写真が掲載され、一躍有名選手になった新城だが、さすがに前日の大奮闘が響いたか。この日は首位から15分36秒遅れの最終グルペットで静かにゴールしている。


■マシュー・ロイド
ステージ優勝

信じられない。まだ衝撃が止まらないよ。この日のレースのことはボクの心にいつまでも刻み付けられることだろうね。なんだかロマンティックでスペシャルな勝利だよ……。最後の2kmは、何も見えなかった。人の顔とか、沿道を流れる色とか、そんなものは全く目に入らなかった。ただ地面と、前を走る赤いオフィシャルカーだけを見ていたんだ。ゴールラインまで200mのところで、ようやく心の中に特別な感情がわいてきた。ジロはボクにとっては世界で一番美しくて、ロマンチックで、感動的なレースなんだ。本当に情熱的さ。それに他のどんなレースよりも厳しいからね。

今日のコースプロファイルのおかげで、ボクに勝機が巡ってきたのかもしれない。今日はアタックしたい選手向けのコースだったからね。でもボクが動かなかったら、何も起こせなかったはずなんだ。こういった試みは99パーセント失敗する。それに自転車レースにおいては、1日の終わりに出した結果だけが全てなんだ。だから本当にスペシャルだ。ボクが国内選手権で勝ったときのように、今日もエヴァンスが真っ先にお祝いに駆けつけてくれたよ。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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