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サイクル ロードレース コラム 2012年5月15日

ジロ・デ・イタリア2012 第9ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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2012年大会も9日目を終えて、集団スプリントで終わったステージが4回。そのうちゴール前500m以内に狭い角度のカーブが2回。そのいずれも、カーブで集団落車が発生した。ちなみに次回「平坦ステージ」に分類されている第11ステージでも、ゴール前400mに、45度カーブがプロトンを手招きしている。

厳しかった2日間をなんとかやり過ごして、いまだ大会に残るスプリンターたちは大いなるモチベーションをかき立てていた。スタートから20kmほどで逃げ出したピエール・カゾー(エウスカルテル・エウスカディ)、ブリアン・ブルギャク(ロット・ベリソル)、マルティン・ケイゼル(ヴァカンソレイユ・DCM)の背後では、昨世界選手権「U23部門」王者アルノー・デマール要するFDJ・ビッグマットがせっせとコントロールに励んだ。「エリート部門」世界チャンピオン、マーク・カヴェンディッシュを支えるスカイ プロサイクリングの面々や、世界2位マシュー・ゴス率いるオリカ グリーンエッジも、集団前方にしっかり居座った。おかげでタイム差が、4分以上に開くことは決してなかった。

とくにカヴェンディッシュは、やる気に満ちあふれていたようだ。すでに区間は2つ勝っている。しかし「キング・オブ・スプリンター」の証、赤色のポイント賞ジャージを第3ステージの落車で失って以来、いまだ取り返すことができずにいた。だからカゾーとブルギャクがすでに吸収され、ケイゼルだけが単独でエスケープを引き伸ばしていた……そんな場面で迎えた中間スプリントポイントでは、2位=6pを手にするために迷わず全力ダッシュした。

一方のゴスは特にポイント収集に向かわなかった。そのせいでマリア・ロッソ争いでは4p差に追い詰められてしまったけれど、むしろゴスが欲しいのは区間勝利だった。それもカヴとの一騎打ちを制した上での勝利だ。「またカヴェンディッシュとやり合えると思うと、興奮するね。ボクは彼の後ろで2回2位に終わってる。今度こそは勝ちたいんだ」と、そんな強い意志でこの日のスタートを切っていた。

もちろん、誰もがゴール前に危険が潜んでいることは理解していたはずだ。ゴール前8kmほどからは短い上りが(スプリンターが引き離されてしまう恐れもあった)、ゴール前5kmからはカーブの多い急な下りが(落車や分断の罠が潜んでいた)、そして例の、ゴール前300mのU字カーブが。こんなアップダウンの存在がパンチャーたちにも勝利の夢を見せた。しかし総合本命の心と脚さえも、突き動かしてしまうとは……。

デンマークからのスタート以来、1度たりとも区間&総合トップ10に選手を送り込めていないロット・ベリソルが、ロングエスケープだけに飽き足らず、さらに2回の特攻を見せていた。その時だ。チームメートのアンヘル・ビシオソと共に、ゴール前7km、ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ チーム)が弾丸のようにメイン集団から飛び出した!ビシオソのアタックは、予定通りだった。「総合狙いじゃないビシオソならば、逃げ切れるんじゃないか」というのがチームの判断だった。ところが予定外に、リーダーまでも加速してしまった。「勝つチャンスがあると見れば、ボクはいつだってトライする」という自己の選手哲学に従ったそうだが、簡単に言えばマリア・ローザとの距離がわずか9秒しかない「プリート」は、もっと自分にぴったりした地形(たとえば翌第10ステージ!)が来るまで待ちきれなかったのだろう。

しかし、プロトン屈指の激坂ハンターが全てを突き放してしまうには、坂道は緩すぎたし、短すぎた。当然ではあるが、リクイガス・キャノンデールやアスタナ プロチームがきっちり追いかけて、ロドリゲスを封じ込めた。おかげで一連のドタバタ騒ぎで、スプリンターチームたちが入念に作り上げてきた秩序は一旦崩れてしまった。スカイのアシストは状況収拾に手を尽くしたが、むしろ極めて上手く前方ポジションへと回復を遂げたのはオリカ グリーンエッジだった。

先導役2人が、赤いジャージを連れて好位置へと上がって行く。ゴスも、鋭角な左カーブへと、それほど問題なく入りつつあるように見えた。その瞬間、フィリッポ・ポッツァート(ファルネーゼヴィーニ・セッライタリア)が後輪へと突っ込んで、そのままゴスはアスファルトへダイビング。アエド兄弟の2人(チーム サクソバンク)、ニコラス・マース(オメガファルマ・クイックステップ)、トマシュ・マルチンスキー(ヴァカンソレイユ・DCM)も地面へと滑り落ち、なんとカヴェンディッシュも足止めを喰らってしまった。落車のきっかけを作った張本人ポッツァートはTV画面を通してゴスや、巻き込んでしまった選手たちに謝罪した。体の節々は少々痛む様子だが、大会医師団によれば上記7選手に目立った怪我はないとのこと。不幸中の幸いだ……、それでも期待されたゴスvsカヴの直接対決は実現しなかった。

混乱を制したのは、フランシスコホセ・ベントソ(モヴィスター チーム)だった。昨大会に次ぐ大会2勝目。ちょうど1年前には、赤ジャージ姿のアレッサンドロ・ペタッキを文字通り1対1で制した。今年は迫り来る若きイタリアンライダー3選手を退けて——22歳ファビオ・フェリーネ(アンドローニジョカットリ)、23歳ジャコモ・ニッツォロ(レディオシャック・ニッサン)、24歳ダミアーノ・カルーゾ(リクイガス・キャノンデール)——、ちょうど1週間前に30歳になったばかりの、成熟した選手の技量を見せつけた。

「今回のスプリントでは、それほどいいポジションにつけていられなかったんだ。でも落車が起きた瞬間、自分がどこをどうすり抜ければいいのか、はっきりと見えた。だから全力で加速した。落車が起こった理由は、決して、若い選手たちが前に出て行こうとリスクを冒したせいなんかじゃない。最終カーブだって特に危険ではなかった。プロトンを制御できるチームが不在だったせいなんだ。今日のボクは幸運にも恵まれたよ」

こう語ったベントソの背後では、マリア・ローザ姿のライダー・ヘシェダル(ガーミン・バラクーダ)もスプリントでもがいていた。最後のカーブへ左側から突入したおかげで、あらゆる面倒を避け、区間7位の好成績。ロドリゲスのアタックで一時は危機にさらされたリーダージャージを、もう1日守ることに成功した。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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