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【ブエルタ・ア・エスパーニャ2021 レースレポート:第9ステージ】33歳のダミアーノ・カルーゾが15回目のグランツールで驚異的な逃げ切り勝利!「残り2kmでようやく勝てると確信した」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかステージ終盤の過酷な登坂
続く巨大1級峠の上りに差し掛かり、その差が3分40秒に広がった時のことだ。イネオスが8人全員で集団先頭に競り上がると、高速牽引へと舵を切った。目的はエガン・ベルナル曰く、最終峠に向けレースの緊迫度を上げるため。否応なしに逃げとの距離は縮まっていく。29kmの山道の半分を終えたところで、リードは1分20秒にまで減った。
「長距離なのは分かっていた。それでも飛び出すことを決めたのは、イネオスがハードなテンポを刻んでいるのを知ったから。だから『OK、捕まえられる前に、逃げ出そう。できれば1人がいい』と自分に言い聞かせたんだ」(カルーゾ)
カルーゾは飛び出した。フィニッシュまでいまだ71kmと遠かったが、固い決意で独走を貫いた。栄光を掴んだあのジロ第20ステージでは残り2kmまで共に逃げたバルデが、慌てて追いかけてきたけれど、待つつもりなんてなかった。1級山頂に到達する頃には、バルデ、マイカ、トゥスフェルト、アメスケタの追走組に早くも約1分半の差をつけた。
その読みは正しかった。後方の4人以外、逃げはすべて瞬く間にメイン集団に回収された。ただ本人さえ「予測していなかった」のは、上りで攻め、下りでも攻めたカルーゾと、メイン集団との差がどんどん広がっていったこと。1級峠を完全に下り切った時点で、恐れていたイネオスが一旦作業を停止したせいでもある。残り13km、最終峠の登坂口で、カルーゾはなんと5分15秒もの余裕を有していた。
しかし最終峠の山道に入ると同時に、再びイネオスは牽引スイッチをオンに切り替える。特に青玉ジャージをまとうパヴェル・シヴァコフが勢力的に隊列を引っ張り、アダム・イェーツが強烈なアタックに転じたのをきっかけに、後方では壮大なる加速合戦が巻き起こった。
カルーゾを追う者たちは、迫りくる波に抵抗しきれなかった。 最終山岳手前の3級峠を利用して、元ブエルタ&ジロ山岳賞ジョフリー・ブシャールが追走集団に加わったが、山岳賞3人の脚を持ってしても太刀打ちできなかった。最終峠の序盤にバルデはチェーン脱落で足踏みさせられ、マイカもいつしか力尽きた。ブシャールはカルーゾにも追いつけなかったし、メイン集団からも逃げきれなかった。山岳ポイントさえ1ptも手にしないまま、残り6kmで総合争いの面々に抜き去られた。
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