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サイクル ロードレース コラム 2012年5月10日

ジロ・デ・イタリア2012 第4ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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ようやくジロが祖国イタリアの土を踏んだ。「イタリア開幕じゃなかったおかげで、いつもよりも静かに、リラックスして大会へと滑り出すことが出来た。これがイタリアだったら、ボクらイタリアチームを、ファンやメディアが放っておいてくれないからね。あちこち対応や挨拶が忙しいし、プレッシャーも大きい。だから、その点においてはデンマークスタートはありがたかった。バッソも心静かに大会開幕を迎えられた。……でも、なんだかんだ言っても、イタリアの熱気が恋しいけど」。開幕時にリクイガス・キャノンデールのザナッタ監督は、ありがたいような、寂しいような、そんな複雑な心境を語ってくれたものだ。そしてこの日、ティフォージたちの熱狂に包まれて、ジロは本来の華やかな姿を取り戻した。

デンマークからの移動と休養日を経てのイタリア帰還初ステージは、距離こそ短いけれど、しかし極めて重要な試練が待ち構えていた。33.2kmのチームタイムトライアル。団体全力疾走は、比較的簡単にタイム差がつきやすい。

だからこそ最終日ミラノでのマリア・ローザを狙う選手たちにとっては、ライバルたちを突き放す絶好機となる。一方では早くも大きく水をあけられてしまう危険性も秘めているのだ。初日の個人タイムトライアルで少々失敗してしまったミケーレ・スカルポーニ擁するランプレ・ISDは、休養日にTTTコースを3周下見した。ホアキン・ロドリゲス属するカチューシャ チームは、新たなエアロダイナミクス&ジオメトリー概念を組み入れた新車で勝負に挑んだという。ちなみにデンマークを抜け出した時点で、優勝候補の中でトップに立っていたのはロマン・クロイツィゲル(アスタナ プロチーム)。それをイヴァン・バッソ(リクイガス)が3秒差、ロドリゲスが7秒差、フランク・シュレク(レディオシャック・ニッサン)が23秒差、スカルポーニが30秒差……等々で追いかけるという状況だった。

大きな笑顔で1日を終えることが出来たのは、本来ならばタイムトライアルを苦手とするはずのロドリゲス!開幕ステージで予想以上の好走を見せたヒルクライマーは、ミハイル・イグナチエフ(しかもジュニア・U23個人TT世界チャンピオン、トラック五輪金メダリスト)やガティス・スムクリスといった現役国内TTチャンピオンや、パヴェル・ブラットやアレクサンダー・クチンスキーといったパワフルなルーラーからの協力を十分に得ることができた。「できるだけタイムロスを少なくすること(ピーヴァ監督)」を目標に走り出したカチューシャ チームは、「まったく予想外だった」2位(首位ガーミン・バラクーダから5秒遅れ)という好成績をたたき出した。

区間3位のアスタナは区間首位から22秒遅れ、以下リクイガス26秒、レディオシャック28秒、ランプレ34秒。つまりガーミンとカチューシャだけが飛びぬけて素晴らしいタイムを記録したのであって、ランプレのダミアーニ監督は「3位チームよりも12秒しか失わなかったのだから、満足の出来」と語る。総合争いに関してはロドリゲスから10秒差でクロイツィゲル、17秒差でバッソ、39秒差でシュレク、そして52秒差でスカルポーニ……。「ジロは山で決まる」とあくまでもスカルポーニは主張するが、ハンディキャップを背負ってしまったことは否めない。

もちろん2週間後のリーダージャージ争いはこれからが本番だが、まさにこのチームタイムトライアルで、区間優勝とマリア・ローザ交代劇を成功させたのがガーミン・バラクーダだった。かつて2008年ジロと2011年ツールのTTTを制したこともあるスペシャリスト軍団は、37分04秒・時速53.741kmで、今季のツアー・オブ・カタールTTTに次ぐチーム一丸となっての勝利を手に入れた。ただしピンク色の栄光を手に入れたのは、前日まで首位から13秒差だったアレックス・ラスムッセンではない。トラック競技では世界タイトルをいくつも手にしてきたラスムッセンは、ルート半ばで遅れてしまった。つまりチームの第2オプションから昇格して、見事にマリア・ローザを身にまとったのは、前日まで18秒遅れのラムナス・ナヴァルダスカスだった。

2011年ツールでガーミンがTTTを制したとき、ナヴァルダスカスはチームメートから1分近く遅れてゴールしている。この日も牽引に多く力を尽くしたために、最終盤は少々苦しい思いも味わったが……、チームの前から3番目で無事に戦いを終えた。24歳のリトアニアチャンピオンは、シャイな微笑で喜びをかみ締める。

「スタート前には、ジャージが取れるなんて予想もしていなかった。あまりにも疲れてしまったものだから、ラスト5kmは本当に苦しかった。最後の1kmは何度もおいていかれそうになったほどだよ。チームメートやスタッフのおかげだ」

しかし喜びの影で、大きく肩を落とす人物の存在も忘れてはならない。第3ステージのゴール前落車で足を痛めたテイラー・フィニーは、静かにピンク色の生活に終止符を打った。ルートを外れて草むらに突っ込んだり、上りで苦しんだりしながらも「持てる限りの力を全て尽くした」し、BMCレーシングチームは21歳の若きリーダーを最後まで守り続けた。

「かつてないほど最悪の時間を過ごした。色々な要因が重なった結果だけど、とにかく脚がなかった。ボクを待ってくれたチームメートには感謝している。ボクを置いていくことだって出来たはずなのにね。幸いにも、今日は転ばなかったよ」

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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