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サイクル ロードレース コラム 2012年5月19日

ジロ・デ・イタリア2012 第13ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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いよいよ翌日から、2012年ジロ・デ・イタリアは難関山岳の戦いへと飛び込んでいく。121kmというひどく短いステージの途中で、プロトンはピエモンテ州=文字通り「山の麓」へと踏み入り、イタリアンアルプスはすぐそこだ。総合ライダーたちは、大切な戦いに備えて気を引き締めながら走ったに違いない。一方でスプリンターたちは、もしかしたらこれが最後のスプリントチャンス、いや、最後のステージになってしまうかもしれないな……、なんて思いながらラストチャンスに殺到した。

フランチェスコ・ファイッリ(ファルネーゼヴィーニ・セッライタリア)とマルティン・ケイゼル(ヴァカンソレイユ・DCM プロサイクリングチーム)があっという間に飛び出しを決めると、その後ろでは世界チャンピオンのマーク・カヴェンディッシュ擁するスカイ プロサイクリングと、20歳の若きスプリンターのアルノー・デマールを支えるFDJ・ビッグマットが、プロトンコントロールを買って出た。ちなみにカヴは大方の予想に反して「うん、ミラノまでジャージを守りたいと考えている。ミラノまで行くぞ、というやる気100%で、ジロに乗り込んできたんだから。タイムアウトを宣告されるまでは、走り続けるよ」と続行宣言。またこの日は7位に終わったデマールも「ロードブック上ではあと1回スプリントのチャンスが残ってるんだから(第18ステージ)、そこまではせめて走りたい。希望的観測だけど……」と、あくまでもジロを自ら放り出してしまうつもりはないようだ。

極めて短距離走なだけに、マシュー・ゴスで区間1勝を手に入れてたオリカ グリーンエッジや、マーク・レンショー&テオ・ボスの2人がかりでも一向に勝てないラボバンク サイクリングチームも早めに隊列を組み始めた。最終盤のほんの軽いアップダウンでは、もはや恒例となったが、リーダーのイヴァン・バッソのために「リスクゼロ」作戦を掲げるリクイガス・キャノンデールが前方への位置取りを忘れない。一時は最大5分15秒のリードを与えられたエスケープの2人は、特に抵抗も許されず、残り21kmと少々早めに回収されていった。

それでも、ケイゼルにとっては、間違いなく「成功」の1日だった。前日稼いだ55kmの逃げ距離に飽き足らず、この日は99kmを追加して、初日からの通算逃げ距離612kmで……まんまと大逃げフーガ賞首位へと駆け上がった!ところでケイゼル、オリヴィエ・カイセン(ロット・ベリソル)、ミゲル・ミンゲス(エウスカルテル・エウスカディ)等々、一部の選手たちの間ではなにかと加熱しているこのフーガ賞。「1人、もしくは10人以下の集団で前方へと飛び出すこと、5km以上逃げを続けること」が条件で、区間フーガ賞には200ユーロ、そして総合フーガ賞には6000ユーロ(日本円では60万円以上)とミラノでの栄光の最終表彰台が待っている。

ゴールまで10kmほどに近づくと、オリカ グリーンエッジが綺麗なトレインを走らせた。別府史之も強力な牽引に加わり、スカイ列車の完成を阻む。ラボバンクもスカイに前を取らせまいと必死に画策。ゴール前3kmでは、かつてトム・ボーネンを幾度もスプリントに導いたマッテーオ・トザットが指揮するチーム サクソバンクが、アエド兄弟で勝負を切るために、多勢で無理やり割り込みをかけた。怒号が飛び交い、緊張感が漲る。

「チームは素晴らしい仕事をしてくれた。でも若手選手は、まだ経験が足りないんだ。あとしばらく実践を続ければ、パーフェクトなトレインが完成するさ」

カヴェンディッシュ自らが指示を飛ばす場面も見られた。ゴール前1.5km、ついにスカイが先頭を奪い返した。しかもラスト1kmを示すアーチの下をくぐる時点でも、カヴは3人のアシストにしっかりと守られていた。

それでも最後にもう一度、ライバルスプリンターたちは、カヴ攻略を試みた。グリーンエッジが速攻をしかけ、ゴスが前に入り、さらには南アフリカチャンピオンのロバート・ハンター(ガーミン・バラクーダ)は斜め前に陣取り、右側からは因縁のロベルト・フェラーリ(アンドローニジョカットリ)があわやぶつかりそうな勢いで接近し、アシストたちが抜けた左側にはフェンスが……。カヴェンディッシュは、ほんの一瞬、出口を無くしてしまったかのように見えた。

「でも幸いなことに、ゴスが斜めに動いたおかげで、ボクもスプリントを打つことが可能になった。もしあそこにいたのがフェラーリだったら、きっと行かなかっただろうね。だって怖いから」

そう、現役最強スプリンターは、ゴスが右に動いたその隙間を決して見逃さなかった。あとは3勝目へ向かって、フィニッシュラインを駆け抜けるだけでよかった。今大会のカヴェンディッシュは、自らがきっちり絡んだスプリントを全て制している。つまりフェラーリと接触し落車した第3ステージ、カーブで落車に巻き込まれた第9ステージ、そしてやはりカーブでのリードアウトミスでリズムを崩してフェラーリにしてやられた第11ステージ以外は、周囲を完膚なきまでに圧倒している。しかもカヴェンディッシュにとって、ジロの第13ステージを制するのは、2008年・2009年に続く3度目!

総合を争う者たちは、みな静かにステージを終えた。ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ チーム)は4度目のマリア・ローザ表彰式を楽しんだ。大会前に有力候補として名前を上げられた選手としては、ロマン・クロイツィゲル(アスタナ プロチーム)が52秒差の6位、イヴァン・バッソが57秒差の8位、ミケーレ・スカルポーニ(ランプレ・ISD)が1分11秒差の13位、フランク・シュレク(レディオシャック・ニッサン)が2分11秒差の25位と続く。もちろん1分12秒差で14位のドメニコ・ポッツォヴィーボ(コルナゴ・CSFイノックス)、2分55秒差で31位のジョン・ガドレ(アージェードゥゼール・ラ・モンディアル)、3分05秒差で34位のホセ・ルハノ(アンドローニ・ジョカットリ)といったヒルクライマーたちの動きからも、決して目が離せない。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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