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【Cycle*2021 UCI世界選手権大会 男子エリート ロードレース:レビュー】燃えるような脚と、冷静な頭脳。最後は本能が赴くままに自分の走りを貫いたアラフィリップ「たとえ負けたとしても、華やかな走りがしたい」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかほんの2kmほど先で回収されたディフェンディングチャンピオンは、燃えるような脚と、冷静な頭脳を備えていた。アラフィリップはこう分析した。調子が良ければワウトは自ら追ったはずだ。追わなかったのではなく、追えなかったのだ。ワウトは絶好調ではない、どうにかしてスプリントに持ち込みたいに違いない……と。だから監督ヴォクレールから与えられていた自らの役割「自分がここだと思う場面で、自由にアタックを打つ。スプリントフィニッシュに持ち込まぬよう、トライする」を、とことんまで貫くことに決めた。監督車の位置まで下がり、直接指示を仰ぎさえした。
この時、ヴォクレールは、アラフィリップにこんな風に言い聞かせたという。本能のまま走れ。ただあまりアタックを多用しすぎて疲弊し過ぎぬように。むしろ他選手のライバルに付いていき、それを利用してカウンターをしかけろ。セネシャルの護衛はマデュアスが務めるから気にするな、と。そのせいで、TV優勝インタビューに乱入した監督に向かって「言いつけを完璧には守らなかったなぁ」なんてアラフィリップは苦笑いし、それに対してヴォクレールは「本能!」と言い返すことになるのだが……。
その後のフランスはエヴェネプールにたっぷり仕事をさせた。残り26kmでついに21歳の神童は力尽きた。やはりスプリントフィニッシュの方が都合がいいイタリアも、パンチャーのバジオーリが先頭を引いていたが、マデュアスが軽く前で揺さぶりをかけると、やはり脚に限界を迎えた。
つまり強大なライバル2カ国のアシスト体制が手薄となった隙を突いて、アラフィリップは3度目のアタックを試みた。残り21.5km。ルーヴェン周回のウェイペンスの上りで、マデュアスががむしゃらに踏みつけると、そこからアラフィリップが発射された。
今度はファンアールト自らが努力せざるを得なかった。誰の協力も得られぬまま、約1kmに渡って優勝大本命は追走作業を行った。ただ平地でようやくストゥイヴェンが前に出たことで、なんとか回収にこぎつけた。しかし合流のタイミングで、アラフィリップはさらに2回、加速を畳み掛けた。またしてもストゥイヴェンは穴を埋めるために多大なる努力を強いられた。真っ先に反応できたニッツォーロは、追い付いてきたコルブレッリのために自らを犠牲に牽引を行った。
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