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【ツール・ド・フランス2021 レースレポート:第18ステージ】若き王がノーギフトでピレネー完全制圧。総合優勝目前のポガチャル「いつだって楽しむことを忘れてはならない」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかツール史上84回目のトゥルマレ登坂は、総合勢たちをも大きくふるい分けた。序盤から集団制御に努めてきたUAEチームエミレーツに変わり、総合3位リチャル・カラパス擁するイネオス・グレナディアーズが、急激に走行リズムを跳ね上げた。2012年から2019年までの8年で7回の総合制覇を成し遂げてきた常勝軍団は、ほぼ間違いなく、2年連続でマイヨ・ジョーヌは失敗に終わった。せめて区間1勝が欲しかった。ちなみに昨大会でクフィアト&リチャルの感動的なステージ勝利を祝ったのも、やはり第18ステージだった。
自軍の元ツール総合覇者ゲラント・トーマスや昨総合3位リッチー・ポートさえこの山に置き去りにした加速は、総合4位リゴベルト・ウランを突き落とした。前日総合2位の座から後退したばかりだった。決して1日限りのバッドデーだったわけではなく、調子はすでに下り坂に差し掛かっていたのかもしれない。グランツール総合2位×3回の実力者は、この日だけで9分近いタイムを失った。ウランの総合争いには完全に終止符が打たれた。
急な坂道を上るポガチャル
そんなメインプロトンから、山頂間際には、ワウト・プールスとマイケル・ウッズが飛び出した。今大会最後から2つ目の超級山岳で、ポイントを巡る最終激選。赤玉ジャージを3日連続で身にまとう前者が、巧みに4位通過で10ptを収集した。6位通過の後者との総合ポイント差を16ptに開き、なにより前日の山頂勝利で突如11pt差に迫ったポガチャルを、かろうじて21pt差に押し戻す。
……ただし抵抗むなしく、今大会最後の超級フィニッシュで(しかも得点は2倍された)、19pt差に逆転されてしまうのだけれど。パリまでの3日間で残された山岳ポイントは2ptのみ。つまりもはや逆転不可能で、両者が大会8日目からこつこつ積み重ねてきたすべての努力は、無に帰した。
たったひとりで下りを全力でこなし、わずか15秒差で最終峠リュズ・アルディダンに突入したゴデュの希望もまた、フィニッシュまで残り9.5kmで打ち砕かれた。そもそも最終峠で5人の隊列を走らせ、夢中で逃げをすべて回収したイネオス隊列だって、もはや1人しかアシストを残していなかったマイヨ・ジョーヌにあっさり目標を握りつぶされるのだ。残り5.5km、そのたった1人のアシスト、ラファウ・マイカがメイン集団最前列に駆け上がる。高速テンポで15人にまで絞り込んだ。
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