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【ツール・ド・フランス2021 レースレポート:第19ステージ】優れた戦術眼と脚で周囲の雑音に訴える区間勝利!モホリッチ「僕らがどれほど大きな犠牲を払っているのか」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかこれに慌てたのがイスラエル・スタートアップネイションだった。アンドレ・グライペルやリック・ツァベルのため、どうしてもスプリント勝負に持ち込みたい同チームは、必死の追走を試みた。当然ながらスプリンターチームの後押しは一切なかった。幸いにも今大会いまだゼロ勝のイネオス・グレナディアーズや、第1集団ボナムールの勝利確率を上げるため、第2集団が邪魔なBBホテルズが、時には協力体制を組んだ。しばらくは延々30秒ほどの綱引きが続いた。
6人が自主的にプロトンへと後退し、14人に人数を減らしても、第2集団の威力はちっとも衰えなかった。それどころか残り100kmで朝からの逃げ6人と合流し、先頭集団は20人に膨らみ、スピードはますます増すばかり。ついに均衡が崩れた。じわり、じわり、とタイム差は開いていく。約50kmも続いた壮絶な追いかけっこを、とうとうプロトンは放棄した。残り82km。最前線には蓋が閉まり、マイヨ・ジョーヌを含む大きな集団は、静けさを取り戻した。
最終的にメインプロトンが20分50秒というとてつもない大差でフィニッシュラインを越えたのは、なにもUAEチームエミレーツの制御リズムがのんびりしすぎていたわけでもない。むしろ逃げの20人がひたすらハイスピードで走り続けたせいだ。しかも残り47km、モホリッチの加速をきっかけに、前方は改めてアタック合戦へと突っ込んでいく。
代わる代わる、我こそは、と名乗りを上げた。1人が前方へと飛び出しては、顔を見合わせ、数人がすかさず回収に向かう。決して飽きることなく、入れ替わり立ち替わり、異なる選手が加速へと打って出た。第12ステージで12kmの独走を成功させたポリッツもその1人。残り26km、今ステージ最後の級坂を利用して、大きな加速に転じた。
「僕にとって残念だったのは、追いついてきた大きな集団にチームメートがいなかったこと。だから出来る限り脚を温存するよう心掛けた。おかげで最後の勝負が始まった時には、OK、行けるぞ、と思えたんだ。でもポリッツが『大・大・大・大・大』アタックを打った時、僕は限界に達していた。自分にはこう言い聞かせた。『あの坂のてっぺんをフィニッシュだと思え。マテイ、スプリントのつもりで行け。目を閉じて、決して後ろを振り向くな』ってね」(モホリッチ)
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