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サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかここでプロトンはようやくスピードを緩めた。走り出してから1時間50分、ついに逃げは許された。わずか22秒しかなかったタイム差は、ほんの5km先で1分15秒にまで広がった。ところが、これ以上、平地でのリードは開かない。
スプリントに持ち込む。マッテオ・トレンティンが、こう固く誓っていたせいだった。「小さい逃げをコントロールし、終盤の上りでピュアスプリンターを振り払う」との宣言通り、すぐにUAEチームエミレーツの仲間たちを前線へと配置。徹底したタイム差制御に乗り出した。
かろうじてタイム差が少し開いたのは、1つ目の山岳、3級サン・ヘロニモの登坂中のみ。1度目のフィニッシュライン通過時に1分11秒あった差は、この日最大の1分45秒にまで拡大した。ただ、これは単に、UAEが走行速度を微妙に調整したせいに違いない。ピュアスプリンターにとっては速すぎて、しかし自陣の「上れるスプリンター」トレンティンが苦しまぬ程度に控えめな、そんなテンポを巧みに保ち続けた。
UAEが黙々と働く背後では、不意に、大きな集団落車が発生したこともある。残り55km、3級登坂中ながらも、道は軽い下り基調だった。前からほんの10番目ほどの一団が、まとめてなぎ倒された。ユンボ・ヴィスマ、モビスター、イネオス・グレナディアーズの面々が草むらに放り出された。なにより2日前にマイヨ・ロホを手放したばかりの総合3位プリモシュ・ログリッチや、総合8位アダム・イェーツが転がり落ちた!
「ほぼチーム全員が落車に巻き込まれた。スペイン特有の滑りやすい道で、しかも路面にはオイルが浮いていたように思う。厄介ではあったけれど、本当のダウンヒルが始まる前に6人で前に戻ることができた。プリモシュとステフェン(クライスヴァイク)はかなり激しく落車したけど、問題はなかった」(クーン・ボウマン)
針金のフェンスが張りめぐされていたせいか、決して全員が無傷で抜け出せたわけではない。ただ幸いにも、ログリッチもイェーツも目立つ怪我なく、UAE率いる集団に素早く復帰を果たした。そして同集団は、2度目のフィニッシュライン通過時には、逃げをもはや28秒差にまで追い詰めていた。
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