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【ツール・ド・フランス2021 レースレポート:第18ステージ】若き王がノーギフトでピレネー完全制圧。総合優勝目前のポガチャル「いつだって楽しむことを忘れてはならない」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかひたすらめまぐるしい展開は続く。先頭はいつしかアラフィリップとモホリッチの2人きりになり、その背後では、やはりフランス選手たちが意地を見せた。まずはピエール・ローランが動き、ピエール・ラトゥールが単独で追いかけた。ケニー・エリッソンドが合流し、ヴァランタン・マデュアスもやはり孤独に飛び出して……。ピレネー入りしてから連日攻撃を諦めないダヴィデ・ゴデュもまた、オマール・フライレ、ルーベン・ゲレイロ、ヨン・イザギレを連れて前方へと突進した。
先頭のアラフィリップ
祖国の期待を背負う者たちは、伝統のトゥルマレ峠で、栄光を追い求めた。残り41.3km、霧の深い山道で、ついに追走組はアラフィリップ&モホリッチをとらえる。フランス人5人を含む9人の集団が形成された。
ただゴデュはそう長くは待たなかった。第11区間モン・ヴァントゥへ向かう道すがら、熱にやられ、嘔吐や頭痛に悩まされたフレンチクライマーは、「大好きな山脈の大好きな山」で、奮起を誓っていた。しかも2019年大会に先輩ティボー・ピノが勝ち取った思い出の場所だ。逃げを活性化させるため、思い切りスピードを上げた。
「ヴァントゥでの失態にとてつもなくがっかりさせられた。だからピレネーでは、自分自身にリベンジしたかったんだ。宣言通り一か八か全力でアタックを打った。ポガチャルやヴィンゲゴーとかち合わないためには、あらかじめ先行しておく必要があるからね」(ゴデュ)
あまりにゴデュが勇ましくリズムを刻んだせいか、逃げの友たちは次々と脱落して行った。ただ本気で「区間勝利と総合トップ10入り」を狙っていたからこそ、本音を言えば、「あと2〜3人は側に残っていて欲しかった」のだという。なにしろトゥルマレ山頂を越えても、いまだ道は35km以上残っている。特に下りは長く、向かい風がひどい。協力者が絶対に必要だった。
しかし山頂手前1.2kmで、ゴデュの側に残ったのは、同じピュアクライマーのラトゥールただ1人だけ。しかも先頭通過で「ジャック・ゴデ賞」を獲りに行った直後、ダウンヒル開始と共に、下り苦手なラトゥールはあっさりと後輪から離れた。思いもかけぬ形で、残り33km、ゴデュは独走態勢へと突入した。
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