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サイクル ロードレース コラム 2011年5月20日

【ジロ・デ・イタリア2011】第12ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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「第12ステージを最後にジロを離れる」。あらかじめマーク・カヴェンディッシュは宣言していた。なにしろ、スプリンターが何かしようと思ったら、この日が正真正銘のラストチャンスである。ならば残りの9日間を恐ろしい山の中で苦しみながら過ごすよりも、あっさりイタリアを離れて、たっぷり休養を取って、心身ともにフレッシュな状態で次の目標——もちろんツール・ド・フランスとそのマイヨ・ヴェール——に向ったほうがいいに決まっている。しかし大好きなジロとイタリアに敬意を表するために、絶対にステージ2勝目が獲りたかった。だからスタート前に地形をしっかりと研究し、ステージ序盤から最後までチームメートを働かせ、カヴェンディッシュは100%の状態でフィニッシュラインへと向かって行った。

小さな丘がわずかに3つあるだけで、残りはまさしく真っ平らという至極簡単なコースだったにも関わらず、カヴェンディッシュは逃げ集団をゆっくりと泳がせたりはしなかった。5km地点でスタフ・クレメント、ミハル・ゴラス、ミゲル・ミンゲス、ダヴィデ・リッチビッティが逃げ出したばかりだというのに、20km地点で早くもHTC・ハイロード全員が配置についた。トレインを組んでのプロトンコントロールは効果抜群で、タイム差は決して4分以上には開かない。エスケープ集団には、美しきアドリア海岸を静かに眺めてる余裕さえなかった。2011年のジロ一行が見る、最後の海だったというのに。

パンターニ思い出の地を通り、ステージも最終盤に差し掛かっても、変わらずHTCボーイズたちが制御権を握り続けた。もちろん、ラスト15kmで逃げ集団を吸収したあとは、カヴのアシストたちはよりいっそうペダルを漕ぐ脚に力を込めた。有終の美を飾るために。ただし、やはり最後のチャンスにかけるほかのスプリンターチームたちが、少しずつ前方ポジションを脅かし始める。とくにフランシスコホセ・ベントソを擁するモヴィスターチームが積極的に動き続けた。エトナ以来、カヴとの因縁を抱えるベントソだって、大会2勝目を狙っていた。なにしろ今大会ここまで繰り広げられた数少ない集団スプリントは、第2ステージをアレッサンドロ・ペタッキが、第6ステージをベントソが、第10ステージをカヴェンディッシュが制した。大会2勝目を上げられたスプリンターは存在しない。つまりこのステージで2勝目を奪い取ることさえ出来れば、今大会ベストスプリンターと誇ってもいいはずなのだ!だって2011年版マリア・ロッソ・パッショーネは、おそらく、キング・オブ・スプリンターを意味するものではないのだから。

トレイン運行が1台から数台に増えると、当然、緊張感は一気に増す。ピリピリした雰囲気はゴール地が近づくにつれて強くなり、次第にカオス状態になり、そして、落車を生み出した。ラスト1.5km地点、90度カーブでの集団落車。地面に叩きつけられたのは幸いにも数選手だけだったが、大多数の選手が減速を強いられた。ベントソも、その1人だったようだ。一方のカヴェンディッシュは「ステージ前には必ず、インターネットでラスト数キロの地形を確認しているんだ。ボクは入念に準備するタイプだよ」と語ったように、わずかに残った9選手と共に、なにより最終発射台のマーク・レンショーと共に、前方で勝負を続けることを許された。

2日前はレンショーの保護下から少しだけ早めに離れて、ペタッキの背後に張り付くことを選んだ。この日は至ってオーソドックスに、ラスト200m地点までレンショーの後ろにすっぽりと隠れて、一瞬で爆発させるべきエネルギーガスを圧縮し続けた。あとは何度も見なれたシナリオどおり。赤ジャージ姿のペタッキや、もう1人のイタリア人スプリンター、ダビデ・アポロニーオが必死であとを追いかけたが、子供のような満面の笑みで2本指を立てたカヴェンディッシュが全てを打ち破ったのだった。自身にとって今ジロ最後のフィニッシュラインを、一等賞で駆け抜けたカヴは、翌朝イギリスへ飛ぶ。ペタッキとアシストのダニロ・ホンドも、それぞれ家に帰る予定だ。すでに多くのスプリンターがスーツケースをまとめて2011年ジロを出て行った。しかし寂しさを感じている暇はない。なにしろ第13ステージから最終日まで、連日、恐ろしい戦いがジロを待ち構えているのだから!

また落車はゴール前3km以内で起こったため、同一集団内にいた全ての選手に同じタイムが与えられている。もちろんアルベルト・コンタドールのマリア・ローザはまったく揺るいではいない。59秒差で総合2位につけるコンスタンティン・シフトソフを筆頭に、1分21秒差のヴィンチェンツォ・ニバリ、1分28秒差のミケーレ・スカルポーニ、1分41秒差のロマン・クロイツィゲル等々……も、翌日のドロミティ入りに向けて問題なく1日を終えた。


●マーク・カヴェンディッシュ(HTC・ハイロード)
区間勝利

今日の勝利は本当に大切だったんだ。だってチームメートたちが1日中働いてくれたんだから。だからこの勝利で、彼らに感謝の気持ちを示したかった。ほかのスプリンターチームにも協力してくれるよう頼んだけれど、何の助けも得られなかった。だからボクらだけでレースをコントロールしなきゃならなかったんだ。いつも通り、最終盤になると、スプリンターもクライマーも、誰もがバトルに乱入してきた。でもボクらは5年前から一緒に走ってきていたのだから、誰もが何をすべきなのか正確に把握しているんだ。まるで連隊の兵士みたいな感じかな。それにボクはロードブックをしっかり確認していたから、フィニッシュに関してもはっきりとしたヴィジョンが合った。落車の可能性も考えていたから、何の問題もなかった。ただ最後ペタッキが後ろにぴったりと張り付いてきたときだけは、すごく心配したよ。でもゴール前200mで加速すると、一瞬でかなりのギャップを作り出すことができた。おかげであとは比較的簡単に勝利をつかむことができたんだ。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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